マンガでわかる「SWOT分析」

事業計画書の作成にあたって、はじめに会社の状況を把握しておくことが大切です。そのための方法の一つに、「SWOT(スウォット)分析」があります。
SWOT分析は、自社の事業の状況等を、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの項目で整理して、分析する方法です。
SWOT分析をすることで、事業の戦略方針が明確になり、事業計画書に説得力が生まれます。
そこで今回は、SWOT分析について、簡単にご説明します。

SWOTで、事業の現状を分析

SWOT(スウォット)分析とは、「強み(Strength)」、「弱み(Weakness)」、「機会(Opportunity)」、「脅威(Threat)」の頭文字SWOTから名付けられた、事業分析のツールです。
SWOT分析では、自社の事業の状況を、内部環境(自社がもつ資産やブランド力、品質など)のプラス要因の「強み」とマイナス要因の「弱み」と、外部環境(自社を取り巻く、市場や競合、法律など)のプラス要因の「機会」とマイナス要因の「脅威」に分けて整理します。

 

プラス要因

マイナス要因

内部環境

強み(Strength)
自社の持つ強みや長所、得意なことなど

弱み(Weakness)
自社の持つ弱みや短所、苦手なことなど

外部環境

機会(Opportunity)
社会や市場の変化などでプラスに働くこと

脅威(Threat)
社会や市場の変化などでマイナスに働くこと

「強み」の見つけ方

中小企業、とくに小規模企業の方がよく口にするのが、「うちには強みはない」「別に特別なことは何もしていない」との言葉です。しかし、何年も何十年も事業が続いているという事実があるならば、「強みがない」ということはありえません。思いつかない時は、以下のような視点から考えてみましょう。

● 顧客の視点から考える

「なぜ、お客さまは来店してくれるのか」「なぜ、当社の商品を買うのか」「なぜ、取引先は付き合いを続けているのか」と、自身に問いかけてみてください。お客さまからアンケートで意見を集めたり、取引先からヒアリングしたりしても良いでしょう。
顧客の視点に立つことで、自社の「強み」が見えてきます。

● 競合他社と比較してみる

お客さまは、競合他社と比較して「良いところがある」から自社を選んでいるのではないでしょうか?「強み」を見つけるためには「競合調査」が欠かせません。競合店の様子を見に行ったり、競合店の商品を食べてみたり、製品を使ってみたりして、自社の商品やサービスとの比較してみましょう。また、競合他社のホームページを確認するのも、一つの方法です。
また、一度調査したら終わりではありません。競合も日々進歩していますから、定期的に競合調査するようにしましょう。

● 従業員や支援者等に聞いてみる

従業員に「うちの会社の強みはどこか?」を聞いてみましょう。営業、経理、製造などの部門によって「強み」の視点は異なります。思わぬ発見があるかもしれません。
また、顧問税理士や経営指導員等の支援者に聞いてみるのも良い方法です。第三者である専門家の目から、客観的な強み(弱みも…)が分かると思います。

「弱み」の見つけ方

「強み」については考え込んでしまうが、なぜか「弱み」については能弁という経営者も多い気がします。日々経営のなかで、経営の悩みや課題に直面するなかで、自社の弱みを実感しているからかもしれません。
以下のポイントで弱みを見つけてください。

● 顧客・競合・従業員等の視点で考える

弱みは、強みの「裏返し」です。強みと同じように、顧客・競合・従業員等の視点に立って、自社の弱み、ウィークポイントについて整理しましょう。

● 「弱み」と「脅威」を混同しない

よくありがちなのが、内部環境の「弱み」と外部環境の「脅威」がごっちゃになることです。
内部環境は「自社が原因のもの、自社が持っているもの、頑張ればなんとかなるかもしれないもの」であり、外部環境は「影響を受けるだけで、自社の力では変えようがないもの」と考えると良いでしょう。
たとえば「店の立地が悪い」ことは、移転することも可能なので内部環境の弱みです。
一方、「商圏の少子高齢化が進んでいる」ことは、自社では変えられない外部環境なので「脅威」です。

