市場調査データ

猫カフェ(2024年版)

2024年 11月 1日

猫カフェは、店内の飼い猫と顧客が自由に触れ合える空間を提供する業態のカフェである。2000年代初頭に誕生したといわれる猫カフェは、直近の10年間で都市部を中心に件数を大幅に増やし、認知度も高まっている。2010年に実施した同種調査と比較して、現在の利用状況や人々の意識にどのような変化が見られるだろうか。20代以上の男女1,000人を対象にアンケート調査を実施した。

1. 現在の利用状況

〈図a〉猫カフェの利用状況(n=1,000)
〈図a〉猫カフェの利用状況(n=1,000)

猫カフェの利用状況について聞いたところ、回数にかかわらず利用しているユーザーの数は94人(9.4%)、非ユーザーの数は906人(90.6%)という結果になった<図a>。ユーザー数(利用率)は全体の1割程度にとどまるものの、2010年に当サイトで行った同種の調査時の3%と比ベると6.4ポイントアップしており、利用者はやや広がりを見せている。

ユーザーの利用頻度を見ると、「年間で数回程度利用している」が最多で51人(5.1%)、次いで「半年に数回程度利用している」が16人(1.6%)だが、一方で「月に2、3回程度利用している」も13人(1.3%)おり、熱心なユーザーがいることがうかがえる。

2. 性別・年齢別に見た利用状況の内訳

〈図b〉性別・年齢別に見た猫カフェの利用状況の内訳(n=1,000)
〈図b〉性別・年齢別に見た猫カフェの利用状況の内訳(n=1,000)

猫カフェの利用状況の性別・年齢別の割合を示した<図b>を見ると、いずれの年代でも女性より男性のほうがユーザーの割合が高い。10年の調査では女性の利用率(4%)が男性(2%)より高い結果だったが、今回は男性の利用率が上回る結果となった。

具体的に見ると、女性は20代、30代で10%前後の利用率となっており、40代以上では5~6%に下がる。一方の男性は、60代以上を除く全年代で10%以上の利用率となっている。特に20代、30代では15%近いが、50代でも12.4%となっており、年代を問わず利用しているようだ。猫カフェの誕生から20年が経過して店舗数が増大したことや認知度が上がったことで、男性の利用がより拡大したことがうかがえる。

3. 利用の理由(ユーザーのみ)

〈図c〉猫カフェを利用する理由(ユーザーのみ)(n=94)
〈図c〉猫カフェを利用する理由(ユーザーのみ)(n=94)

猫カフェのユーザーに利用理由を聞いた設問において、最多回答は「仕事や学業の疲れをいやしたいから」の30人(31.9%)だった。「自宅で猫を飼えないから」の25人(26.6%)が続き、自宅で猫を飼えない人がいやしを求めて猫カフェを利用していることがうかがえる。次いで「家族や友人に誘われるから」の17人(18.1%)、「お気に入りの猫がいるから」の14人(14.9%)という順になった<図c>。

4. 利用にかける費用(ユーザーのみ)

〈図d〉猫カフェ1回の利用にかける費用(ユーザーのみ)(n=94)
〈図d〉猫カフェ1回の利用にかける費用(ユーザーのみ)(n=94)

猫カフェ1回の利用にかける費用で最も多かった回答は「1,000円〜1,500円未満」の27人(28.7%)で、「1,500円〜2,000円未満」の20人(21.3%)と合わせて1,000円台が5割を占めている<図d>。「500円〜1,000円未満」の18人(19.1%)、「2,000円〜3,000円未満」の16人(17.0%)がそれに続く。喫茶店の平均的な利用料金に比べて客単価はやや高めである。

参考として一般的な猫カフェの料金体系は、時間制の場合は最初の30分が500円〜1,000円、1時間で1,000円〜1,500円、長時間のパック料金では2,000円以上というところが多く、今回の回答もおおむね料金体系に即したものとなっている。

5. 利用の基準

〈図e〉猫カフェの利用基準(n=1,000)
〈図e〉猫カフェの利用基準(n=1,000)

利用状況にかかわらず猫カフェを選ぶ際に重視するポイントで最も多かった回答は「そのほか(衛生面など)」で350人(35.0%)であった<図e>。ただしユーザーに限るとこの回答は5.3%にとどまる〈図f〉ため、非ユーザーにとっては生体を扱う飲食店の衛生面がより気になる点であるようだ。実際に自由記述欄でも「衛生管理をしっかりしている店舗であれば行ってみたい」「ダニや虫が気になる」「猫の毛やにおいが気になる」といった非ユーザーの回答が見られ、衛生管理は起業の上でまず無視できないポイントだろう。

