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消費税の増税にどう対応するか

テーマ:税務

実務編

2013年9月20日

 「増税前に知っておきたい、消費税の基本的な仕組み(1)」と「増税前に知っておきたい、消費税の基本的な仕組み(2)」で消費税の基礎知識を記しました。

 そこで今回は消費税が10%と増税になった時に、どのように対応していけばいいのかを紹介します。

自分のグループを確認

 まずは自分のグループを確認して下さい。消費税について考える時には、自分がどのグループにいるのかによって対応すべき方法が異なってきます。消費税のグループは以下のように大きく3つに分けられます。

  • 課税事業者(原則)
    消費税の納税義務がある事業者で簡易課税制度を選択していない人が該当します。以下「原則グループ」と呼びます。
  • 課税事業者(簡易)
    消費税の納税義務がある事業者で簡易課税制度の適用を受けている人が該当します。以下「簡易グループ」と呼びます。
  • 免税事業者
    消費税の納税義務がない事業者のことです。以下「免税グループ」と呼びます。

 まずは、ご自身がどこのグループに該当するのか確認して下さい。わからなければ顧問税理士に確認をしてみて下さい。

消費税増税の理論的な影響

 さて、ここからが本題です。消費税が10%と増税になった場合でも会社を強くするための対応方法です。

 まず消費税は、顧客から預かった消費税から、自分が支払った消費税を引いた金額を納税します。つまり売上にかかる消費税をそのまま納税をするのではありません。従って理論的には、消費税が増税されても事業者には影響がありません。どれだけ消費税が増税されても、税抜金額には影響がないからです。理論的には、増税された分は顧客に請求をし、仕入先からも増税後の金額で請求がきます。

 具体例を使って説明してみます。

 税抜きの売上が100、税抜きの仕入が50とします。消費税8%の時で計算をしてみます。

 売上に対して顧客から預かる消費税は100×8%=8となります。仕入先に支払った消費税は、50×8%=4です。8-4=4が消費税の納税額です。そして会社の税抜きの利益は100-50=50です。

 次に消費税10%の時で計算をします。

 売上に対して顧客から預かる消費税は100×10%=10となります。仕入先に支払った消費税は、50×10%=5です。10-5=5が消費税の納税額です。

 8%の時には納税額が4でしたが、10%になって、5に増えました。そして会社の税抜きの利益は100-50=50で8%の時と変わりはありません。

 税抜きの利益金額は、消費税が増税後でも増税前でも同じ50で変わりません。消費税の納税額だけが、4から5に増えました。税抜き売上に上乗せで預かった消費税と税抜き仕入に上乗せして支払った消費税が共に増えたため、納税額が増えたのです。つまり理論的には、事業者は消費税増税による損益の影響を受けないのです。

 ただし、影響を受けないのは原則グループの人だけに限定されます。簡易グループや免税グループは影響があります。それは後で説明します。

消費税増税の影響

 そうは言っても、消費税の増税で税込の値段が上がったら、消費者の財布の紐は固くなり、売上が上がりにくくなります。「理論的には」と言ったのはそのような理由からです。筆者ももちろん消費税増税が景気に悪影響を及ぼすことは承知しております。

 原則グループは理論的には消費税増税による損益への影響はありません。ところが簡易グループと免税グループは影響があります。

 まず、簡易グループについてです。簡易課税は、売上は顧客から預かった消費税ですが、仕入の消費税額を売上の業種区分によるみなし仕入率を使って計算します。簡易課税は任意選択ですから、通常はみなし仕入率による仕入に対する消費税額が、実際の仕入に対する消費税額より多くなっているはずです。そうでなければ、簡易課税を選択せず、原則課税を選択しているからです。

 そして簡易課税を選択することで、原則課税を適用していれば本来納付すべき消費税額だった金額と簡易課税で計算した金額との差額がいわゆる益税というもので、事業者の利益になります。これが8%の時代より10%の時代の方が多くなります。簡易グループに属している場合には、消費税増税により、事業者の益税が増えて得になるのです。

 同じことが免税グループにも言えます。免税グループは本来納付すべき消費税の納税を免除されている事業者ですので、消費税が増税されても、増えた本来納付すべき税額を事業者の収入とすることができるのです。

 理論的には、原則グループは消費税増税の影響はなく、簡易グループと免税グループは増税により得をすることになります。

事業者は駆け込み購入をする必要があるのか?

 消費税の増税が近づくと、駆け込み需要が発生をします。高額な商品ほど増税の影響が大きいため、車や住宅などを増税前に購入する方もいます。事業者も同じように高額な機械の購入や設備投資を増税前に行った方がいいのでしょうか?消費税の仕組みを理解しているかいないかのここが別れ道です。

 原則グループに属している場合には、理論的には駆け込みで購入する意味はありません。税抜の仕入額で考えればいいのです。高額な機械の購入は、支払時に支払った消費税額を売上に対する消費税額から引くことができるので、理論的には影響はないのです。8%の時に買うより、10%の時に買ったほうが、消費税を多く引くことが可能です。

 原則グループで消費税の納税額を減らす方法は、8%の時に売上を計上して10%の時に商品を仕入れることです。売上時に預かった消費税は8%で、そこから引くことができる仕入の時の消費税は10%なので、消費税を納税する金額を減らすことは可能です。実際に実施するのは難しいと思いますが、この場合でも税抜きの損益には影響を及ぼしません。

 原則グループは消費税が増税されても駆け込みで購入をする意味はありません。ところが、簡易グループと免税グループは影響があります。

 まず、簡易グループについてです。簡易課税はみなし仕入率を使うことから、みなし仕入率の消費税額と本来の仕入に対する消費税額の差が大きいほど、益税の金額が増えます。つまり、8%の時に購入しておいたほうが仕入に対する消費税額が少ないので益税が増えて得になります。

駆け込み購入の必要性

 ただし、注意点が1つあります。駆け込みでの購入金額が大きい場合には、みなし仕入率の消費税額より本来の仕入に対する消費税額のほうが多くなってしまう場合があります。この場合には、簡易課税を選択していると損をしてしまいます。原則グループに戻すことが可能な場合には、原則グループになってから購入をした方がいいでしょう。みなさんの会社が適用できるかどうか、詳しくは顧問税理士にご確認下さい。

 同じことが免税グループにも言えます。免税グループは本来納付すべき消費税額の納税を免除されている事業者ですので、仕入は8%の時に行なっておいたほうが益税の金額が増えます。

消費税貯金が大切

 消費税増税の影響にどのように対応をしたらいいのか、グループごとに説明しました。消費税は預り金ですので、原則グループの事業者にとっては、増税による影響は理論的にはありません。ただし、同じ売上金額でも納税する金額が8%の時に比べて、10%の時は増えます。

 事業者は消費税の負担はしませんが、納税をします。そのため、消費税納税のための資金繰りには細心の注意を払うようにして下さい。消費税貯金はとても大事です。簡易グループは、益税が増えることが予想されますが、原則グループと同じように納税額は増えますので、消費税貯金を忘れないで下さい。そして、免税グループに属している人は、増税により得をするグループです。増えた益税は事業の発展のために有効的に使用しましょう。

最終更新日:2018年3月31日

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