起業の先人に学ぶ(2020年版)

持ち運べるホワイトボード「バタフライボード」の開発・製造・販売【バタフライボード株式会社】

手帳サイズのバタフライボードを持つ福島さん
手帳サイズのバタフライボードを持つ福島さん

1.ビジネスの特徴

●誰に

コンサルタント、エンジニア、クリエーター、営業、医療、教育関係者など難しい内容を誰かに分かりやすく説明する必要がある人々。

●何を

いつでもどこでも思考を可視化して意思疎通できる携帯性・拡張性・耐久性に優れたホワイトボード。

●どのように

クラウドファンディング(インターネットを介して不特定多数の人から資金を調達すること)で製造資金を調達し、資金を提供した支援者に直接配送する。通販サイト「アマゾン」でも販売している。

会議室などで使用されるホワイトボードを、いつでもどこでも使えるようにした。薄くて小さいホワイトボードがリングノートのように4~6枚つながり、各ボードはマグネット(磁石)で接続し、自由に着脱できる。壁などに貼り付けたり、複数枚のボードをつなげて大きなボードとして使ったりすることも可能だ。

開発初期段階からクラウドファンディングを活用し、ユーザーの要望や意見を取り入れながら製品をブラッシュアップしてきたのが特徴。最初の4年半は趣味を兼ねた副業としてスタートし、2017年に本業を退職して会社を設立した。

2.起業のきっかけ

大工だった父の影響でモノづくりを志し、三重県の鈴鹿高専を卒業後、日本ビクターと米ボーズの日本拠点で計16年間、スピーカー開発に携わった。しかし日本での開発部門閉鎖に伴いマーケティング部門に異動し、転職した輸入代理店では新規事業開発と人を巻き込む仕事が増え、意思疎通を円滑化するホワイトボードが必須となった。ところがいつでもどこでも使えるホワイトボードはいくら探してもない。だったら自作しようと考え、2013年7月から平日夜間や週末を利用して開発を始めた。7度目の試作品が完成し、量産工場を探したが、「市場性がない」「量産に難がある」と門前払い。再検討した結果、マグネットでつなげる構造(スナップバイディング)を思いつき、自腹で100万円をかけて特許と商標を出願した。

3.起業までの道のり

資金も信用もない中、ロット数を見込めず生産できない状態だったが、ちょうどその頃、日本でもクラウドファンディングが出始めた。2015年3月に専用サイト「Makuake」で資金を募り、5月には800人から約300万円を調達して目標を達成。初めて量産し、支援者に配送した。その後、0.5mmの細さで書ける極細マーカーも開発し、米「Indiegogo」に挑戦。500人から約500万円を調達して世界各地に配送した。2017年5月には完全防水型の新素材ボードを開発し、3度目を開始。7月に調達金額が1000万円を超え、起業を決意した。最終的に3500人から約1500万円を調達し、9月に本業を退職し、10月に会社を設立した。資金面の不安が解消し、家族の理解を得られたためだが、それ以上にユーザーからのフィードバックで製品をもっと進化させられるという自信が大きかった。設立初年度は副業時代の4倍、2年目は2割増と順調に売り上げを伸ばしている。

4.最初のお客さんを獲得するまで

クラウドファンディングがなかったら、製品をつくることも、顧客を得ることも、起業することもできなかった。市場性やニーズを探るのに有効であり、実際、完全防水型ボードは支援者からの大クレームと返品を受けて開発したものだ。海外向けに配送したところ、湿気や乾燥でボードが反り返ったり、インドや南米などには配送できないといった想定外のトラブルが発生した。また極細マーカーも支援者から最も要望が多かったもので、多くの工場に門前払いされた末に、ようやく下町の町工場で完成した時は身震いがした。最初のクラウドファンディングで知り合った「ヘビーユーザー」とは、今でもSNSでつながり、製品に対する助言や改善点を伝えてくれている。

5.今後の展開

ユーザーの多くは私と同じ40歳代の男性。これまでA4判、A5判、A3判サイズと徐々にラインアップを広げてきたが、女性ユーザーの獲得を目指し手帳サイズのボードを完成し、6度目のクラウドファンディングを開始した。すでに調達額は2500万円を超え、近く配送を始める予定だ。またデンソーの協力を得て、人と協調して作業するロボット2台を委託工場に設置し、生産性を高める試みも始める。また特許技術であるスナップバイディング構造をホワイトボード以外の分野に転用、横展開しようと考えており、実際に異業種の企業と協業に向けた交渉に入っている。

企業データ

企業名
バタフライボード株式会社 (BUTTERFLYBOARD INC.)
Webサイト
設立
2017年7月
代表者
福島 英彦 氏
所在地
〒225-0002 神奈川県横浜市青葉区美しが丘5-29-48
Tel
045-904-9996