市場調査データ
フィットネスクラブ(2025年版)
2025年 9月 5日
コロナ禍を経て、健康志向の高まりや在宅勤務の普及に伴い、フィットネス市場にはさまざまな業態の出店が増加している。運動を自己投資や生活習慣の一部として捉える傾向が社会的にも定着している今、フィットネスクラブの利用実態や今後の利用意向はどうなっているのか。20代以上の男女1,000人を対象にアンケート調査を行った。
1. 現在の利用状況

フィットネスクラブの現在の利用状況については、「一度も利用したことがない」が610人(61.0%)で最多となり、「過去に利用していたが現在は利用していない」の277人(27.7%)が続いた。現在のユーザー数は113人(11.3%)で、そのうち、週に1〜2回程度、週に3〜4回程度、ほぼ毎日利用しているヘビーユーザーは合わせて54人(5.4%)いる一方で、年に数回程度や月に1回程度のライトユーザーが59人(5.9%)となり、同程度の割合となった。
なお、2017年に当サイトで行った同様の調査でも利用率は約12%となっており、全体で見ると8年を経てもほぼ横ばいの状態だ。
2. 性別・年齢別に見た利用状況の内訳

フィットネスクラブの現在の利用状況を性別・年齢別に見ると、各年代を通して女性全体の利用率が10%程度なのに対し、男性全体では15%前後とやや高めな傾向にある。利用頻度で見ると「ほぼ毎日利用している」と答えた8人(8%)はすべて男性で、週に1〜2回程度、週に3〜4回程度利用している人も男性の方の割合が高い結果となった。
年代間では特に30代、40代男性の利用頻度が高い傾向にあり、週に1回以上利用している人の割合が、女性よりも高い。「過去に利用していたが現在は利用していない」と回答した割合は女性の方が高く、40代以上の女性に多い。また、「利用したことがない」と回答した人は、男女ともに40代と50代で大きな割合を占めている。これらの結果から、女性よりも男性の方がフィットネスクラブの利用頻度が高く、女性では30代と50代以上、男性では30代以上の利用者が多いことが分かる。さらに、男女ともに他の世代と比較して60代以上の利用頻度の割合が高いのは特徴的だ。
3. 利用の基準(現ユーザーおよび利用経験者)

冒頭の設問で、フィットネスクラブを利用したことがあると回答した390人を対象に、フィットネスクラブを選ぶ際に重視するポイントを聞いた。
最多となったのは「通いやすさ(立地やアクセス)」の179人(45.9%)で、次に「価格の安さ」の110人(28.2%)となった。上位2つが約7割以上を占める中、「設備の充実度(マシンやスタジオの質)」42人(10.8%)、「清潔感」の18人(4.6%)、「プログラムの種類(ヨガ、ダンス、ボクササイズなど)」の12人(3.1%)が続いた。
ライフスタイルに合わせて通いやすさを重視しながら、価格を抑えた施設が選ばれる傾向は強いが、一方で、設備の充実度や清潔感に加えて、プログラムの種類で決定するというユーザーも多い。
4. 性別・年齢別に見た利用の基準の内訳(現ユーザーおよび利用経験者)

フィットネスクラブを選ぶ際のポイントを、性別・年齢別に示したのが〈図d〉である。女性が「通いやすさ(立地やアクセス)」を重視するのに対し、男性は「価格の安さ」を優先していることが分かる。生活圏の兼ね合いからか、特に40代~50代女性にその傾向が顕著だ。一方、男性は全年代において「価格の安さ」を重視する割合が比較的高い。また、女性がヨガやダンスなどの「プログラムの種類」に着目しているのに対して、男性は「営業時間・24時間営業の有無」を重視している点も興味深い結果だ。
年代別で見ると、若年層ほど「価格」を重視することは明らかで、「設備の充実度」と「清潔感」は各年代を通して注目するポイントといえそうだ。
5. 利用にかける費用(現ユーザーおよび利用経験者)

フィットネスクラブを訪れた際に、1回で使用する金額を聞いた。なお、月会費や回数券を利用している場合は、それらを1回あたりに換算した金額をたずねた(次の設問も同様)。
最も多かったのは「500円〜1,000円未満」の133人(34.1%)で、続く「1,000円~2,000円未満」の76人(19.5%)と「500円未満」の65人(16.7%)、「2,000円~3,000円未満」の44人(11.3%)とを合わせると、3,000円未満という回答が約8割となった。利用基準として「価格の安さ」を重視する回答の多さを裏付ける結果となった。
6. 性別・年齢別に見た利用にかける費用の内訳(現ユーザーおよび利用経験者)

