起業の先人に学ぶ

メイドカフェを核にサブカルチャーの集積地を作りたい【ネオディライトインターナショナル】

クールジャパンのひとつとして、海外からも注目を集めるメイドカフェだが、国内では、"マニアックな人の店"というイメージが強い。そこで、一般の人にも楽しめるメイドカフェを作り、そこを核に、日本のサブカルチャーの発信基地へとビジネスの拡大を目指す人がいる。ネオディライトインターナショナルの鈴木雄一郎社長だ。

株式会社ネオディライトインターナショナル 代表取締役社長 鈴木 雄一郎(すずき・ゆういちろう)
1974年5月生まれ。東京都出身。専門学校卒業後、営業の仕事を経て、ガリバーインターナショナルに入社。店長やSV、部長などを経験した後、退社。2008年1月にネオディライトインターナショナルを設立し、社長に就任。

メイドカフェのディズニーランドを目指す

「みんなで一緒に夢を実現した時の感動が、仕事のモチベーションになっている。その感動を従業員と共有し続けたい」と語る鈴木雄一郎社長

──2008年にメイドカフェ「めいどりーみん」を開業され、現在では、秋葉原を中心に13店舗を展開しておられると伺っています。なぜ、メイドカフェの事業を選んだのですか?

メイドカフェは15、16年前からあり、TVドラマや映画の「電車男」でブームになったのが2005年ですから、我々は、後発組でした。しかも、サブカルチャーのファンだったわけでもありませんでした。にもかかわらず、メイドカフェを始めたのは、このビジネスに可能性を感じたからです。

メイドカフェは、マンガの世界観をリアルに再現した空間で、思わず苦笑いしてしまうようなサービスもあるのですが、そうした非日常的な雰囲気だからこそ、現実を忘れて楽しめるのです。つまり、規模こそ違いますが、メイドカフェは、ディズニーランドと同じ、夢の国なのです。

しかし、ディズニーランドは、広く一般に人気があるレジャー施設であるのに対し、メイドカフェは、コアなファンを対象とした閉鎖的な空間だというイメージが強い。そこで、一般の方たちにも入りやすいメイドカフェを作れば、もっと多くの人が楽しめる空間になるのではないかと考えたのです。

メイドを経営者に育てる

マニアックな人でなくとも楽しめるメイドカフェにすることで、幅広い層の利用が期待できる

──事業を展開する上で、どんなことを心がけましたか。

マニアを対象としたお店ではなく、普通の人が楽しめる店を作るということを従業員全員が共有することを心がけました。そのために、「サービス業とは何か?」といったことから、マナーの一つひとつまで、朝礼などで伝えましたが、最初は、まったく理解されませんでした(苦笑)。

メイドの募集に応募してくる子たちは、アニメやマンガといった"二次元"が好きで、普通の企業で働いた経験がない子がほとんどですから、我々の言っていることの意味がピンとこないわけです。また、業界の経験が豊富な子の中には、「そんなのはメイドカフェじゃない」と反発する子もいました。

マンガの世界しか知らなかった女の子たちが、仕事を通じて経営者の視点を身につけていくという

それでも、妥協することなく、根気よくビジョンを示しながら説明しました。すると、彼女たちも次第に変わっていき、今では、アルバイトから店長になった従業員は、6、7人いますし、5店舗を統括する責任者になった子もいます。こちらの話すことの意味すらわからなかった子たちが、今では、上場企業の管理職と対等に話ができるような人材に育っています。

──まるで、教育事業のようですね。

その通りです。こうして、ある意味、"文化の違う人材"をゼロから育てた経験は、将来、海外での展開にも役立つと考えています。性別や国籍、文化の違いがあっても、この事業の意義や従業員に求められることをしっかりと理解させられれば、どこであっても、日本流のおもてなしを提供することができると自負しています。

秋葉原から世界を目指す

──ところで、起業する前は、大手中古車メーカーのガリバーインターナショナルで、責任あるポジションを任されていたそうですが、なぜ、起業の道を選んだのですか?

もともと、ガリバーインターナショナルに入社する時は、将来起業するつもりで、3年で辞める予定でした。けれど、仕事が面白くて、気がつけば10年経っていました。店長からスーパーバイザー、部長までを経験しましたが、入社後数年間のような成長を感じられなくなっていたこともあり、年齢的にも今を逃したくないと思い、退社することにしました。

──起業して大変だったこと、予想外だったことはありますか?

2008年の4月25日に1号店をオープンしましたが、それから2カ月経たないうちに、秋葉原の殺傷事件があり、歩行者天国が中止になってしまいました。あの事件で秋葉原の町自体の集客力が落ちた結果、バタバタとつぶれていく店が増えました。これは想定外のことでしたね。ただ、開業したばかりで、よかった時期を知らない分、「こんなものだ」と思ってやれたということはあります。

──逆に起業してよかったと思えることは、どんなことですか。

仕事の内容で見ると、まったく恰好がいいものではありません。当初は、店で寝泊まりしながら、店舗の運営を軌道に乗せて行くわけですから、肉体労働そのものです。かつてのように、スーツを着て数十億のお金を動かす仕事からは、かけ離れた生活です。でも、仕事の本質というのでしょうか、充実感、達成感、喜怒哀楽は、今の方がずっと強く感じられます。

ガリバーインターナショナルでも、中小企業だった時代から、IPOを果たし、大企業になるまでの過程を経験し、会社が自分そのものだと思って働いてきましたが、それでも、自分が設立した会社に対する思いの比ではありません。サラリーマンとして数十億円を動かしていた頃よりも、今1万円を動かす方が、真剣になります(笑)。これまでの人生にまったく悔いはありませんが、もし後悔があるとすれば、もっと早く起業すればよかったということでしょう。

──充実した毎日を送られているということですね。では、最後に、今後の事業展望を教えてください。

現在は、メイドカフェを展開していますが、これは、数百店規模で展開できるようなビジネスではありません。我々が考えているのは、メイドカフェを核に、アニメコンテンツの販売やファッション、ホテルなど、サブカルチャーをテーマにしたビジネスを展開していくことです。現在、秋葉原に「めいどりーみん」を6店舗出店していますが、この周辺に関連ビジネスを集め、日本文化の集積地として知名度を高めるとともに、ビジネス展開のノウハウを構築し、それを国内だけでなく海外にも展開していく計画です。

企業データ

企業名
株式会社ネオディライトインターナショナル
Webサイト
設立
2008年3月6日
所在地
〒101-0021 東京都千代田区外神田3-14-3 福栄秋葉原ビル4階・5階(受付)
Tel
03-6272-3263

掲載日:2013年4月 9日