BreakThrough 成功事例
暗闇でも防カビ・抗菌効果が持続する独自製品のさらなる高付加価値化に挑戦【株式会社オプス】
2020年 3月 6日

従来の防カビ・抗菌剤では効果が表れにくい暗闇でも効果を発揮する「アドバンスコート」を生み出し、その後もさらなる高付加価値化を追求する「株式会社オプス」。ビルメンテナンス業を本業とする同社がいかにしてこの新価値にたどり着き、その事業展開の中で新価値創造展をどのように有効活用しているのか。同社の安達裕氏に伺いました。
効果のメカニズムを明らかにすることも重要
光触媒による抗菌作用を活用した従来の防カビ・抗菌剤には、紫外線が届かない暗い場所だと十分な効果が発揮できないという欠点がありました。同社が提供する抗菌剤「アドバンスコート」は、紫外線ではなく地球上のほぼすべての場所にある“自然放射線”を活用するため、暗闇でも防カビ・抗菌・消臭効果を発揮できます。
「地下室などは太陽光が届かないだけでなく、湿気も溜まりやすくカビが生えやすい。こうした場所にアドバンスコートは最適です。しかもその効果は長期間持続します。検証実験の結果、散布から1年後も効果が持続していると確認されました。また7年間効果が持続している現場もあります」

※RLUは、汚染度などを調べる「ATP(アデノシン三リン酸)測定法」において用いられる発光量の単位。数値が大きい方が、汚染度が高い。
このような高付加価値製品を生み出した同社は、実は建物の清掃・保守・管理といったビルメンテナンス業を軸とする企業です。そこにはどのような経緯があったのでしょうか。
「ビルメンテナンスに欠かせない抗菌剤について、従来品よりさらに効果の高いものを作りたいと考え、開発メーカーと一緒に研究開発を始めました。するとある時、光のないところでも防カビ・抗菌効果がある製品が完成した。しかし当初はなぜ効果が上がるのかがわからなかったため、なかなか売れ行きにはつながりませんでした」
そんななか、ある展示会で出会った九州産業大学の方から「自然放射線に反応しているのでは?」という仮説を耳にします。宮城県や仙台市の助成制度を利用しつつ、その線で調査・分析を進めていくと、実際に自然放射線を触媒とする効果が確認されました。
「このデータを学会で発表すると、メディアでも取り上げられるようになりました。いくら効果があっても、それだけでは説得力がありません。やはりメカニズムを明らかにすることが大切ですね」
異業種との連携でさらなる価値を生み出す
そんな同社が新価値創造展に初めて出展したのは2017年のこと。宮城県に選ばれた企業による共同出展※でした。
「この時に名刺交換した相手とのコンタクトが継続して販売につながったほか、他社製品とのマッチングの可能性の高さを肌で実感し、翌18年は単独で出展しようと考えました」
そこでの出会いが今、新たな価値を創造しようとしています。
「実はアドバンスコートには樹脂製品への密着度が弱いという課題がありました。新価値創造展2018では、樹脂製品を染める技術をもった京都の企業『株式会社ムラカミ』と出会い、今、この技術の応用でアドバンスコートを樹脂製品に密着させる研究を進めています。すでに大学や第三者機関によるデータ分析まで進んでいますが、非常にいい結果が出ていますね」
もう一社、木材への展開を考え、キャンバス木枠専門メーカーの「マルオカ工業株式会社」とも連携を継続中です。
「実はこの二社とも中小機構のアドバイザーの方にマッチングしていただきました。一般的な展示会とは違い、新価値創造展は異業種の方と出会えるのがメリット。そこから高付加価値製品につながる可能性が高いと考えています。ただ異業種だと自分ではどの企業とマッチングすれば新価値につながるかがイメージしづらい。新価値創造展では、そこをアドバイザーの方がうまく誘導し、自分では思いも寄らない異業種の方と引き合わせてくれるので大変ありがたいです」
新価値創造展2019でも多くの出会いがあり、そのうちのいくつかの企業とはすでに話し合いが進んでいるそうです。最後に新価値創造展の上手な活用方法を聞くと、次のように答えてくれました。
「展示会に出展したいが『何から手を付けていいのかわからない』『費用もかかるから失敗できない』とためらっている中小企業にとって、新価値創造展は特におすすめだと思います。まず、他の展示会に比べて費用が格安ですし、アドバイザーのサポートも受けられる。しかも異業種とのコラボで自社製品の高付加価値化も期待できる。恐らく他の展示会ではなかなか得られないメリットがあると思います」
※新価値創造展2017内の「公益財団法人みやぎ産業振興機構」ゾーンに出展。
取材日 2020年1月23日
企業データ

- 企業名
- 株式会社オプス
あらゆる建物の清掃・保守・管理を行う建物総合管理会社として、1992年に創業。業務で使用する防カビ抗菌剤の性能を向上させるため、メーカーとともに研究開発に着手。2016年に「自然放射線触媒アドバンスコート」の研究を日本臨床環境医学界学術集会で発表。