REACH規則の基礎

成形品の義務-REACH規則の基礎

2021年 12月 内容改訂

成形品とは

REACH規則(第3条3項)によると、「成形品とは、化学組成によって決定されるよりも大きく機能を決定する特定の形状、表面またはデザインが生産時に与えられた物質を指す」と定義されています。

つまり、家庭や産業界で広く使われている部品・製品のほとんどは、成形品(例:家具、衣服、自動車、本、玩具、台所設備および電子機器)であると言えます。このような成形品も対象としていることがREACH規則の大きな特徴の一つです。

成形品中の物質に関するREACH要求事項

成形品中の物質に関する条件付義務(第7条、第33条)として、次の2点が成形品の製造者/輸入者に対し、課せられています。

(1)意図的放出に関連する登録義務
(2)認可対象候補物質(CL物質)に関連する届出義務およびサプライチェーンでの情報伝達義務

1. 意図的放出に関連する登録義務

成形品のEU内生産者または輸入者が対象となり、以下の条件を満たす場合、登録が必要となります。

(1)通常および当然予見できる使用条件下で、その成形品から物質が意図的に放出されている。
(2)意図的に放出される物質が成形品中に、年間に1生産者または輸入業者あたり1tを超える量で存在する。
(3)その用途が登録されていない。

成形品における登録義務の内容としては、まず「通常および当然予見できる使用条件下で、成形品から物質が意図的に放出されているかを確認すること」が必要です。

意図的放出は、成形品からの物質の放出が成形品の機能や品質と密接に関連している場合に該当します。意図的放出の例としては、ローション付きストッキング(主機能:衣服、付加機能:スキンケア)や香りつきTシャツ(主機能:衣服、付加機能:香り)など、その放出が最終使用の機能に直接関連しない付加機能に寄与するものがあげられます。

成形品の登録・届出必要性判定フローを示しましたので、参考にしてください。

2. CL物質に関連する届出義務およびサプライチェーンでの情報伝達義務

成形品のEU内生産者または輸入者が対象となり、以下の条件を満たす場合、届出が必要となります。

(1)CL物質が成形品中に、重量比0.1%を超える濃度で存在する。
(2)CL物質が成形品中に、年間に1製造者または輸入者あたり1tを超える量で存在する。
(3)その用途が登録されていない。

成形品における届出義務の内容としては、まず「成形品中にCL物質が含まれているかを確認すること」が必要です。CL物質とは、以下の性質をもつ物質の中からECHAが指定した物質です。

(a)Regulation(EC)No.1272/2008の附属書Iに示されている発がん性のカテゴリー1Aまたは1Bに該当する物質。

(b)Regulation(EC)No.1272/2008の附属書Iに示されている変異原性のカテゴリー1Aまたは1Bに該当する物質。

(c)Regulation(EC)No.1272/2008の附属書Iに示されている生殖毒性のカテゴリー1Aまたは1Bに該当する物質。

(d)REACH附属書XIIIの基準による残留性、生物蓄積性、有毒性の物質。

(e)REACH附属書XIIIの基準による極めて残留性が高い、極めて生物蓄積性が高い物質。

(f)内分泌かく乱物質など附属書XIVに含まれうるCL物質は、所定の手続きを経て決定。

※CMR:(a)(b)(c)、PBT:(d)、PBT、vPvB:(e)

届出対象となる物質はCL物質となりますが、その後認可対象物質となった場合も届出の義務が継続します。

また、届出義務の有無に関わらず、「CL物質が成形品中に、重量比0.1%を超える濃度で存在する」場合には、次の2つの情報伝達義務が必要となります。

(1)最低限当該物質名を含む、当該成形品を安全に使用できるのに十分な情報を受給者に提供する。

(2)消費者の要求があれば最低限当該物質名を含む、当該成形品を安全に使用できるのに十分な情報を消費者に、要求を受けた日から45日以内に無償で提供する。

届出および情報伝達の条件には、ともに「CL物質が成形品中に重量比0.1%を超える濃度で存在する」があります。この0.1%という濃度の分子は該当するCL物質になるわけですが、分母となる成形品はどの単位になるのでしょうか?

テレビのような個々の成形品が組み合わさってできた製品(Complex Object)をEUに輸入する場合は、テレビ全体の重量を分母とするのではなく、テレビを構成する個々の成形品を分母としなければなりません。そのため、成形品ごとにCL物質の含有率や含有量を把握することが必要となり、これら成形品ごとの情報はテレビを組み立てている最終製品メーカーだけでは把握できないためサプライチェーンを通じた情報伝達が求められることになります。

また、2021年1月から廃棄物枠組み指令(WFD)によって、REACH規則による情報伝達義務の対象となっているEU域内企業に「成形品中に重量比0.1%を超える濃度で存在するCL物質」の情報をECHAに報告することが義務付けられました。これにより成形品中のCL物質については、従来のREACH規則によるサプライチェーンを通じた情報伝達に加え、ECHAへの報告義務が加わり、EU域内企業はもちろん日本等のEU域外企業にとっても、これまで以上にCL物質の情報伝達の重要性が増していると言えます。

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。
情報提供:一般社団法人 東京環境経営研究所