【概要】
経営を引き継ぎたいと希望する社内の人材や取引先があるのであれば、株式売却は事業承継の選択肢の一つとして十分考えられます。近年では親族外への事業承継が4割に達するという調査結果もあります。
株式売却による事業承継は、従業員にとっては雇用が継続するというメリットがありますし、あなたにとっては株式の売却収入を得られるというメリットがありますので、真剣に検討するに値する方法と考えます。
売却交渉を始める前に、買い手である後継者を関係者が受け入れるか、買い手が株式買い取りに必要な資金を調達できるか、といった問題がありますが、ここでは、これらの問題は解決されているものとして、以下の3つの留意点を指摘したいと思います。
- 会社の借入に対する担保提供や連帯保証の問題
- 会社法上の問題
- 売却に絡む税務上の問題
以下、それぞれを説明します。
【会社の借入に対する担保提供や連帯保証の問題】
<p>会社に十分な資産がない場合、経営者の個人資産が担保に提供されていたり、経営者個人が会社の債務の連帯保証人になっていることは少なくありません。</p>
<p>買い手が社内の個人である場合には、個人資産の担保提供や会社債務への連帯保証についての理解が不足している場合がありますので、これらの問題についても引き受ける能力や意思があるかどうか、認識を共有する必要があります。と同時に融資元の金融機関とも意思の疎通を図っておく必要があります。</p>
【会社法上の問題】
あなたの所有する株式が譲渡制限株式であれば、譲渡について取締役会または株主総会の承認決議が必要となります。
あなたの会社に取締役会が設置されているかどうか明らかではありませんが、質問の内容からして、あなたに敵対的な取締役がいるとも思えませんし、また、株主はあなた1人ですので、会社法上は株式売却の障害はないものと考えます。
【売却に絡む税務上の問題】
売り手であるあなたに対しては、売却価額から取得費(当初の資本金の払込のみであれば、その払込金額)を差し引いて計算した売却益に対して20%(所得税15%、住民税5%)の税金がかかります。買い手に対しては、原則的に税金はかかりません。
ただし、実際の売却価額が税務上の時価と乖離した場合には、別途課税関係が生じる可能性があります。
たとえば、税務上の時価よりも著しく低い価額で個人に売却した場合には、買い手が時価と実際の購入価額の差額について贈与を受けたものとみなされて、贈与税の課税を受ける場合があります。
また、税務上の時価の1/2未満の価額で法人に売却した場合には、あなたが時価で売却したものとして、受け取ることのできない売却益部分について、あなたが所得税および住民税を課税されるおそれがあります。
税務上の時価は売り手や買い手が個人か法人か、また、売買の前後で売り手や買い手の株式シェアがどのように変動するかによって異なります。思わぬ課税を受けないよう、売却価額の決定に際しては、税務当局や税務の専門家に相談されることをお勧めいたします。