全体回答の2位以下は「店舗にいる猫の数や種類」の143人(14.3%)、「生活圏内からの距離」の138人(13.8%)、「低価格、お得感」の136人(13.6%)が同程度で続いている。

〈図f〉猫カフェの利用基準(ユーザーのみ)(n=94)
〈図f〉猫カフェの利用基準(ユーザーのみ)(n=94)

ユーザーのみに絞った結果を見ると、「店舗にいる猫の数や種類」の21人(22.3%)、「生活圏内からの距離」の19人(20.2%)が多かった<図f>。また「接客などサービスの質」と答えた人の割合も高く、全回答者の7.2%に対して16.0%であった。実際に利用している人は、猫の数や種類を含めたサービスの質をより重視していることがうかがえる。

6. 今後の利用意向

〈図g〉猫カフェの今後の利用意向(n=1,000)
〈図g〉猫カフェの今後の利用意向(n=1,000)

猫カフェの今後の利用意向について、「ぜひ利用したい」は105人(10.5%)、「どちらかと言えば利用したい」は218人(21.8%)となり、これらを合計すると3割以上が積極的な利用意向を持っていることがわかった<図g>。現ユーザーの割合(9.4%)と比べるとかなり高い数値である。記述式自由回答欄では「いやされるから」の回答が多い。なかには「子どもが喜ぶから」の回答も複数見られ、家族で利用するユーザーもいることがうかがえる。非ユーザーからも「機会があれば行ってみたい」「いやされてみたい」「一人では行きづらいが、人に誘われたら行ってみたい」といった回答が寄せられた。

一方で利用に消極的な人の意見を見ると、「猫が好きではない」「興味がない」などのほかに、「猫にとってストレスになると思うから」や、前述したとおり「衛生面が気になる」といった回答が寄せられている。

また、利用意向の有無にかかわらず自由回答で目立ったものに「保護猫カフェ」に対するポジティブな反応があった。保護猫カフェとは捨て猫や迷い猫、飼い主が飼育できなくなった猫などを保護し、里親を探す活動の一環としてカフェを運営するものである。「譲渡前提の保護猫カフェなら行ってみたい」、「保護猫に対して、社会貢献がしたい」「猫が好きだし、保護猫活動もできるなら応援したい」といった回答が寄せられた。

7. 性別・年齢別の今後の利用意向

〈図h〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)
〈図h〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)

性別・年齢別の今後の利用意向〈図h〉を見ると、20代・30代女性は積極的な利用意向を持つ割合が45%超と、半数近くに利用意向があるという結果となった。また、50代女性の利用意向も37.6%と高めである。男性では積極的利用意向を持つ割合はやや下がるが、それでも現ユーザーの割合に比べるとどの年代も利用意向は高い。

8. まとめ(ビジネス領域としての猫カフェ)

今回のアンケートでは、猫カフェの利用率は9.4%と全体の1割程度という結果だったが、2010年調査時より6.4ポイント上昇とユーザー数はやや増加の傾向が見られる。なにより今後の積極的な利用意向がある回答者の割合が3割以上を占め、ユーザーの拡大が見込まれる。60代以上の利用率、利用意向はほかの年代に対してやや下がるものの、性別や年代を問わず幅広い利用者が期待できそうだ。

顧客の獲得に関しては、今回のアンケートからは2つの方策が考えられる。まずグループ客をターゲットとする戦略だ。回答の中には「子どもが喜ぶから利用する」といった家族での利用実態や、「誘われたら行ってみたい」といった多人数での利用意向が見られた。積極的な利用意向の割合が高かった20代・30代女性を中心に、グループ割の料金を設定したり、猫用のおやつをサービスするなど、何らかのインセンティブを付加する方法が考えられる。

もう一つは保護猫カフェとしての開業である。猫の福祉を向上させる活動の一環として評価され、「保護猫カフェなら行ってみたい」という回答者の声も複数寄せられている。ただし、福祉の意味合いが強いため非営利団体が運営していることも多く、運営面での課題が残る。公共の助成金や寄付の活用、ボランティアの協力も得ながら、いかにランニングコストを抑えるかが事業継続の鍵となるだろう。

課題としては、主に非ユーザーから寄せられた衛生面や猫のストレスへの対応がある。飲食店という業種柄、特に衛生管理は徹底する必要がある。また、昨今の動物愛護意識の高まりもあり、猫がストレスを感じない環境づくりや設備の設置など猫の心身の健康管理も欠かせない。

日本発祥の猫カフェは、海外からの観光客にもユニークな文化体験の一つとして高評価を得ていることにも注目したい。国内需要にとどまらずインバウンドを意識した店舗づくりも考慮すると、さらなるユーザー層の拡大が見込めそうだ。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査概要

調査期間:

2024年6月29日〜7月15日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1,000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2024年10月

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