フィットネスクラブ1回の利用にかける費用は、性別・年齢別にも傾向の違いが見て取れる。価格の安さを優先する利用者が多く、全体としては約7割の人が2,000円未満と回答。中でも「500円〜1,000円未満」という回答の割合が高かった。特に、60代以上の男性だけで見ると約9割が2,000円未満と回答し、50代と60代以上の女性の約6割は1,000円未満と回答している。男性は女性に比べて3,000円以上の割合が高い傾向があり、特に20代~40代に顕著だった。
年代間の違いについては、50代や60代以上は低額で抑える人が多く、高額利用のユーザーは30~40代に多い傾向が見られる。利用頻度が多いほど、1回の利用にかける費用を抑えるといった選択につながることから、中高年層が気軽に通えるコンビニフィットネスの存在なども影響していることが考えられる。
7. 利用する理由(現ユーザーおよび利用経験者)

フィットネスクラブを利用する理由をたずねたところ、最も多かった回答が「健康維持や運動不足の解消」の190人(48.7%)で、次に「体型維持のため」の91人(23.3%)、続いて「筋力や体力の向上」の72人(18.5%)となり、健康習慣のためという目的意識の高さが際立つ結果となった。また、「ストレス発散やリフレッシュのため」の26人(6.7%)や、「習慣として(ライフスタイルの一部)」の4人(1.0%)、「人と交流するため」の3人(0.8%)など、体づくりのためだけではない理由を挙げるユーザーも少なくない。
8. 性別・年齢別に見た利用する理由(現ユーザーおよび利用経験者)

フィットネスクラブを利用する理由を性別・年齢別に見ると、その違いは顕著だ。まず、性別においては「健康維持や運動不足の解消」や「筋力や体力の向上」という回答は男性に多く、「ダイエット・体型維持のため」は女性の方が多い傾向がある。年代別では、60代以上は男女ともに「健康維持や運動不足の解消」や「筋力や体力の向上」を理由にしている人が高い割合を占めている。また、「ダイエット・体型維持のため」と回答しているのは20代から40代の女性に多いことがわかる。
9. 今後の利用意向

アンケートの全対象者1,000人に今後の利用意向を聞いたところ、「ぜひ利用したい」の91人(9.1%)と「どちらかと言えば利用したい」の203人(20.3%)と答えた人の合計は294人(29.4%)となった。また、「全く利用したくない」が252人(25.2%)と「あまり利用したくない」の150人(15.0%)を合わせると、約40%を占める結果となった。ただし、最多回答となった「どちらとも言えない」の304人(30.4%)は、状況によっては利用するかもしれないと捉えられる流動的なユーザー層であるため、動向を注視すべきだろう。
2017年に行った同様の調査では、「どちらとも言えない」と答えたのは27%で、「全く利用したくない」「あまり利用したくない」の合計は43%であることから、若干ではあるが消極的な利用意向の人が減少していることがうかがえる。
10. 性別・年齢別の今後の利用意向

今後の利用意向を性別・年代別に示したグラフ〈図j〉で見ると、「ぜひ利用したい」と回答している割合は男性の方がわずかに高い傾向がある。「どちらかと言えば利用したい」も合わせた積極的な利用意向は男女ともに20代、30代で比較的高い割合となった。
記述式回答の中では、「体力不足を補ったり筋肉を鍛えたいから」「お金と時間に余裕があれば利用してみたい」「近くて安ければ利用したい」などの前向きな意見がある一方で、「YouTubeを見ながら自分でやっているから必要性を感じない」「お金をかけなくてもトレーニングはできるから」「行くのが面倒だから」「良いジムがなかなかない」などの消極的なコメントも散見された。
11. まとめ(ビジネス領域としてのフィットネスクラブ)
「3.利用の基準」で解説したように、フィットネスクラブの利用者は「近さ」「安さ」を重視する傾向にある。忙しいライフスタイルに合った、すき間時間に利用可能なことが選択基準の大きなポイントになっており、無理なく続けられる環境が求められていることがうかがえる。コロナ禍以降は混雑回避や清潔感、非接触施設なども重要な選択要因となっている。
さらに、「8.性別・年齢別に見た利用の理由」では、それぞれが目的を持って通うフィットネスクラブの必要性が明らかとなった。ダイエット、シニア対応、女性専用など、ニーズに合わせた目的特化型の施設が求められている傾向にある。オンラインでの自宅フィットネスなども普及していることから、よりパーソナルな空間での運動が実現可能であり、利用者の選択肢が細分化されてきているといえる。性別・年齢によって異なる利用意識とニーズを把握した上で、全年齢層に向けたサービスの提供ができるか否か。特化型フィットネスの取り組みなどによる差別化で、ユーザーの利用意向を押し上げることができるかどうかが今後のフィットネス事業の鍵となりそうだ。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)
調査概要
- 調査期間:
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2025年4月26日~6月16日
- 調査対象:
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国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1,000人
- 調査方法:
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インターネットによるアンケート調査
最終内容確認日2025年9月