市場調査データ

フードデリバリー

2023年 2月1日

2020年のコロナショック以降、消費者と供給者双方のニーズを捉えて急成長を遂げたフードデリバリー市場。オンラインを活用して両者をつなぐサービスも充実傾向にあるこの機会を生かし、デリバリー対応を始めた飲食店も少なくないだろう。コロナ以降大きく様変わりしたフードデリバリーサービスを消費者は今いかに活用しているのか。20代以上の男女1000人へのアンケート結果を基にその実態に迫った。

1. 現在の利用状況

〈図a〉フードデリバリーの利用状況(n=1000)
〈図a〉フードデリバリーの利用状況(n=1000)

「現在の利用状況」〈図a〉に関しては、最も多かったのが「まだ一度も利用したことがない」の358人(35.8%)で、次に「かつて利用したことがある」の302人(30.2%)が続いた。3番目に多いのが「月に1回未満の利用頻度だ」の248人(24.8%)で、「ほぼ毎日利用している」から「月に2、3回程度利用している」までを合わせた定期ユーザー数は92人(9.2%)となった。定期・不定期を合わせた全ユーザー数は340人(34%)と考えられる。ちなみに、当コーナーにおいて2009年に実施した「宅配ピザ」のアンケート調査では「よく利用している」「たまに利用している」の合計が47%、翌10年に実施した「宅配寿司」のアンケート調査では同21%となっている。アンケートの対象や質問内容、統計方法などが異なるため単純比較は難しいが、近年、利用者が急増しているという社会的なイメージからはややかけ離れた結果となった。

2. 現在の利用状況の内訳

〈図b〉フードデリバリーの利用状況の内訳(n=1000)
〈図b〉フードデリバリーの利用状況の内訳(n=1000)

現在の利用状況について、性別・年齢別の割合を捉えた〈図b〉を見ると、「ほぼ毎日利用している」〜「月に1回未満の利用頻度だ」というユーザーの割合が最も多いのは20代男性で、50代女性、20代女性、30代女性が続いた。一方で「まだ一度も利用したことがない」の割合が多いのは40代男性と60代以上男性。利用しない理由として、記述式自由回答欄では、「割高」「衛生面に不安」「そもそもデリバリーしてもらえる店がない」「必要性を感じない」「使い方がわからない」などの意見が多く挙がった。

3. 利用手段

〈図c〉フードデリバリーの利用手段(n=1000)
〈図c〉フードデリバリーの利用手段(n=1000)

デリバリーの利用手段について聞いた設問において、「利用したことがない」を除き最多となったのは、「デリバリーサービスを提供するサイトやアプリから注文する」の288人(28.8%)で、「デリバリーをお願いしたい店のホームページやアプリから注文する」の199人(19.9%)が続いた。一方、かつてデリバリー注文の主力だったと思われる「デリバリーをお願いしたい店に直接電話する」は134人(13.4%)にとどまり、デジタル化がデリバリーの注文方法に大きな変化を与えていることがわかった。フードデリバリービジネスへの参入を検討する場合、デジタル活用の有無によってこれだけリーチできる人数が変わってくるということは頭に入れておいた方がいいだろう。

4. コロナ禍の影響

〈図d〉コロナ禍がフードデリバリーサービスの利用に与えた影響(n=1000)
〈図d〉コロナ禍がフードデリバリーサービスの利用に与えた影響(n=1000)

コロナ禍の影響に関しては、「必要性を感じることも影響もなかった」が最多の417人(41.7%)となったが、「初めて利用するきっかけになった」(81人)、「利用頻度が増えた」(142人)という利用増の変化を訴えたのは計223人(22.3%)。潜在的な利用意向をもつと考えられる「必要性は感じたが、結局利用頻度に影響はなかった」(295人)も合わせると518人(51.8%)となり、半数以上は少なくともコロナ禍によってフードデリバリーの利用を検討したということになる。記述式自由回答では、「外食に行きたいけど自粛しなくてはいけない時にデリバリーはありがたかった」「外食で不特定多数と接触するよりも安心できる」などの声が多かった。一方「むしろ利用が減った」と答えた65人(6.5%)からは、「衛生面に不安がある」「配達員の質が下がった」といった声も。市場の急拡大により、担い手たちの教育面が追いついていないという側面もあるのかもしれない。

