省エネQ&A

フラッシュ蒸気って何?

回答

ドレン水とは蒸気が水に相変化したもので、一般的には、蒸気が加圧状態のため、ドレン水の温度は100℃以上となります。このドレン水が大気中に放出されると、大気中の飽和水温度である100℃となるように一部が再び自己蒸発します。この蒸気をフラッシュ蒸気(再蒸発蒸気)と呼びます。

ボイラで製造した蒸気は蒸気輸送管を通り、蒸気釜、加熱器などの需要先に送られます。蒸気輸送管では放熱により、また、蒸気釜や加熱器などでは熱的に利用された結果としてドレン水が発生します。ドレン水とは蒸気が水に相変化したもので、一般的には、蒸気が加圧状態のため、ドレン水の温度は100℃以上となります。このドレン水が大気中に放出されると、大気中の飽和水温度である100℃となるように一部が再び自己蒸発します。この蒸気をフラッシュ蒸気(再蒸発蒸気)と呼びます。

フラッシュする蒸気の割合は下式で計算できます。

F=(h1-h2)÷r2×100
F:フラッッシュ蒸気率[重量%]
h1:高圧ドレン水の比エンタルピー[kJ/kg]
h2:フラッシュ蒸気圧力での飽和水の比エンタルピー[kJ/kg]
r2:フラッシュ蒸気圧力での蒸発潜熱[kJ/kg]

例えば、配管内の圧力が0.8MPa-Aで発生したドレン水(170℃)を大気中に放出した時のフラッシュ蒸気率は、蒸気表から、0.8MPa-Aでのドレン水の比エンタルピーが721kJ/kg、大気の飽和水の比エンタルピーが419kJ/kg、大気の蒸発潜熱が2257kJ/kgであることから、フラッッシュ蒸気率は13%[=(721-419)÷2257×100]と求められ、スチームトラップからドレン水ともに雲状の蒸気が発生しているのを見かけることがありますが、これがフラッシュ蒸気です。

スチームトラップに不具合があったり蒸気輸送管に小穴が開いていると、生蒸気が直接大気中に放出されエネルギーのロスが生じます。フラッシュ蒸気が多量のドレン水を伴うのに対し、生蒸気ではドレン水を同伴しません(次図:出典は(株)テイエルブイのハンドブック)。生蒸気は熱的に利用される前であり、生蒸気の漏えいを発見した時は早急な補修が必要です。

フラッシュ蒸気の説明図 フラッシュ蒸気の説明図

また、上記の試算例から想像いただける通り、圧力の高いドレン水ほど高温であり、高いエネルギーを保有しています。そのため、圧力の高いドレン水をフラッシュタンクに集め、大気圧以上でフラッシュ蒸気を製造し、低圧蒸気として利用することが行われています(次図:出典は(株)四電エンジニアリングのホームページ)。加えて、ドレン水を回収し、ボイラ供給水として再利用することも行われています。

ドレーン回収システム例 ドレーン回収システム例

このようなことから、ボイラを所有し、日々、生産活動に蒸気を使われている事業者様は、廃蒸気(ドレン水)の行方と配管からの蒸気漏れに注意を払い、廃蒸気(ドレン水)については少なくとも熱的な回収を図り、また、蒸気漏れについては補修やスチームトラップの交換を行うことで、蒸気製造費用の確実な削減と同時にエネルギーロスの低減を図ることができます。

(参考)ちなみに、蒸気と湯気は異なるものです。蒸気は気体で無色透明ですが、湯気は蒸気が大気中で細かい水滴になったもので、光を乱反射するため白く見えるものです。省エネの観点から言うと、湯気は気体から液体に変化する過程で潜熱を失っており熱的な再利用を期待できません。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均