業種別開業ガイド

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小売業
ドラッグストア

目次

トレンド

(1)薬事法改正による新規参入

薬事法改正によって1999年よりドリンク剤・ビタミン剤・消毒薬等の一部が医薬部外品に指定され、コンビニエンスストア等でも販売できるようになった。
2004年にはさらに健胃薬・整腸薬・口腔咽喉薬等の一部が医薬品から医薬部外品に移行され、2009年施行の改正薬事法では登録販売者制度が創設、登録販売者試験に合格すれば薬剤師でなくても第二類医薬品・第三類医薬品を販売できるようになった。このような規制緩和の動きを受け、インターネット通販やコンビニエンスストア等との競合も激しくなっている。

(2)勢いは今後も加速

ドラッグストア業界は、消費者のヘルスケアの多様なニーズに応える形で、その規模を拡大している小売業態である。日本チェーンドラッグストア協会は、2025年に業界目標として総売上高10兆円、店舗数は2万5,000~3万店を掲げている。なお、2018年度のドラッグストアの市場規模は、6.2%増の7兆2,744億円であった。

(3)ドラッグストアを巡る環境と期待される役割

2013年6月に閣議決定された『日本再興戦略』等では、健康寿命の延伸に向けたセルフメディケーションの推進が提起されている。ドラッグストアとしても、小売業の立場から、消費者のセルフメディケーションに貢献できるよう、自らの役割を再定義することが重要になってくるものとみられる。

(4)外国人旅行者向けの消費税免税制度の改正

2014年10月より外国人旅行者向けの消費税免税制度が改正され、化粧品等の消耗品が免税対象になった。近年、外国人観光客は増加傾向にあり、この免税制度の改正をきっかけにインバウンド需要の取組を強化していく動きがある。

ビジネスの特徴

一般用医薬品を中心に健康・美容に関する商品や日用品飲料・日配食品等をセルフサービスで短時間に買えるようにした小売業態である。日本では、薬剤師が常駐し、処方箋医薬品を販売・授与できる薬局、または店舗販売業の許可を受けて営業しているものが多い。
薬局を併設したドラッグストアでは、薬局部分とドラッグストア部分の許可を別に取るケースが多い。このため同一店舗内で調剤スペースとドラッグストアスペースの営業時間が異なる場合がある。
医薬品医療機器等法上、薬剤師が常駐する店舗でないと扱えない第一類医薬品もある。薬剤師不在時にも医薬品売場を開放できるよう、ガラスケースを施錠したりカーテンを使用したりしている例もある。
医薬品医療機器等法上、調剤施設を併設していない場合「薬局」の名称は使えないため、ドラッグストアには「○○ドラッグ」「クスリの○○」「○○薬品」等の名称が多い。
ティッシュペーパーなどの紙類、洗濯用洗剤、食料品、ベビー用品や一部のネームバリューのある医薬品・サプリメントなど、場合によっては原価を下回る形で安売りし、原価の2倍から5倍で販売できる医薬品や化粧品、雑貨を販売し、利益を稼いでいる。価格訴求を第一とせず、薬の専門家である薬剤師による接客等のサービスによる差別化を図る企業もある。また調剤をベースに差別化を図る企業もある。

開業タイプ

(1)メガドラッグストア

店舗面積600平方メートル以上の巨大店舗を指す。日用品、医薬品の他にも食品を扱うことが多く、巨大な商圏を持つ。カワチ薬品やゲンキーなどはこのスタイルが主流である。

(2)スーパードラッグストア

店舗面積300平方メートル以上の大型店舗を指し、多くの郊外型ドラッグストアがこの形態となっている。マーチャンダイジングと大規模小売店舗法からいって、60坪、90坪、120坪、150坪が主流である。

(3)コンビニエンスドラッグストア

店舗面積100~300平方メートルの中規模店舗を指す。住宅地で付近の住人が日頃買い物をするのに適しているスタイルである。

(4)ミニ(小型)ドラッグストア

店舗面積100平方メートル未満の小規模ストア。主に路面店、商店街、地下街、ビルなどのテナントとして出店し、会社員向けに販売。ビューティー商品に特化している店も多い。

