省エネQ&A

エアコンの頻繁なオン・オフは、どうして省エネにならないの?

回答

「何分くらいエアコンをOFFにしておけば節電になるか?」は、外気条件、住宅仕様やエアコンの制御方法により変わるため、一律に論ずることは困難ですが、東京都の提案の通り、30分が目安となるでしょう。

例えば、NHKの番組(あさイチ)では、「連続運転と間欠運転(30分ごとのON・OFF)をした場合とで実験してみると、間欠運転をした方が、連続運転をした時より40パーセントも余計に電力がかかっていた」との紹介がありました。また、東京都の「家庭向け賢い節電7か条<夏>」の第4条では、「実際の室温で28℃を目安に、それを上回らないよう、エアコンや扇風機などを上手に使う。<湿度の高い日は、室内温度を下げたほうが省エネに>」と記され、このための取組の6.として、「30分程度の外出であれば、エアコンを付けたままにして消さない」とより具体的な提案がなされています。

関西電力での実験(エアコンを28℃で120分運転した場合とエアコンを5分間停止した後28℃で115分間運転した場合の消費電力)での時間ごとの消費電力の推移は下のグラフ(出典:関西電力)のとおりでした。

エアコン運転時の消費電力グラフ エアコン運転時の消費電力グラフ

エアコンを停止したことで室温が上昇し(上記実験では5分間停止したことで室温が27.3℃から30.2℃まで上昇)、この上昇分を30分くらいかけて大パワーで元の状態に戻し、設定温度になると低速運転に切り替えていることがうかがえます。

エアコンの性能を表す指標としてCOP(成績係数)が用いられます。COPは消費電力1kWあたりの冷却・加熱能力を表した値であり数値が大きいほど性能が良いことを示しています。COPは下のグラフのとおり、冷房負荷が大きいほどCOPが低くなります(出典:電力中央研究所報告「研究報告」:R09017)。

冷房負荷とCOP推定との関係グラフ 冷房負荷とCOP推定との関係グラフ

以上から、

  1. エアコンを停止すると(冷房期には)室温が上昇し、エアコンの設定器(リモコン)との温度かい離が大きくなる
  2. 再稼働すると、エアコンは短時間で設定温度となるようにエアコンの自動制御に従い大パワーで動作する
  3. 大パワーのためCOPも相対的に低くなり、電力消費量(電力消費量は消費電力の時間推移図では面積として表されます)が大きくなる
  4. 一方、連続運転をした場合は温度かい離が少なく低負荷での長期安定運転が可能となり、COPも高く、結果として電力消費量も少なくてすむ

こととなります。

室温上昇には上限があるため、停止時間が長くなれば連続運転した時より電力消費量は少なくて済みます。

「何分くらいエアコンをOFFにしておけば節電になるか?」は、外気条件、住宅仕様やエアコンの制御方法(エアコンメーカのノウハウであり公開されていません)により変わるため、一律に論ずることは困難ですが、東京都の提案の通り、30分が目安となるでしょう。

複数台の空調設備により空調を行っている(個別空調方式と呼びます)オフィスビルや工場が多数あります。これらの複数の空調設備を順番にオン・オフをする制御方法もあります。この制御の目的は最大電力(kW)の抑制であり、電力使用量(kWh)の抑制には上記と同じ理由で多くの効果は期待できません。したがい、オフィスビルや工場においても、省エネルギー(電力使用量の削減)を目指すなら空調設定温度の緩和が最も効果的です。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均