ビジネスQ&A

合同会社について教えてください。

当社は有限会社として、小売業を営んでいます。会社法の施行を機に、株式会社への移行を検討しています。また、知人の同業者は合同会社に移行し、合同会社にはさまざまなメリットがあると聞きました。合同会社の特徴を教えてください。

回答

合同会社の特徴であり、メリットは(1)出資者の有限責任、(2)法人格の存在、(3)強い定款自治の3つを併せもっていることです。この3つを併せもつ会社は、合同会社しかありません。

合同会社とは、会社法で新しく創設された会社です。合名会社、合資会社と同じように持分会社の一つとなります。会社法では大きく、株式会社と持分会社の2種類があります。株式会社は、出資者の地位を他者に自由に譲渡することができますが、持分会社では、出資者の地位を他者に自由に譲渡することはできません。

次に、合同会社が、ほかの持分会社と異なる点は、すべての出資者が会社の債権者に対して有限責任しか負わないことにあります。これは株式会社と同様です(持分会社では出資者のことを社員と呼びます)。

また、会社の経営については、合名会社や合資会社と同様に、出資者間の合意により、ある程度、自由に決定することが可能です。

合同会社、株式会社、合名会社、合資会社を比較すると表1のとおりです。

表1 会社の形態に関する比較表
合同会社 株式会社 合名会社 合資会社
出資者の有限責任性 ×
法人格の存在
内部自治

このように、合同会社は株式会社と持分会社のよいところばかりでつくられた会社のようですが、これはアメリカのLLCをモデルとして創設されたため、日本版LLCと呼ばれています。

また、アメリカのLLCのメリットの一つとして、税務上の取り扱いがあります。法人税が課税されないため、アメリカのLLCの損益はそのまま出資者の損益として課税されます。このように、法人があげた利益には法人税が課税されず、法人の利益がそのまま出資者に配分されたかのように、出資者の所得として課税される仕組みを「パススルー課税」と呼びます。日本の合同会社においては、ほかの会社と同じように法人税が課税されます。

最後に、有限会社から合同会社へ変更しようとする場合には、次の手続きが必要となります。

<有限会社から合同会社への変更手順>

  1. 社名を新たに変更する場合には、法務局で商号と目的の調査を行う。
    従来の類似商号規制が撤廃されていますが、不正競争防止法などの関係から、この調査はしておいた方がよいでしょう。
  2. 定款の変更
  3. 商号変更による合同会社への移行による有限会社解散登記の申請
  4. 商号変更による合同会社への移行による合同会社設立登記の申請

以上の4つのステップで、有限会社を合同会社へ変更することができます。また、新しい合同会社の登記事項証明書(登記簿謄本)にはもとの有限会社から移行した旨の記載がされます。そのため、会社設立日は、有限会社を設立した日になります。なお、そのほかの手続きとしては、税務署への変更届、名刺やゴム印、ハンコなどの変更が必要です。

実際に有限会社から、合同会社へ移行する場合には、司法書士などの専門家に相談して手続きを行うことをお勧めします。

回答者

中小企業診断士
松林 伯尚