5. フードデリバリーの利用にかける費用

〈図e〉フードデリバリー1回の利用にかける費用(n=1000)
〈図e〉フードデリバリー1回の利用にかける費用(n=1000)

フードデリバリー1回の利用にかける費用を聞いた設問では、「利用したことがない」を除くと、「1000円〜2000円未満」と「2000円〜3000円未満」が232人(23.2%)で並び、「3000円〜4000円未満」の95人(9.5%)、「4000円〜5000円未満」の42人(4.2%)という順になった。一方で、最小金額の「1000円未満」は31人(3.1%)。各種デリバリーサービスサイトやアプリから注文する場合、注文金額によって送料が減額となるサービスが受けられるケースもあることが、こうした結果の背景として考えられる。記述式自由回答欄では、「キャンペーンがある時に利用すると割安」「大人数が集まる場合などは、デリバリーの方がお得で簡単」などの声も寄せられた。

6. 今後の利用意向

〈図f〉今後の利用意向(n=1000)
〈図f〉今後の利用意向(n=1000)

今後の利用意向に関しては、「ぜひ利用したい」(156人)と「どちらかと言えば利用したい」(271人)という利用に積極的な人の合計は427人(42.7%)に及び、「あまり利用したくない」(142人)と「全く利用したくない」(136人)という利用に消極的な人の合計278人(27.8%)を大きく上回った。また「どちらとも言えない」を選択した295人を含め、今回多くの人が記述式自由回答で触れたのが、「自分の居住エリアではデリバリーサービスが充実していない」という点。この課題が改善された場合、今後の利用に積極的な人数はさらに増加すると考えられる。一方で、今後の利用に消極的な人からは、前述した衛生面や配達員への懸念に加え「コロナが落ち着き外を出歩けるようになったので、今後は利用しないと思う」という声も挙がった。デリバリーの利用は、あくまでコロナ禍といった特殊な状況下における一時的な選択肢と考える層もいるようだ。

7. 性別・年齢別に見た今後の利用意向

〈図g〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1000)
〈図g〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1000)

今後の利用意向を性別・年齢別に見ると、「ぜひ利用したい」「どちらかと言えば利用したい」を合わせた割合が最も多かったのは20代女性で、30代女性、40代女性が続いた。男性の方では、積極的な利用意向を持つ割合が多いのは30代男性で、次に20代、40代、50代となった。この結果から、男女ともに比較的若い方が利用に積極的な傾向があることも見て取れる。一方で「全く利用したくない」と「あまり利用したくない」を合わせた利用に消極的な人の割合が多いのは、50代男性、60代以上男性、40代男性、60代以上女性の順。記述式自由回答欄では、「使ってみたいがサービスが多すぎて選べない」「使い方がわからない」といった声も少なくなかった。

8. まとめ(ビジネス領域としてのフードデリバリー)

今後の利用に積極的な人の割合が42.7%という時点でビジネスの舞台としての未来は明るいといえそうだが、加えてデリバリーインフラが整うことを待っている層が一定数いることを考えると、そのビジネスチャンスはさらに広がるポテンシャルを秘めている。利用に積極的な人の意見として、前述した以外では「出かけたくない時、作りたくない時に重宝する」「時短になるし、食材調達から調理、洗い物といった手間を考えると、結果的にコスト面も満足」「小さい子どもがいると配達してくれるのはとても助かる」「手軽に外食気分が味わえる」などの意見が寄せられた。

一方で、利用に消極的な人が最も多く指摘したのが「割高感」だ。「デリバリーを頼むよりも近所のスーパーで買った方が安い」「デリバリーは高いのでオンライン注文してテイクアウトを利用する」といった声も多く、デリバリーよりテイクアウトを利用するといった声も少なくなかった。仮にこのテイクアウト利用層までもターゲットと考えた場合、デリバリーならではの付加価値について検討する必要があるだろう。また、衛生面や配達員の教育面、デリバリーインフラの整備といった課題を解消するといった視点も、ビジネスを考える糸口になるかもしれない。男女ともに今後の利用に積極的な割合が多いのは比較的若い層。そのニーズを捕まえにいくか、あるいは上記のような課題の解決に取り組んで新たなニーズを掘り起こしにいくか。考え方次第で関わり方は無数にあるビジネス領域ともいえそうだ。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査概要

調査期間:

2022年12月16日〜12月19日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2023年2月

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