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「工場等」の判断基準に基づく個別管理標準作成上の留意点-(5)放射、伝導、抵抗等によるエネルギーの損失の防止(5-2)抵抗等による電気の損失の防止

回答

「工場等」の判断基準の「(5)放射、伝導、抵抗等によるエネルギーの損失の防止(5-2)抵抗等による電気の損失の防止」を取り上げ、「該当する設備」、「管理内容と補足説明」と「個別管理標準を作成する上での留意点」について解説しています。

「工場等」の判断基準に基づく個別管理標準作成上の留意点に関わり、8回目として、「工場等」の判断基準の「(5)放射、伝導、抵抗等によるエネルギーの損失の防止(5-2)抵抗等による電気の損失の防止」を取り上げます。

I. 「工場等」の判断基準の「(5)放射、伝導、抵抗等によるエネルギーの損失の防止(5-2)抵抗等による電気の損失の防止」に該当する設備

関東経済産業局のホームページ上で例示されている設備は、下記のとおりです。
受変電設備、配電設備

II. 「工場等」の判断基準での管理内容と補足説明

「工場等」の判断基準の「(5)放射、伝導、抵抗等によるエネルギーの損失の防止(5-2)抵抗等による電気の損失の防止」の1. 管理として規定されている項目は、アからキの7項目で、下記のとおりです。

ア.
変圧器及び無停電電源装置は、部分負荷における効率を考慮して、変圧器及び無停電電源装置の全体の効率が高くなるように管理標準を設定し、稼働台数の調整及び負荷の適正配分を行うこと。

イ.
受変電設備の配置の適正化及び配電方式の変更による配電線路の短縮、配電電圧の適正化等について管理標準を設定し、配電損失を低減すること。

ウ.
受電端における力率については、95パーセント以上とすることを基準として、別表第4(資源エネルギー庁のホームページに掲げる設備(同表に掲げる容量以下のものを除く。)又は変電設備における力率を進相コンデンサの設置等により向上させること。ただし、発電所の所内補機を対象とする場合はこの限りでない。

エ.
進相コンデンサは、これを設置する設備の稼働又は停止に合わせて稼働又は停止させるように管理標準を設定して管理すること。

オ.
三相電源に単相負荷を接続させるときは、電圧の不平衡を防止するよう管理標準を設定して行うこと。

カ.
電気を使用する設備(以下「電気使用設備」という。)の稼働について管理標準を設定し、調整することにより、工場における電気の使用を平準化して最大電流を低減すること。

キ.
その他、電気使用設備への電気の供給の管理は、電気使用設備の種類、稼働状況及び容量に応じて、受変電設備及び配電設備の電圧、電流等電気の損失を低減するために必要な事項について管理標準を設定して行うこと。

III. 個別管理標準を作成する上での留意点

  • (5-2)1. アの規定は、並列運転以外では対象外です。なお、1台運転でも、適正需要率を設定することが望まれます。そして、部分負荷での稼働基準、負荷の変化に応じた稼働台数の基準などを予め決めておくとともに、運転日誌や現場計器等で負荷率を計測記録することが必要です。
  • (5-2)1. イの規定は、配電ケーブルでの電流による損失の低減が目的であり、サブ変電所を機器近くに分散配置してケーブルを短くする、機器定格電流とケーブル長さに対応したケーブルサイズを規定する、ケーブル抵抗が規定値内に収まらないときは機器の電圧クラスを上げる、などが達成できるように、負荷容量に応じた電圧区分の設定、配電線での電圧降下などの管理標準を定めることが求められています。
  • (5-2)1. ウの規定では、電力会社から受けている主変圧器の受電端での力率に対して基準値を定め、監視、調整することが求められています。
  • (5-2)1. エの規定では、設備の稼働状況により運転、停止の基準を定め、運転日誌等でコンデンサの運転状況を分かるようにしておくことが必要です。
  • (5-2)1. オの規定では、例えば、受変電電圧のチェック、単相負荷の相入れ替えなどの方法により、三相交流電圧不平衡率を3%以下(具体的な数値は実情に応じ定めることで可)とすることが求められています。
  • (5-2)1. カの規定では、最大電流を抑えるための設備の運転順序等を定めることなどを定めることが必要です。また、デマンドがオーバーした時の措置を予め決めておくことも求められています。
  • (5-2)1. キの規定は、受変電配電設備から電気使用設備に供給する電圧、電流(必要に応じて、力率、負荷率、需要率等も)の管理値・範囲を定めることが求められています。

「工場又は事業場等におけるエネルギー使用の合理化に関する事業者の判断の基準」の別表第4「力率を向上すべき設備」

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均