省エネQ&A

屋根への省エネ対策はどんなものがありますか?また、その効果量算定方法は?<建築物省エネその2:断熱材追加施工>

回答

「断熱強化」とは、断熱材による熱伝達抵抗Rを小さくすることです。断熱材ごとの厚みを熱伝導率で除した値と密閉空気層の熱抵抗の合計値が熱伝達抵抗です。建築物に用いられる断熱材の熱伝導率は、国立研究開発法人建築技術研究所 外皮の熱損失の計算方法の表A.3.1等で定められています。

「断熱強化」とは、断熱材による熱伝達抵抗Rを小さくすることです。断熱材ごとの厚みを熱伝導率で除した値と密閉空気層の熱抵抗の合計値が熱伝達抵抗です。建築物に用いられる断熱材の熱伝導率は、国立研究開発法人建築技術研究所 外皮の熱損失の計算方法の表A.3.1等で定められています。

「屋根への省エネ対策はどんなものがありますか?また、その効果量算定方法は?<建築物省エネその1:高反射塗料施工>」の(2)式を下記に再掲します。

q=(ts-ti)÷(R+Ri)・・・(2)

q:単位面積当たりの侵入/放散熱量[kW/m2(平方メートル)]

ts:室外側屋根、壁と窓の表面温度[℃]

ti:室内温度[℃]

R:断熱材等による熱伝達抵抗[m2(平方メートル)・K/W]

Ri:室内側表面熱伝達抵抗[m2(平方メートル)・K/W]

(2)式で、室外側表面温度tsは外気温、日射量と室外側表面熱伝達抵で決まり、室内温度tiは使用者により決まり、また、室内側表面熱伝達抵Riは定数と考えられます。したがい、単位面積当たりの侵入/放散熱量qは断熱材による熱伝達抵抗Rによってのみ変化する量であり、断熱材による熱伝達抵抗Rが小さいほど、小さい侵入/放散熱量qとなります。

つまり、「断熱強化」とは、断熱材による熱伝達抵抗Rを小さくすることです。断熱材の熱伝達抵抗Rは下式で表されます。

R=Σ_(i=1)^n(di/λi)+Σ_(i=1)^n(Rai) ・・・・・・(3)

R:断熱材等による熱伝達抵抗[m2(平方メートル)・K/W]

di:i番目の断熱材の厚み[m]

λn:i番目の断熱材の熱伝導率[W/m/K]

Rai:i番目の密閉空気層の熱抵抗[m2(平方メートル)・K/W]

建築物に用いられる断熱材の熱伝導率は、国立研究開発法人建築技術研究所 外皮の熱損失の計算方法の表A.3.1に、また、密閉空気層の熱抵抗は表A.3.3に、それぞれ定められています。

【試算条件】
  • 「屋根への省エネ対策はどんなものがありますか?また、その効果量算定方法は?<建築物省エネその1:高反射塗料施工>」の屋根の外側に25mmのロックウール断熱材を敷きその上に新たな屋根を施工(二重屋根化:下図はその施工例)
  • 冷暖房期の日射時の平均屋根表面温度:41、20℃
  • 冷暖房期の空調後の室内温度:26、22℃
  • 日射時の年間冷暖房時間:
    • 冷房時間:100日/年(6~9月)×8h/日(日射時間)=800h/年
    • 暖房時間:100日/年(12~3月)×8h/日(日射時間)=800h/年
  • 電動空調機(EHP)のCOP:2.7
二重屋根化の施工例 二重屋根化の施工例
【試算と結果】
  • 現状の室内側には断熱材が未施工で、トタン等金属材料の熱抵抗は非常に小さいので断熱材による熱伝達抵抗R1は0.0と見做せます。したがって、室内側表面熱伝達抵抗Riは0.09m2(平方メートル)・K/Wですから、断熱材等による熱伝達抵抗(R1+Ri)は0.0+0.09=0.09m2(平方メートル)・K/Wと求められます。
  • ロックウール断熱材の熱伝導率は、国立研究開発法人建築技術研究所 外皮の熱損失の計算方法の表A.3.1から0.038W/m/Kで、密閉空気層は無いので、断熱材の熱伝達抵抗R2は、(25/1000)÷0.038+0=0.66m2(平方メートル)・K/Wと求められ、断熱材等による熱伝達抵抗(R2+Ri)は0.66+0.09=0.75m2(平方メートル)・K/Wと求められます。
  • また、室内側流入熱量差△qは、
    △q={(ts-ti)÷(R1+Ri)}-{(ts-ti)÷(R2+Ri)}
    =(ts-ti)×{1/(R1+Ri)-1/(R2+Ri)}
    で表されます。
  • 以上から、断熱強化前後の室内側流入熱量差△qは、
    • 冷房期間:(41-26)×(1/0.09-1/0.75)÷1000=0.147kW/m2(平方メートル)
    • 暖房期間:(22-20)×(1/0.09-1/0.75)÷1000=0.020kW/m2(平方メートル)

と求められ、年間の空調機の削減電力量は、
(0.147+0.020)×100×800÷2.7=4,948kWh/年と求められます。

本試算は、外気温より室外側表面温度が高くなる日射時を対象としています。一方、暖房が必要なのは日射の無い夜間や朝方であり、この非日射時間帯の省エネ効果は「屋根への省エネ対策はどんなものがありますか?また、その効果量算定方法は?<建築物省エネその1:高反射塗料施工>」の(2)式を修正した下式で求められます。

△Q2=(ti-to)÷{1/(Ro+R1+Ri)-1/(Ro+R2+Ri)}×S×T…(4)

△Q2:非日射時間帯での削減効果量[kWh/年]

ti:室内温度[℃]

to:外気温度[℃]

Ro:外気側表面熱伝達抵抗[m2(平方メートル)・K/W]

R1:現状の断熱材等による熱伝達抵抗[m2(平方メートル)・K/W]

R2:断熱強化後の断熱材等による熱伝達抵抗[m2(平方メートル)・K/W]

Ri:室内側表面熱伝達抵抗[m2(平方メートル)・K/W]

S:表面積[m2(平方メートル)]

T:非日射時間帯の年間合計暖房時間[h/年]

冷房期間についても同様ですが、外気温度toの方が室内温度tiより高いため、(ti-to)の項は(to-ti)となります。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均