ビジネスQ&A

飲食店での外国人対応について、注意点を教えてください。

商店街で和食店を営んでいますが、近隣の観光施設にも外国人旅行者が年々増加しており、当店のある商店街を散策する外国人観光客もちらほら見られるようになりました。外国語が得意な従業員はいないのですが、この機会に外国人の来店客を増やしたいと思います。外国語のメニュー作成や、外国人来店客対応における注意点を教えてください。

回答

日本の食文化になじみが薄い外国人にもわかりやすい表現や説明に考慮して、外国語メニューを作成し、入口の目に留まりやすい場所に設置することで、外国人歓迎の姿勢をアピールします。宗教等の食事制限がある場合に備え、メニューの使用食材リストを用意しておくと安心です。

日本を訪れる外国人旅行者の中で、旅行中に本場の日本食を食べてみたいと希望している人は少なくありません。一方で、外国人旅行者にとって、店内の様子が外から見えにくいことも多く、日本語がわからなくても注文ができるか、日本語がわからない外国人でも歓迎されるかといった不安を感じることが多いようです。

飲食店で外国人の来店を積極的に取り込みたい場合は、まず外国語のメニューを作成して、入店しなくても閲覧できる入口付近の目につきやすい場所に、メニュー、または主なメニューを写真付で説明したチラシ等を設置します。提供されるメニューや価格だけでなく、日本語がわからない外国人でも歓迎される店であることがわかり、入店への心理的な不安が解消されます。

【外国語メニューの作成】

外国語メニューを作成する際は、単純な言語の翻訳ではなく、日本の「食文化」になじみが薄い外国人でも理解しやすい説明や表現とすることがポイントです。「先付」や「焼き物」といった日本食独特の表現や日本独自の食材名は、日本語をアルファベット表記にするだけでは理解しにくいため、たとえば「先付」は西洋風に「starter(前菜)」とするなど、意訳が必要になります。メニューの翻訳は、その点を踏まえた上で行います。文字に加えて、できるだけ料理のイメージ写真も添えると、より理解しやすくなります。

また、地域の名産品や季節の食材等、日本人にはあえて説明する必要がない情報でも、外国語メニューでは説明をつけることで、日本食に関する知識が少ない外国人にはメニューを選ぶ際の手助けとなります。

さらに、日本酒や焼酎を飲んでみたいが、銘柄だけがメニューに並んでいる、説明があっても品数が多く、何を頼めばよいかわからないという外国人の声を聞きます。地元のお酒やお勧めの銘柄を2~3種類組み合わせた「テイスティングセット」を用意すると、気軽に楽しめると喜ばれ、客単価の向上にもつながります。

【食事制限への対応】

アレルギー等の健康上の理由だけでなく、宗教上の理由で食事制限がある外国人客が少なくありません。イスラム教、ユダヤ教、ヒンズー教、ベジタリアンの食事といった一般的な知識は持っておく必要がありますが、細かな制限の内容は信条や人によりさまざまです。

一方で、牛や豚を原料とするゼラチン、隠し味に使用する料理酒のアルコールなど、サービスを担当するスタッフでも使用に気づきにくい原材料もあります。お店で提供するメニューの使用原材料は、調理担当者と協力して英語のリストを作成しておくと、お客様からの質問に誰でもすぐに対応しやすくなります。

回答者

中小企業診断士 井上 朋子