市場調査データ
時計・宝飾店
2025年 11月 28日
近年の時計・宝飾店業界は、高級ブランドの人気に加え、インバウンドの需要が市場を押し上げる一方で、普段使いの商品は伸び悩み、業界全体で消費者の嗜好や価値観の変化が鮮明になっている。市場全体は回復基調にあるものの、その内訳は二極化の傾向にあるようだ。時計・宝飾店の利用状況や利用金額、今後の利用意向を調査するため、20代~60代以上の男女1,000人を対象にアンケート調査を実施した。
1. 現在の利用状況
時計・宝飾店の現在の利用状況は、「過去には利用していたが、今は利用していない」と回答した人が432人(43.2%)で最も多い結果となった。一方で「数年に1回程度利用している」の152人(15.2%)、「年に1回程度利用している」の46人(4.6%)と、頻繁ではないものの、一定の頻度で利用し続けているユーザーも少なからず存在する。また、「月に2〜3回以上利用している」と答えたヘビーユーザーが20人(2.0%)存在していることも注目に値する。こうした層は時計やジュエリーが好きな愛好家や、ギフトなどを目的とした継続的な購買層である可能性が高い。
2. 性別・年齢別に見た利用状況の内訳
時計・宝飾店の現在の利用状況を性別・年齢別に見ると、20代から40代の男女で「一度も利用したことがない」と回答した人の割合が高い傾向にある一方、男女ともに50代以降は、利用経験者の割合が高い。
その傾向と関連して興味深いのが、年代が上がるにつれて「過去には利用していたが、今は利用していない」の割合が増えているものの、「年に1回程度以上」利用しているユーザーは1割程度存在し、とりわけ60代以上の女性は2割に迫る。およそ10人に1人は、年に1回以上利用し続けるリピーターがいるようだ。
3. 利用の基準(現在の利用者および過去の利用経験者)
時計・宝飾店を利用したことのある693人を対象に、店舗を選ぶ際に重視するポイントを聞いた。最多回答は「正規販売店であること」の207人(29.9%)で全体の約3割を占め、「アフターサービスの充実度」の71人(10.2%)、「店舗の雰囲気、店員の接客態度」の70人(10.1%)を含めると、半数近く(50.2%)が安心して購入できる信頼感のある店舗を選んでいることが分かる。
その他は「希望するブランドの有無」の112人(16.2%)、「価格の安さ・お得感」の92人(13.3%)、「品ぞろえの豊富さ」の91人(13.1%)が重視されている一方で、「自宅・職場からの近さ」については24人(3.5%)と少数にとどまった。利便性よりも安心感や品ぞろえが優先されるようだ。
4. 性別・年齢別に見た利用の基準の内訳(現在の利用者および過去の利用経験者)
〈図d〉は、時計・宝飾店を選ぶ際に重視するポイントを性別・年齢別に示したものである。男女ともに顕著なのが「正規販売店であること」を重視するという回答で、特に60代以上の女性で高い割合を占めている。また、20代を除けば、女性は男性に比べて「アフターサービスの充実度」を重視する割合が高いことが見て取れる。
一方で、男性は40代や50代で「価格の安さ・お得感」と回答した割合が高く、2割以上の人が利用基準として挙げている。また30代の男性は「希望するブランドの有無」と答えている割合が高い傾向にある。これは、好みのブランドや商品をあらかじめ下調べした上で、その商品を取り扱う店舗を訪れている人が多いと見ることができる。
5. 利用にかける費用(現在の利用者および過去の利用経験者)
時計・宝飾店の1回の利用で使用する金額を尋ねたところ、最も多かったのは「3万円未満」の335人(48.3%)で、時計・宝飾品の相場からすれば比較的低額の利用者が約半数であることが分かった。次いで「3万円〜10万円未満」の229人(33.0%)となり、これらの回答を合わせると全体の約8割は10万円未満の利用という結果になった。スマートウォッチやクオーツ式時計、アクセサリーなどのカジュアルなアイテムを購入する層がこの金額帯での利用者と考えられる。
残りのおよそ2割の内訳は「10万円〜30万円未満」の76人(11.0%)、「30万円〜50万円未満」の28人(4.0%)、「50万円〜100万円未満」の20人(2.9%)となり、「100万円以上」と回答したのは5人(0.7%)にとどまった。これらの中でも特に30万円以上となると、クオーツ式時計に比べると高価な機械式時計や、貴石が入ったジュエリーを購入する層だと推測される。
6. 性別・年齢別に見た利用にかける費用の内訳(現在の利用者および過去の利用経験者)
時計・宝飾店の1回の利用にかける費用を、性別・年齢別に示したのが〈図f〉である。女性は男性に比べて「10万円未満」の割合が高く、特に20代の女性では10割、30代の女性では9割近い。「10万円未満」の割合は、女性では年代が上がるにつれて減少し、代わりに「10万円以上」の回答が増加している。一方、男性の「10万円以上」の増加率は40代や50代の男性で高く、約25%、およそ4人に1人が一度の利用で10万円以上を使用するという結果になった。
7. 利用する理由(現在の利用者および過去の利用経験者)
