本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  こんなときどうする 中小企業の税金と会計

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

グループ法人税制

テーマ:税務

基礎編

2014年5月13日

1.導入背景と中小企業に与える影響

 商法改正等により企業の組織再編における法整備が進み、大企業だけではなく中小企業においても、会社分割や株式交換等を利用した組織再編により企業をグループで運営していくケースが増加する中、実情に合った課税制度を実現するため平成22年税制改正で新たに「グループ法人税制」が創設されました。


 既存の連結納税制度が一定の法人の選択適用であり、実際には上場しているような大企業が利用していた制度であるのに対し、新たに創設されたグループ法人税制は法人の規模に関係なく一定のグループ法人内で行われる一定の取引に対し強制適用されることになることから、中小企業の納税においても少なからず影響を及ぼす制度であるといえます。


2.グループ法人税制の適用を受けるグループ法人とは

 グループ法人税制の適用を受けるグループとは、100%グループすなわち完全支配関係を有するグループの法人です。
 また、完全支配関係とは、原則として、同一の者(法人または個人)が法人(甲、乙、丙)の発行済株式等の全部を直接または間接的に保有する場合における法人間の関係をいいます(図1)。


図1

図1

 同一の者が個人の場合には、その者およびその者と特殊関係のある個人も含め完全支配関係を判定することとなります(図2)。
 なお、特殊関係のある個人とは、次の(1)から(5)の者です。
(1)株主等の親族(配偶者、6親等内の血族および3親等内の姻族)
(2)株主等と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
(3)株主等の使用人
(4)上の(1)~(3)以外の者で株主等から受ける金銭等で生計を維持している者
(5)上の(2)~(4)の者と生計を一にする親族


図2


図2

 図1、図2は説明するためにシンプルに表していますが、図1および図2を併せると「叔父さんの会社の孫会社がグループ法人だった」というケースも考えられ、「グループ法人税制」の適用を受けるグループ法人がかなり広範囲にわたることがわかります。


3.新たに創設された「グループ法人税制」の具体的な制度

(1)中小企業特例の適用除外

 従来から、中小法人(各事業年度終了時資本金額が1億円以下の法人)に適用されてきた以下の優遇税制が、大法人(資本金5億円以上の法人)による完全支配関係がある中小法人、または100%グループ内の複数の大法人に発行済み株式の全部を保有されている中小法人については適用除外とされました。


  1. 軽減税率
  2. 法定繰入率による貸倒引当金計上
  3. 交際費等の損金不算入制度における定額控除制度
  4. 欠損金の繰戻しによる還付制度、等

(2)受取配当等の益金不算入(負債利子控除の取扱い)

 内国法人が、100%グループ内の他の内国法人から受ける完全子法人株式等(注1)に係る配当金等について、受取配当等の益金不算入制度を適用する場合には負債利子控除は適用せず、100%が益金不算入とされます。


(注1)完全子法人株式等とは、配当等の計算期間を通じ、継続して完全支配関係があった株式または出資の一定のもの。


(3)資産の譲渡損益の繰延べ

 完全支配関係にある内国法人間で固定資産・土地等(土地の上に存する権利を含む)・有価証券(売買目的有価証券を除く)・金銭債権および繰延資産を譲渡した場合(譲渡直前の帳簿価額が1,000万円未満の資産を除く)、その譲渡損益を繰り延べます。
 また、繰り延べられた譲渡損益は「譲受法人側の譲渡・償却・評価替え・貸倒れ・除却、その他政令で定める事由が生じたとき」および「譲渡法人と譲受法人との間に完全支配関係を有しなくなったとき」と規定されています。


 したがって、譲渡損益が繰り延べられた資産が、その後譲渡された場合には、たとえ完全支配関係がある法人への譲渡であったとしても、最初の譲渡法人において、最初の譲渡損益については認識をするということです。
 つまり、譲渡法人は、譲受法人がその後再譲渡をするまでは捕捉しなければならないこととなります。


(4)寄付金・受贈益の損金・益金不算入

 完全支配関係にある内国法人間で寄付金の受払があった場合、支出した内国法人の寄付金については全額を損金不算入とするとともに、受取った内国法人の受贈益についても益金不算入とします。


 実務では、会計上は支出した内国法人は費用、受取った内国法人は利益でおのおの計上し、法人税の申告上別表4で支出した内国法人は加算、受取った内国法人は減算することによりおのおの申告調整することとなります。
 また、あくまでも完全支配関係にある内国法人間ですので、一方が個人の場合には適用がありません。


