起業の先人に学ぶ

家族の絆を深めるコミュニケーションツールを目指す【株式会社ベビログ】

子どもの成長記録をパソコンに保存している人は多い。そのデータをインターネット上で管理し、遠方の家族と共有するサービスが「ベビログ」だ。サービスを始めた板羽宣人社長は、公務員という安定した職場を捨て、ネット起業という新たな世界に飛び込んだ。

株式会社ベビログ 代表取締役社長 板羽宣人(いたば・のりと)
1974年11月生まれ。三重県出身。大学卒業後、吹田市役所に勤務。7年8カ月勤務した後、07年4月に個人で創業。09年に法人化。現在に至る。

子どもの成長記録をネット上で管理

「家族のきずなを深めることの大切さを今回の震災で実感した。ベビログを家族のきずなを深めるツールに育てたい」と語る板羽社長

——御社の事業の概要を教えてください。

メインの事業は、社名にもなっているべビログです。これは、写真など、子どもの成長記録をネット上で管理する会員制のサービスで、現在、約1万人が利用しています。 このほか、集めた記録を製本するサービスや誕生日などの記念日向けの商品を集めたEC(オンライン通販)などを運営しています。

——ベビログは、無料の会員制度のようですが、御社の収益源は、広告ですか?

広告収入もありますが、ECや製本サービスなどの売り上げが主な収益源となっています。メインの事業であるベビログは、無料のサービスなので、収益源にはなっていませんが、この事業は、"家族のつながりを作るサービス"として認知されればいいので、ここで収益を上げる必要はないと思っています。

——業績はどうですか?

おかげさまで、最初の年から黒字化を達成しています。

5年がかりで起業を準備

——2007年1月に起業されるまでは、公務員をされていたそうですね。なぜ、安定した職を捨て、起業されたのですか?

私はもともと「幸せな家庭を築きたい」という夢があり、その実現には"安定した仕事が不可欠だ"と思ったことから、大阪府吹田市役所の職員になりました。しかし、2、3年すると、どうもやりがいが感じられなくなり、このままでは、成長していくことも難しいと思うようになり、就職浪人してまで公務員になったのですが、辞めて起業しようと考えたのです。

——それで、すぐ起業されたのですか?

いいえ。思いだけで起業して失敗すれば、家族を路頭に迷わせることになり、それこそ幸せな家庭どころではなくなってしまうと思ったので、資金を貯めたり、経営の勉強をしたりなど、起業の準備をしました。5年ほど経ったころ、妻に、「そろそろ起業しようと思うんだけど......」と伝えると、「いいんじゃない?」と、賛成してくれたので、起業することにしました。

——起業支援のサービスなどは、何か利用しましたか?

——起業支援のサービスなどは、何か利用しましたか?
大阪市の産業創造館(以下、産創館)の支援を受けました。創業支援の仕事をしている知り合いに、「産創館の支援体制が優れている」と勧められたことがキッカケです。じっさい、経営戦略の策定から、システム会社との交渉など、多岐にわたりいろいろサポートしてもらい、本当に助かりました。

子どもの成長を記録することで記念日需要を喚起

ベビログは、子どもの成長を日記、写真、動画、音声で記録できるサイト。約1万人が利用している https://babylog.co.jp/

——ベビログを事業にしようと思ったキッカケは、何ですか?

実は、誕生日などの記念日向けの商品のネット通販で起業を考えていたのですが、産創館のコンサルタントに相談するなかで、「スポット的な記念日をつないだ方がビジネス的に面白い」という話になり、子どもの成長記録を付けるサービスを提供することで、記念日向け商品の需要を取り込むことにしたのです。

——広告宣伝などはどうされたのですか?

最初は、チラシを作り、小さな子どもがいる家庭が多そうな地域にまいたり、親子カフェとコラボレーションし、ベビログの使い方などのデモを行ったのですが、あまり効果が感じられなかったので、最近は、PPC広告やSEO対策など、ネット上の広告宣伝に限定しています。

——ECでの商品の仕入れ先はどのように開拓されたのですか?

扱いたい商品のメーカーなどに仕入れたい旨のメールを送って開拓しました。最初は、実績もなかったため、断わられることも多かったのですが、ベビログの認知度が高まるにつれ、最近は、そうしたこともなくなりましたね。

自分の力で生きていることを実感

——起業してよかったことはどんな点ですか?

守ってくれる組織もなく、自分でリスクをとって行動することは勇気がいることですが、それでも、頑張ればそれが結果となって返ってくる。そのことに充実感を感じています。公務員時代は、"生かされている"という感じでしたが、今はまさに自分で"生きている"という感じがしていますね。

——事業展開上の課題はありますか?

ベビログ自体が収益を上げていないこともあり、設備投資を控えていたため、システムが古いままで、使い勝手が今ひとつなので、今年中には、システムを新しくしたいと考えています。

——今後の事業展望も教えてください。

今回の東日本の大震災を通じ、家族は、社会の一番基本となる集団で、その絆がとても重要であることを改めて感じました。その家族の絆を深めるツールとして、ベビログが果たせる役割はとても大きいと思います。離れて暮らす祖父母なども含めて、家族がコミュニケーションを深めるツールとして活用してもらえるように、サービスの充実や年配の人でも使いやすいシステムへの変更などを進めていくつもりです。

企業データ

企業名
株式会社 ベビログ
Webサイト
設立
2009年2月
所在地
〒530-0042 大阪府大阪市北区天満橋3-3-5 TiL407
Tel
06-6882-0999

掲載日:2011年11月22日