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実例で学ぶ成長時の資金繰り

テーマ:資金調達

実務編

2014年3月17日

 前回は創業時の資金繰りについて説明しました。今回は創業してから事業がうまく軌道に乗り成長過程に入った企業の資金繰りについて、筆者の実体験も交えながら説明します。


いつもお金が足りない

 創業時はこの仕事で食べていけるかどうかの瀬戸際での資金繰りになります。資金が底をついて事業を廃業しなければならないことの恐怖との戦いでもあります。創業時の恐怖を乗り越えると、次は会社が成長過程に入ります。創業時を乗り切ったから、資金繰りが楽になるかと思われるかもしれませんが、本当の資金繰りはここから始まります。
 成長過程では入ってくるお金はある程度予測がつきます。一方、出ていくお金は創業時に比べてかなり増えているはずです。結果として創業時より入金は何倍もあるのに、なぜかいつもお金が足りないという状況が発生するのです。


 この頃には月次決算の仕組みは出来上がっていると思います。経理担当者や顧問税理士から届く月次決算の報告で、会社は黒字化していることは確認できます。それでも通帳を見ると、いつも預金残高はギリギリの水準になっているのです。そして、うちの会社は本当は儲かってないのではないか、決算数字が間違っているのではないかと不安になり、経理担当者や顧問税理士に尋ねてみます。でも返ってくる返事は「間違っていませんよ」という内容で、なんだか腑に落ちません。


 このままの状態で問題を放置して頑張る経営者も中にはいます。もっと売上を稼げばきっとお金が残らない問題は解決するはずだと思うようです。ところが、頑張れば頑張るほどさらにお金が足りなくなるのです。そしてどこかの段階で何かおかしいと疑問に思うことになります。


 どこでおかしいと思うのかは人によりますが、経理や財務に携わったことのない経営者が成長過程で直面するよくある話です。


成長時も資金繰りが必要

なぜ利益が出ているのにいつもお金が足りないのでしょうか?創業時と違い、売上の入金も毎月コンスタントにあるのに資金が足りなくなるのです。それは、成長過程の企業では動かすお金の金額が大きくなるからです。具体的な事例で検証してみたいと思います。


年商3000万円の企業(卸売業)とその企業が年商1億円の企業へ成長する過程で検証します。

 年商3000万円の企業の場合、月の売上は200-300万円くらいを前後しています。売上代金は翌月末に入金されます。原価率は売上の60%で人件費などの毎月の固定費が売上の30%発生すると仮定します。


図表1を確認下さい。当初300万円の自己資金があるので仕入代金と人件費等の支払が先行してもキャッシュ残はすべての月でプラスになっています。キャッシュフローは、入金額が少ない時など月によってはマイナスの時もあります。創業して食べていけるかどうかを乗り切った状態がこのような感じのキャッシュフローとなります。


ここで資金繰り表を考える時の注意点です。図表は月単位となっています。実際には月の中で仕入代金、人件費等の支払は、売上代金の入金より先に行うことになります。従ってキャッシュ残がすべての月でプラスになっていることを確認するだけではなく、前月末のキャッシュ残で翌月の支払ができるかどうかも確認します。例えば1月末のキャッシュ残は330万円です。翌月の2月の支払は180万円ですので2月の入金を待たなくても支払することが可能です。


創業時を乗り切った企業が翌期にヒット商品が生まれ、年商1億くらいの成長過程に入りました。年商1億円の企業の場合、月の売上は800-900万円くらいを前後します。売上代金は翌月末に入金されます。原価率と固定費は変わらず売上の60%と30%と仮定します。



図表2を確認下さい。当初600万円の自己資金があるので仕入代金と人件費等の支払が先行してもキャッシュ残はすべての月でプラスになっています。キャッシュフローは売上が急激に増えた前の月あたりが厳しいですが、自己資金でなんとかしのいでいます。
 前月末のキャッシュ残で翌月末の支払ができているかどうかを確認してみます。10月に入ってようやく前月末のキャッシュ残で翌月末の支払をその月の入金を待たなくてもできる状態になっています。利益は出ているけれどお金が足りないという状態になっています。入金がちょっとでもずれ込むとすぐに資金ショートしてしまいます。


当初の年商3000万円の頃は、動かしているお金は月300万円前後でした。ところが年商1億円の成長過程に入った頃には、動かしているお金は月900万円になります。300万円でも900万円でも先に支払が先行することに変わりはありませんので、年商が大きくなり、動かすお金が大きくなると、それに従って必要なお金も大きくなるのです。この動かすお金のことを必要資金といいます。
 年商が大きくなってくると必要資金を自己資金だけでまかなうことが難しくなるでしょう。売上が上がってもお金がないという状態は、必要資金が大きくなってきているから生じてくるのです。


成長過程では必須の必要資金の借入

創業時の借入は生き延びるための時間稼ぎという性格が強いのですが、成長過程の借入は成長スピードに会社がついていくための燃料のようなものです。成長スピードが早ければ早い程、必要資金も急激に膨らみます。先程の例を用いて必要資金の一部を借入した場合でみていきます。



図表3を確認下さい。当初600万円の自己資金に加え、成長スピードについていくために借入を1000万円にしました。返済期間は3年で調達しています。資金繰り表を見るとすべての月のキャッシュ残が1000万円を超えています。これで翌月の入金が万が一ずれ込んだとしても、支払がストップしてしまうことがなくなります。借入は返済しなければならないので、毎月の支払額は借入の返済金分増えています。このまま安定的に売上が確保できれば、借入の返済が終わる頃には自己資金が3000万円程増えています。


この企業がさらに年商1億円から年商3億円規模の会社に成長すると、さらなる資金が必要となるので、自己資金で足りない部分はさらに借入を増やしていきます。成長過程では借入金額は必要資金の増加に伴って増えていきます。借入を増やさずに自己資金で行おうとすると売上は増えているのにいつもお金がたりないという状況に陥ります。


このように成長企業は成長企業なりの資金繰りが必要となるのです。そして成長時の資金繰りをうまく行うことができると会社が成長の波にうまく乗れます。逆に成長時の資金繰りがうまくないとせっかく訪れた成長の波にうまく乗ることができません。成長時も資金繰りが大切なのは創業時と変わりありません。


借入が増えすぎても大丈夫?

借入が増えすぎるとこんなに借入して大丈夫かと心配になってくると思います。小さな会社の借入では、経営者の連帯保証をつけるのが一般的なので余計にそう考えると思います。成長過程にある企業では、必要資金を確保するために借入することは必要です。怖いのは成長過程が終わってしまい、逆に縮小傾向に陥ってしまった場合です。仕入代金は売上に連動するので売上が縮小すると仕入代金も縮小します。
 一方で人件費や事務所家賃などの固定費はすぐに削減できないものです。固定費が削減できず、入金が減っている状態だとどこかで資金ショートします。最悪の場合は、借入金を返済できず会社は倒産し、経営者も自己破産をすることになってしまいます。成長過程の燃料であった借入によって、企業の命が奪われてしまうこともあるのです。


どこまで借入して大丈夫なのかはリスクとリターンの関係にあります。調達する金額が大きいことから、経営者がとれるリスクがどこまでなのかを慎重に考え、覚悟を決めて資金調達をする必要があります。

解説者

佐藤税理士事務所/佐藤昭一       公式ウェブサイト:http://www.nicechoice.jp/

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