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事業承継でフォーラム:中小機構

2019年 11月 27日

モデレーターの質問に答える髙橋社長
モデレーターの質問に答える髙橋社長

中小機構は11月26日、東京都千代田区のベルサール神田で「事業承継フォーラム」(商工中金共催、中小企業庁など後援)を開催した。菊正宗酒造(神戸市東灘区)の嘉納毅人会長が「老舗だから出来たベンチャー型の事業承継」と題して基調講演したほか、「経営者と後継者で築く企業の未来」をテーマに、アイ電子工業(栃木県大田原市)の髙橋德經会長と髙橋温社長、ロックシステム(横浜市神奈川区)の澤與志博相談役と澤和男社長がパネル討論した。

冒頭、中小機構の豊永厚志理事長は「中小企業の事業承継は喫緊の課題であり、実際に承継を経験した方々の取り組みをお聞きいただき、参考にしてほしい」とあいさつ。商工中金の鍜治克彦取締役専務執行役員、中小企業庁の奈須野太事業環境部長も、あいさつの中で事業承継を取り巻く現状や施策に触れた。

菊正宗酒造は1659年創業と360年の歴史を持つ老舗。嘉納会長は大学を卒業後、ビールメーカーを経て入社し、1985年から2016年まで11代目の社長を務めた。若い頃から「自分で事業を興したい」と電池の研究や工場見学に没頭し、入社後は酒造会社や酒販店向けに醸造実習研修会や日本酒ゼミナールなどの勉強会を有料で始めた経験を披露。「まさにベンチャー型の取り組みであり、老舗だからこそ出来たと感じている」と述べた。

また中小企業の事業承継について「40歳ぐらいまでに社長になることが望ましい」と強調。老舗や同族企業こそ革新的な経営が求められるとし、「新鮮な感覚を持つ若い人が実権を持つべき」「失敗しても新しいことにどんどん挑戦して欲しい」「若い時に他の業界を経験することも非常に大事だ」などと助言した。

パネル討論会では、1980年にアイ電子工業を創業した髙橋会長が、2007年のリーマンショック後に会社の売り上げが急減し倒産寸前に陥った時点で、敢えて事業を承継したことを披露。43歳で後を継いだ息子の髙橋社長は「主力事業がなくなり売上高が3分の1になりリストラも実行しなければならなかったが、良い経験になった」と話した。

髙橋社長は社長就任の10年前に社内ベンチャー「もったいない」を個人資金で創業した。「一度創業して経営とは何かを考えられた経験は大きい」と述べた。髙橋会長は「決断はなるべく早くするのが肝心。失敗もあるだろうが、勉強になったと思えばいい」と語った。

1990年にロックシステムを設立した澤相談役は、2年前に36歳だった息子の澤社長にバトンを渡した。50代で経営の第一線から退き「今後、経営には一切口を挟まない」と決意。澤社長は「社員はどうしても創業者の方を向いてしまうが、この決断には感謝するしかない」と語った。一方の澤相談役は「譲ってから1年はストレスばかりだった」と振り返った。

また澤社長は入社して取引先企業に10年間出向後、2013年に中小企業大学校経営後継者研修に入校した。澤相談役は「いったん経営陣に入ると、まとめて学ぶことが難しくなる。経営の技術を10カ月間カンヅメになって学んで欲しいと考えた」と述べた。澤社長は「客観的に自社の経営内容を調査・分析することで、経営を引き継ぐ覚悟が固まった」と語った。