省エネQ&A

我が国は京都議定書を批准し第一約束期間(2008年~2012年度)での温室効果ガスの排出量を基準年比で6%削減することを約束したが、達成状況は?

回答

環境省より速報値としての2012年度の温室効果ガスの排出量が発表されました。速報によると、「京都議定書第一約束期間の5カ年平均で基準年比8.2%減となり、目標を達成する見込み」だそうです。

ご理解の通りです。我が国は、京都議定書を2002年5月31日に国会で承認し、同年6月4日に国際連合に受諾書を寄託しました。

京都議定書の国会承認に前後し、地球温暖化対策推進法の制定、地球温暖化対策に関する基本方針の閣議決定などが行われ、日本国内の対策の基礎的な枠組みが構築され、種々の対策を実施してまいりました。

11月19日に、環境省より速報値としての2012年度の温室効果ガスの排出量が発表されました。速報によると、「京都議定書第一約束期間の5カ年平均で基準年比8.2%減となり、目標を達成する見込み」だそうです。これについて石原環境大臣は、「国民の皆さんの省エネに対する努力のたまものではないかと思う。これを1つのステップにして今後、温暖化対策に努力していくうえで喜ばしい数字だ」と述べました。

環境省からの速報値を紹介すると下記のとおりです。先ずは全体概要です。

我が国の温室効果ガス排出量と京都議定書の達成状況 我が国の温室効果ガス排出量と京都議定書の達成状況
  • 第一約束期間での実際の排出量(5ヶ年平均)は12億79百万トン。実際の排出量は基準年度の排出量の12億61百万トンに比べ1.4%増加しています。
  • 実際の総排出量から差し引ける量(5ヶ年平均)として、
    (1)森林吸収量(48百万トン)(注1)
    (2)京都メカニズムクレジット(74百万トン)(注2)
    があり、合計で1億22百万トン。
  • 以上をまとめると、排出量は11億57百万トン(=12億79百万トン—48百万トン—74百万トン)となり、基準年度に比べ1億4百万トンの削減(比率として8.2%)となります。

(注1):京都議定書目標達成計画に掲げる基準年総排出量比約3.8%(4,767万トン/年)
(注2):政府取得分と民間(電力事業連合会)取得分の合計値

次に、第一約束期間におけるガス別・部門別の実際の排出量実績を下表に示します。

第一約束期間におけるガス別・部門別排出量実績 第一約束期間におけるガス別・部門別排出量実績
  • 非エネルギー起源の排出量と代替フロン等の排出量は全てのガスについて大幅な削減が達成できています。
  • エネルギー起源の排出量では産業部門が削減できています。一方、その他の部門はいずれも増加し、特に業務その他部門と家庭部門での増加の割合が高い結果となっています。

業務その他部門とは商業、サービス、事業所(オフィス)等が該当し、増加の要因としては事務所や小売等の延床面積の増加等に伴い1990 年度に比べエネルギー消費が大きく増加したことが挙げられます。また、家庭部門での増加の要因としては、世帯数の増加等に伴い1990 年度に比べエネルギー消費が大きく増加したことが挙げられます。また、各部門共通の増加要因として、震災を契機とした火力発電の増加による電力排出原単位の悪化等により排出量が増加したことが挙げられます。

地球温暖化対策を今後も継続、推進することで世界各国が合意しています。

11月11日から23日まで、ポーランドの首都ワルシャワにて気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)が開催されました。そして、20日の閣僚級会合において、石原環境大臣が演説を行い、2020年の温室効果ガス排出削減量を2005年比で-3.8%とする新たな目標を各国に示しました。既に世界最高水準にある日本のエネルギー効率下での削減を求められること、原発を考慮せずに設定しているため電力排出原単位の悪化を覚悟する必要がある等、簡単に達成できる目標ではないと感じられます。この点において、一層の省エネが求められることは確かなことでしょう。

(注)COP21のパリ協定について「COP21で採択されたパリ協定について教えてください。」参照

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均