ビジネスQ&A

成長する訪日外国人市場を活かす方法を教えてください。

観光地で観光施設を経営しています。訪日外国人旅行者が年間1,000万人に達し、今後も成長が続くと聞きました。観光業者がこの成長市場を自社のビジネスの機会として、最大限に活かすためにまず何をしたらよいでしょうか?

回答

外国人旅行者といっても、世界各国から来日する旅行者の価値観や好みはさまざまです。成長する訪日外国人旅行者市場のニーズを捉えるには、まず、自社の施設や地域の強み、特性に合った客層を販路開拓のターゲットとして選定します。

外国人旅行者と一口に言っても、ニーズや価値観、日本に求めるものはさまざまですので、販路開拓や営業活動を行う前に自社の施設や地域の強み、特性をふまえて、自社がターゲットとすべき客層を選定します。

【自社施設や地域の強み、特性の把握】

自社の施設やサービスの特徴を把握し、強みや顧客が魅力と感じる点を整理しましょう。

できれば、すでに顧客となっている外国人や、周囲の関係者の協力をえて、外国人の意見を聞いてみると、自分たちでは気づかなかったり、当たり前に思っていた点に、外国人が魅力を感じることに気づくこともあります。

【訪日外国人旅行者市場の客層の分類】

訪日外国人旅行者市場の主な客層の分類(セグメント)を把握します。

1.地域・国

東・東南・南アジア、欧州、北米、オセアニア、中東など、広域の地域と国で地理的に分けられますが、各地域・国の文化や価値観、言語、宗教等の違いに加えて、気候風土が異なることも訪日旅行に影響します。たとえば、アジアの中でも、日本より北に位置する韓国からの旅行者は温暖な気候の九州での温泉旅行を好み、台湾や東南アジアなど亜熱帯、熱帯地域からの旅行者は、北陸地方の雪壁や北海道・東北など寒冷地を訪れる傾向がみられます。

2.日本への旅行目的、日本に求めるもの

各地の自然景観や寺社仏閣、城のような名所旧跡だけでなく、独特の食文化やクールジャパンと言われるような新しい文化の魅力も備える日本に、外国人が関心を持つ点もさまざまです。また、観光旅行と言っても、主目的がスキーであったり、アジアからの女性旅行者にはショッピング目的という客層も存在します。

3.統計的属性

日本人旅行者と同様に、年齢、性別、家族形態、職業、所得など、一般的な統計的属性によっても客層が分かれます。

【訪日外国人旅行者市場の客層ターゲットの選定】

次に、上述の「自社施設や地域の強み、特性の把握」と「訪日外国人旅行者市場の客層の分類」のステップを踏まえ、今後の効率的な集客、販売促進策の策定に備えて、自社の施設や地域に魅力を感じる可能性が高いと思われる2~3つの客層を自社のターゲットとして選定します。ターゲットの選定においては、次のような要素も考慮します。

1.日本での滞在日数と旅行消費額

訪日外国人旅行者の人数では、韓国、台湾、中国を筆頭にアジアからの旅行者が7割以上を占めます(2013年)。一方、欧米やオセアニアからの旅行者は滞在日数が比較的長く、その分宿泊費や食事代など旅行消費額が多いのが特徴です。

2.旅行市場の成熟度

外国旅行の市場は、経済成長と共に成長・成熟し、旅行者のニーズが変化していきます。外国旅行が普及し始めた成長期の段階では団体旅行の比率が高く、行先は主に東京、京都、富士山といった定番コースです。外国旅行の経験を重ねるにつれて市場が成熟し、個人旅行の割合が増え、旅行の内容は個性化、多様化します。地理的にもあまり観光地化していない地方都市への訪問者も増えます。欧米の先進国の多くは、この成熟期の段階にあると考えられます。

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回答者

中小企業診断士 井上 朋子