「機会」と「脅威」の見つけ方

外部環境の「機会」と「脅威」は、大きな視点(マクロ環境)と、小さな視点(ミクロ環境)の二つで考えていきます。
外部環境は、会社や事業によって、プラスに働く場合(機会)と、マイナスに働く場合(脅威)があります。自社にとってどうなのかという視点で考えてください。

● 大きな視点から、外部環境を把握

自社に影響のある外部環境(マクロ環境)は、「政治」「経済」「社会」「技術」の4つの視点から考えてみましょう。 「政治」は法律の改正や政治動向、「経済」は景気動向や金利、「社会」は人口動態や生活スタイル、「技術」は新技術の登場や技術の陳腐化などがあります。たとえば、新型コロナウイルスの感染拡大による生活スタイルの変化などは、マクロ環境の大きな変化でした。

● 競合・消費者・取引先の動向などを把握

マクロ環境を分析したら、「自社に関わりの深い外部環境(ミクロ環境)」についても分析します。具体的には市場規模や成長性、競合・消費者・取引先の動向などがあります。
マクロ環境とミクロ環境は密接に関連しています。たとえばランドセルメーカーにとって、少子化の進展(マクロ環境)は、市場動向(ミクロ環境)としてランドセルの消費者減(脅威)となる一方で、高級ランドセルの人気=単価増(機会)にもなっています。

クロスSWOT分析

SWOT分析で強み・弱み・機会・脅威が整理できたら、「クロスSWOT分析」で戦略の方向について考えていきます。
クロスSWOT分析では、内部環境と外部環境を組み合わせて、「強み×機会(積極化)」、「強み×脅威(差別化)」、「弱み×機会(改善)」、「弱み×脅威(防衛・撤退)」という4つのパターンで、戦略を明確にします。

●強み×機会(積極化戦略)

自社の「強み」を活かして、「機会(ビジネスチャンス)」に対して、どんな行動や施策をとれば良いのかを検討します。
経営資源に乏しい小規模企業にとって、全方位的な戦略をとることは、なかなか難しいのが実情です。クロスSWOT分析では、「強み×機会」に注目して、「有望なビジネスチャンスに対して良いところを活かしていく戦略」を考えることが一番大切です。戦略策定は、「積極化戦略(強み×機会)」を最優先に考えていきましょう。

●強み×脅威(差別化戦略)

競合や市場縮小などの「脅威」に対して、自社の「強み」を使って、どうやって切り抜けていくかを考える戦略です。競合他社に対する差別化などが戦略の中心になります。

● 弱み×機会(改善戦略)

ビジネスチャンス(機会)を活かすために、弱みを補強したり、改善したりする戦略です。弱み・ウィークポイントを克服するのには時間がかかることが多いので、少しずつ段階的に進める必要があります。

● 弱み×脅威(防衛・撤退)

「脅威」の影響を最小限にとどめるための防衛的な戦略となります。最終的には、事業の撤退も視野に入れる必要があります。

テーマごとに、SWOT分析

経営全体・事業全体の現状を把握するだけでなく、様々な項目やテーマごとにSWOT分析を行うと課題が明確になり、戦略の方針を立てやすくなります。
たとえば、新製品の開発にあたっては「製品」の強み・弱み・機会・脅威を分析したり、採用活動が上手くいかない時には「採用」をテーマにして採用戦略を立てたりすることも良い方法です。
SWOT分析では、自社の経営や事業を取り巻く環境を多面的に分析することができます。経営者自身で、また従業員全員で、あるいは支援者とともに、強み・弱み・機会・脅威の4つのマスを様々な視点から思いつくままに箇条書きで埋めて、事業計画の作成、戦略の明確化に役立ててください。