現在の利用者および利用経験者を対象に、時計・宝飾店を利用する理由について聞いた。最も多かったのは「実物を見て試着できるから」と回答した過去の人(52.4%)で、それに「商品の状態が確認できるから」の117人(16.9%)が続いた。購入前に実際に商品を手に取り、納得した上で選びたいというニーズが高いことが見て取れる。一方、「メンテナンスを依頼するため」との回答も68人(9.8%)と一定数に上り、アフターサービスを目的とした利用も無視できないことが分かる。
また、安心感や信頼性を重視する「信頼できる店舗か確認したいから」の47人(6.8%)、「店員の説明を聞きたいから」の44人(6.3%)という回答からも、時計・宝飾店を選ぶときに重視するポイントと同様に、高額商品を慎重に選びたいという心理がうかがえる。
8. 性別・年齢別に見た利用する理由(現在の利用者および過去の利用経験者)
時計・宝飾店を利用する理由について、性別・年齢別に示したのが〈図h〉である。30代から50代の女性で高い割合を示したのが「実物を見て試着できるから」という回答で、特に40代において顕著だった。また、性別や年齢を問わずに多いのが「商品の状態が確認できるから」という答えで、記述式の自由回答の中には「現物を確認したうえで、ECサイトで購入する」というコメントも見られた。
男性に目を向けると、「店員の説明が聞きたいから」という回答が多く、特に20代から30代の若年層で目立つ。ウェブサイトやSNSではなく、実際の専門家の話を聞いてから購入したいという心理が読み取れる。「ギフトなどの相談をするため」と回答した割合も多く、やはり専門家の意見を頼りにしているようだ。
9. 今後の利用意向
アンケートの全対象者1,000人に今後の利用意向を聞いた。「ぜひ利用したい」と回答した人は107人(10.7%)、「どちらかと言えば利用したい」と回答した人は237人(23.7%)で、両者を合わせると344人(34.4%)となり、3人に1人が積極的な利用意向を示した。
一方で、「あまり利用したくない」の134人(13.4%)と、「全く利用したくない」の180人(18.0%)を合わせると314人(31.4%)となり、消極的な意向を示す層も同程度存在する。また、「どちらとも言えない」と答えた人は342人(34.2%)で、結果として、積極的、中立的、消極的な利用意向を示す人がおよそ3分の1ずつに分かれる形となった。
10. 性別・年齢別の今後の利用意向
今後の利用意向について、性別・年齢別に表したのが〈図j〉である。「ぜひ利用したい」「どちらかと言えば利用したい」と前向きな利用意向を示した人の割合は、男性に比べて女性の方が高い傾向にある。一方で、60代以上の女性の約半数が「どちらとも言えない」と回答しており、50代・60代以上の男性でも同様に中立的な回答が高い割合を占めている。経済力がある高齢世代は、条件次第では顧客になる可能性を秘めているようだ。
対照的に、「全く利用したくない」と回答した割合が多かったのは男女ともに20代から40代である。「あまり利用したくない」という回答と合わせると、女性は2~3割が、男性は4割前後が消極的な意向を示している。時計・宝飾品への憧れの薄れ、時計の必要性の低下、経済的な理由など、さまざまな背景がありそうだ。
11. まとめ(ビジネス領域としての時計・宝飾店)
今回のアンケート調査から、店舗を利用する主な理由として、「実物を見て試着したい」「商品の状態を確認したい」といったニーズが、性別や年代を問わず高いことが明らかになった。高額品であるがゆえに、購入前に実物を確認して納得したいという、安心感や信頼性を重視する購買行動が、店舗利用の大きな理由になっている。さらに、店員からの説明やギフトの相談、アフターサービスといった対面接客ならではの付加価値も、利用動機として一定の割合を占めた。
一方で、今後の利用意向では、60代以上の女性や50代以上の男性で「どちらとも言えない」と回答した割合が高く、利用者としてのポテンシャルを有していることが注目される。条件やきっかけ次第では、今後の重要な顧客層となり得るだろう。
以上を踏まえると、時計・宝飾店における今後の事業展開としては、安心感やアフターサービスの信頼性を訴求して高齢世代へのアプローチを強化する、若年男性への情報提供やギフト需要を開拓する、オンラインと実店舗を展開して利用ハードルを下げる、などの戦略が有効であると考えられる。リピーターとなる顧客を確保しながら、潜在的な需要に訴求するアプローチを行うことが、ひとつの鍵になりそうだ。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)
調査概要
- 調査期間:
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2025年7月5日~9月16日
- 調査対象:
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国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1,000人
- 調査方法:
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インターネットによるアンケート調査
最終内容確認日2025年11月