起業の先人に学ぶ(2020年版)

身体障害者向けプラットホームの開発・運営や雇用支援【株式会社アクティベートラボ】

2020年 9月 4日

増本氏と那須氏(副社長)と中尾氏(マネージャー)の3人
増本氏と那須氏(副社長)と中尾氏(マネージャー)の3人

1.ビジネスの特徴

●誰に

障害者・介助者/介護者・医療従事者・企業

●何を

「障害者視点で障害者が活躍できるマーケットの創出」
「デジタルデバイドの障害者をなくす」を実現する

●どのように

文字ではなく絵で障がいの程度を伝えるシステム「ブイくん」(特許取得済み)を活用した、
・障害者の情報共有プラットホームである「OpenGate」の運営、
・「障害者翻訳」をはじめとした障害者雇用に対する独自のアプローチ
を用いて実現する。

「障害者視点で障害者が活躍できるマーケットの創出」「デジタルデバイドの障害者をなくす」を目指し、各種サービスを展開している。

現在は、自身の障害の部位の情報を登録できるマッチングエンジン「ブイくん」、それを用いた身体障害者ユーザーに特化した情報共有プラットホーム「OpenGate」の運営、同じく「ブイくん」に搭載されているアルゴリズムを活用した「障害者翻訳システム」をはじめとする企業向け障害者雇用支援が主軸。

ひとくちに障害と言っても個々の障害の部位や内容は異なるため、障害を抱えた方々は自身の生活に必要な情報の収集が難しい。「OpenGate」は、障害者にとって、情報共有だけでなく、「気持ちのステップアップ」の場にもなっている。

“障害者がわかる”「障害者翻訳システム」は、採用シーンで雇う側の企業に向けて障害者がどのような能力を持ち、どう組織に貢献できるのかを引き出し伝えるシステム。

創業者である自分自身が働き盛りのころに脳出血によって健常者から障害者となった経験を元にした障害者関連サービスを特徴としている。また、自社で障害者の母集団を有しているため、障害者マーケットを取り巻く環境にいち早く対応できる点も強みである。

2.起業のきっかけ

前述の通り創業者である自分自身が働き盛りのころに脳出血で倒れ、障害者となった。

約4年にわたり懸命なリハビリに専念したものの右半身マヒ・吃音・失語・高次機能障害が残った。

障害のことや生活に必要な情報を収集しようとも、インターネットは健常者に向けた情報で溢れており、障害者に向けた情報があっても、ひとくちに障害と言っても個々の障害の部位や内容は異なるため、「自身の障害×生活に必要な情報」の収集に苦慮していた。

障害者としての経験を重ねるうちに、障害者をとりまく状況を変えねばならないと思いが芽生え、起業を決意した。

3.起業への道のり

まずは自身が抱える障害の可視化を目的としたマッチングエンジン「ブイくん」の開発に着手した。当初は自分一人で取り組んでいたが、行き詰まりもあり友人に相談したところ仲間が集まり、当社理念や目的に共感してくれた。

コンサルタントの経験やベンチャー支援に強みがある現在の中核メンバーがそろったことで、事業化が大きく前進した。

ただ、障害を抱えながらの起業は簡単ではなかった。

起業に必要な申請書類の記載がマヒのためうまくできない。左手でしか書けないためミミズの這ったような字になってしまうものの、公的な書類のため代筆も断られる。事業資金についても親族はもとより、創業支援機関からもこの事業は難しいといわれ、なかなか資金調達ができない。創業支援融資を申し込むべく電話をしようにも障害のためうまくしゃべれず、電話でのコミュニケーションが図れず苦労した。金融機関への訪問を続けた結果、熱意が伝わったことで最終的には融資をいただけた。

4.最初のお客さんを獲得するまで

起業後間もない時期は、知り合いの企業から過去の経験を活かすことができる案件をもらい業務を行っていた。その後、実績を積むにつれ徐々に各種自治体や地方創生関連団体より案件を受注。民間企業からも障害者向け商品の仕入・販売支援や障害者雇用支援の案件を受注するなど、受注基盤が拡大した。

5.今後の展開

現在は社員6名と小規模。出資も得ているものの資金は潤沢ではない。まずは選択と集中を図り、現在行っている「OpenGate」と“障害者がわかる”「障害者翻訳システム」の展開はじめとした障害者雇用支援事業を自社ビジネスとして確立する。その後は、ベンチャーキャピタルなどから更なる資金調達を図り、人員とサービスの拡充を進めたい。

現時点では「OpenGate」を通してやりたいことの5%程度しか実現していないが、機能面の向上などシステム改修を行い、2020年6月に新「OpenGate」となる。

新「OpenGate」では、5年後に40万人を超える会員獲得を目指し、障害者向けの住まい・ライフスタイル・グッズなどの障害者の生活に関連したサービス提供を担えるまでに成長していければと考えている。

※掲載している内容は、4月7日に発令された緊急事態宣言前に取材したものです。

企業データ

企業名
株式会社アクティベートラボ
代表者
増本 裕司 氏
所在地
東京都中野区中野4-10-1 NAKANO CENTRAL PARK EAST 1F ICTCO #13
Tel
03-4500-2851
事業内容
身体障害者・介助者/介護者・医療従事者向けの情報共有プラットホームで「OpenGate」の開発・運営、障害者向けライフサポートサービス、障害者雇用支援サービス