(5)発行法人への株式譲渡に係る譲渡損益不計上

 内国法人が有している完全支配関係にある内国法人の子会社株式を、発行法人であるその完全支配関係にある内国法人に譲渡した場合(譲受子会社法人では自己株式の取得となる取引)、譲渡対価の額を譲渡原価の額とみなし、譲渡損益を計上しないこととなりました。


 つまり、従来は税務上交付された金銭からみなし配当を差し引いた残額が譲渡対価となるため、譲渡した法人ではみなし配当(益金不算入対象)と株式の譲渡損失が発生するケースがあり、結果節税が図れてしまうことがありましたが、新たにこの制度を創設することにより100%グループ法人間においては、その様な事態は起きないこととなりました。


(6)適格現物分配における課税の特例

 現物分配とは、現物分配を行う法人(現物分配法人という)が金銭以外の資産を、剰余金の配当等(みなし配当を含む)として現物分配を受ける法人(被現物分配法人という)等の株主等に交付することをいいます。
 また、適格現物分配とは、現物分配のうち、現物分配法人(内国法人に限る)と被現物分配法人(内国法人に限る)との間に完全支配関係がある場合をいいます。


 適格現物分配以外の現物分配の場合、税務上、現物分配法人に対しては、配当により交付する資産を時価により譲渡したものとして譲渡損益を計上し、被現物分配法人に対しては、配当により受け取った資産を時価で取得したものとして配当収入を計上し法人税額を算出します。
 しかしながら、適格現物分配の場合、現物分配法人は配当により交付する資産は帳簿価額により譲渡したものとして取り扱い、被現物分配法人においてもその資産を現物分配法人の帳簿価額により取得したものとして取り扱います。


 さらに、被現物分配法人におけるその配当収入は、特例制度によりその全額が益金不算入となります。
 ただし、資産を帳簿価額で取得した被現物分配法人においては、繰越青色欠損金の利用制限・特定資産の譲渡等損失額の損金不算入の適用を受けることに注意が必要です。


4.そのほか「グループ法人税制」に関連した税制改正


(1)100%子会社の清算と繰越欠損金の引継ぎ

 内国法人が有している完全支配関係にある内国法人である子会社が解散・清算をした場合、残余財産の確定にともない、会計上、親会社である内国法人において子会社株式の消滅損失が計上されることになりますが、税務上はその消滅損失について損金不算入となり、申告書上別表調整が必要となりました。


 また、この改正に伴い、内国法人が有している完全支配関係にある内国法人である子会社が解散・清算し、残余財産が確定した場合、親会社である内国法人において子会社である内国法人が有する繰越欠損金を一定の制限のもと引継ぐことができます。


(2)清算中等の法人に係る株式評価損

 内国法人が有している完全支配関係にある内国法人である子会社が解散・清算をする場合、残余財産が確定する前に親会社である内国法人において子会社株式の評価損失を計上した場合、前述(1)の繰越欠損金の引継ぎの制度により、親会社である内国法人は評価損の計上と繰越欠損金の引継ぎとを重複して適用することができてしまうため、(a)清算中の法人(b)解散が見込まれる法人(c)グループ内で適格合併が見込まれる法人についての株式評価損の計上は認められないこととなりました。


5.グループ法人税制の実務上の注意点

 グループ法人税制はあくまでも「法人税法上の取扱い」ですので、会計処理ではなく、法人税の申告書上、別表四および別表五で調整することとなります。
 資産の譲渡等、場合によっては申告調整の金額が大きくなることも考えられますので、会計上の当期利益と法人税の申告書上の課税所得に大きな差異が生じる可能性があります。
 タックスプラン等を考える場合にはあらかじめ申告調整額を認識しておくことが非常に重要になります。


※ポイント


 「グループ法人税制」は、グループで企業を運営していく場合避けて通れない税制の1つです。
 制度を理解していれば税務上企業にとって大きなメリットになる場合もありますが、理解していないと大きなリスクになることも考えられます。
 しかし、規定が複雑でわかりづらい点もありますので、グループで企業を運営している場合や将来する予定がある場合は、資本構成やグルーブ間取引についてあらかじめ慎重に専門家を交え検討し、計画的に行うことが必要となります。



解説者

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