(5)ファーマシー型店舗

売場面積60坪程度までが主流。調剤を併設したヘルス&ビューティーを基本に、ビジネス街など都心型商業地に多い。

(6)医薬品専門型店舗

地方都市や農村都市などの中心商店街をはじめ幅広い地域やスーパー内の店舗など売場面積60坪程度までが主流。商品の専門性やマンパワーを兼ね備えている。

(7)大型医薬品専門店舗

売場面積90坪以上が主流で、医薬品、化粧品、医療雑貨、健康食品、介護用品などの軽医療の領域によって構成されたもの。

(8)その他

漢方薬局の店舗や調剤薬局の店舗、異業種融合化などの複合店舗がある。

開業ステップ

(1)開業までのステップ

開業に向けてのステップは、主として以下のとおり。

①開業する薬局の場所を探す。
②事業計画書の作成。
③オープンに向けて薬局の設計やレイアウトを具体的に検討し、建築またはリフォームを業者に依頼する。
④店舗の準備が整ったらスタッフの募集を行うとともに、調剤機器や医薬品を手配する。

(2)必要な手続き

ドラッグストアの開設許可申請は所轄の保健所にて行う。従来は、事業所には1人以上の薬剤師を置く必要があったが、2009年の薬事法改正により、比較的リスクの低い「第2類医薬品」と「第3類医薬品」の販売は、「登録販売者」で対応できるようになった。ただし、「第1類医薬品」を扱う場合は、従来通り、事業所に1人以上の薬剤師を置く必要がある。

※関連法規制
薬事法、同付属法規(政令:薬事法施行令、省令:薬事法施行規則、薬局等構造設備規則など)、薬剤師法、同施行令、同施行規則、毒物及び劇物取締法、麻薬及び向精神薬取締法、覚せい剤取締法、計量法、健康保険法、その他各都道府県等の関係条例がある。

他社との差別化・商品構成

周辺の競合業種・業態店を調査したうえでコンセプトを明らかにし、差別化を図ることができているかどうかが重要である。
また、ヘルスケアとビューティーケアの売上高が占める割合や食料品の取扱割合が適切かどうかも確認する必要がる。商品構成についても、流行・季節を先取りしているかなどに留意する必要がある。

必要なスキル

個人がドラッグストアを開業する場合、大手ドラッグストアとの差別化を図り、足を運んでもらえるような店づくりを行う必要がある。大手ドラッグストアはドミナント戦略といわれる、地域を絞って集中的に出店し、同一商圏内で市場占有率を向上させて独占状態を目指す経営手法を採っており、これらの隙間の市場を狙うことになる。
一方で、チェーン展開する大手ドラッグストアのフランチャイズで独立開業、起業を目指すのも選択肢の一つとなる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

開業資金は、施設の規模のほか、賃貸または自己物件であるかなどによって、必要となる金額が異なってくる。
施設を賃借する場合には、開業前の事務所設置費用や人件費などの先行資金負担を賄うため、売上が安定するまでの当面の運転資金の準備が求められる。
店舗の立地によってはスタッフや顧客の駐車場の費用もかかるため、契約台数を検討し、申請や手続きの時に必要となる費用も、開業資金として忘れてはいけない。 また、必要があれば、薬剤師会への入会金や年会費もかかる。

開業資金を自分で用意できない場合には、金融機関からの融資の検討も必要である。資金面についてのアドバイスや薬局経営のサポートを受けられるフランチャイズで開業するという選択肢もある。

【店舗面積30坪のドラッグストアを開業する際の必要資金例】

店舗面積30坪のドラッグストアを開業する際の必要資金例

(2)損益モデル

a.売上計画
年間営業日数、1日あたりの客数、平均客単価を以下の通りとして、売上高を算出した。

売上計画の表

b.損益イメージ(参考イメージ)
標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。

損益のイメージ例の表

※標準財務比率はドラッグストアに分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点
ドラッグストアの経営指標において特徴的なのは、売上高総利益率が低く、同時に総資本回転率が2.3回と高いことである。これは、安価で大量販売することの現れである。また、総資本経常利益率はわずかにプラスであり、平均的なドラッグストアの収益性は高くない。
基本的に運転資金需要は旺盛ではないが、一定程度の在庫を持つ必要があり、この資金手当てとして借入が必要になることがある。このような在庫手当てのために、一定の手持ち資金を確保しておく必要はある。
その他、主な経費支出としては、人件費や施設の維持費が挙げられる。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)