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令和5年 年頭所感:豊永厚志・中小機構理事長

2023年 1月 4日

独立行政法人中小企業基盤整備機構
理事長 豊永 厚志

新年、明けましておめでとうございます。令和5年の新たな年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。

昨年は、新型コロナウィルス感染症の影響が長引く中、「withコロナ」の定着による社会活動の正常化や、政府の水際対策緩和によるインバウンド需要の復活などにより、国内の人流や個人消費も徐々に回復するなど、社会経済に明るい兆しも見えてきました。

しかしながら、ロシアによるウクライナ侵攻で国際情勢が不安定となり、中小企業・小規模事業者(以下、中小企業)の皆様におかれましては、原材料や資源価格の高騰及び物価高により、経営に大きな影響が生じた1年でもありました。

このように中小企業を取り巻く環境は、今までの経験では克服できないほどの厳しい経営環境に直面しています。実際に中小機構が昨年12月に公表した「中小企業景況調査」では、全産業において原材料や仕入単価が上昇していると答えた中小企業が全体の7割を超過し、「原材料・商品仕入単価DI」が1980年の調査開始以来の最高値を記録しました。

一方で、中小企業の皆様には、こうした事業環境の変化に柔軟に対応するため、海外展開などの販路開拓・新分野への進出や、事業の再構築、生産性の向上など、革新的な取り組みに挑戦していただくことが、自社の持続的な成長や地域経済の発展、ひいては日本経済全体の底上げにつながると確信しております。

このような認識のもと中小機構は、以下の事業に取り組み、中小企業の皆様をサポートいたします。

まず、第一に、皆様の「成長と飛躍」をサポートします。

足元の円安を契機に、中小企業の海外進出や輸出拡大を促進するため、初期段階の課題を明確化する専門家による相談や海外戦略策定などの伴走型ハンズオン支援により、海外展開に取り組む中小企業の裾野を拡大するほか、「EC活用支援」、ビジネスマッチング「J-GoodTech(ジェグテック)」、「海外CEO商談会」、「地域活性化パートナー企画」の活用などを通じて、海外への販路拡大を重点的に支援してまいります。
また、引き続き中小企業生産性革命推進事業を推進するとともに、新分野展開や事業再構築に前向きな中小企業による成長分野への投資や業種転換、大胆な賃上げへの取り組みに、専門家による助言やハンズオン支援及び「事業再構築補助金」などを通じてサポートします。

ベンチャー・スタートアップの育成では、全国に展開するインキュベーション施設の機能強化を図るほか、新たにグローバルマーケットを目指す国内スタートアップへ投資する海外ベンチャーファンドへの出資を加え、ベンチャーファンドへの出資を強化するとともに、アクセラレーション事業「FASTAR」や「ベンチャーデット保証制度」を通じて資金調達・成長加速化を促進し、我が国のスタートアップを強力にサポートします。

第二に、皆様の「社会課題への解決や対応」をサポートします。

人材確保・人手不足の課題に対しては、中小企業大学校による人材育成支援や各地域本部による窓口相談対応、「ITプラットフォーム」での情報発信や支援ツールの提供を行います。このほか「IT導入補助金」「ものづくり補助金」など、資金面においても中小企業のIT化、DXを促進し、業務効率や付加価値の向上に繋げてまいります。

また、インボイス制度への対応やサイバーセキュリティ対策へも「生産性革命推進事業」を通じて支援するなど、今後も相次ぐ制度変更に対する中小企業の対応を機動的にサポートしてまいります。

その他、持続可能な社会の実現のため、中小企業のSDGs目標達成、カーボンニュートラルに向けた取り組みを応援します。相談窓口の設置、情報提供に加え、昨年8月より自動車部品サプライヤーの電動化への対応に向けたサポートを開始し、企業のGX推進への取り組みを後押しします。

第三に、皆様の「事業継続と安心」をサポートします。

多発する自然災害の発生や感染症の拡大下でも事業を継続していくため、事業継続力強化計画の策定支援を行います。特に組合や連携体など複数の中小企業等による「連携型」の取り組みをサポートし、経営の強靭化を促進してまいります。

また「小規模企業共済」と、「経営セーフティ共済」の2つの共済制度を運営し、皆様に質の高いセーフティネットで安心を提供します。

さらに、経営者の高齢化に伴う事業承継対策として、地域支援機関への研修、事業承継フォーラム等を通じた啓発活動、事業承継・引継ぎ補助金などを適切に実施するとともに、中小企業事業承継・引継ぎ支援全国本部として各地の事業承継・引継ぎ支援センターの機能強化にも注力します。

事業再生については、昨年4月に発足した中小企業活性化協議会の全国本部の機能を強化し、飲食・宿泊業をはじめコロナの影響に苦しむ中小企業に収益力改善・事業再生・再チャレンジを促します。

第四に、中小企業支援機関のネットワークを拡げます。

中小機構では中小企業支援の体制を強化するため、中小企業を支援する方々を対象としたセミナーや研修を実施し、支援機関の皆様と経営力強化にむけた支援スキルの向上を図ります。引き続き全国の自治体、関係機関、地域金融機関等と連携し、中小企業の皆様の発展と成長及び地域社会の活性化に向け、頼りがいのある存在として貢献してまいります。

戦後日本は、高度成長のあと、幾たびの経済ショックに見舞われましたが、その都度それらを克服してきました。中小企業の不屈の精神と前向きな取り組みが日本経済を支えてきました。
現在、“ショック”とも呼ぶべき大きな経済的困難局面にありますが、必ず我が国中小企業は今回も課題を敢然と乗り越え、更なる高みに進むものと信じて止みません。

皆様方におかれましては、この1年が新たな成長と飛躍の年となりますよう心より祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。