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所得税の青色申告制度

テーマ:税務

基礎編

2010年3月15日

 個人で仕事を行っている人は、税金を納めるにあたり「白色申告」と「青色申告」を選択することができます。この2つの申告制度の大きな違いは、事業に係る金銭の入出金を記録する義務があるかどうかという点です。白色申告者にはこの記録の義務は原則としてありません(所得などに応じて一定の帳簿が必要になる場合があります)が青色申告者には記録を行う義務があります。
 それではなぜ多くの個人事業主は青色申告を選択するのでしょうか?それは、青色申告者には記帳義務を上回る大きな税制上のメリットがあるからです。
 なお、青色申告を行うことができるのは、 不動産所得、事業所得、山林所得のある人だけです。


1.青色申告を始めるためには

 複式簿記や簡易簿記など一定水準の記帳を行い、その記帳に基づいて正しい申告を行う人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられるのが「青色申告制度」です。この制度には様々な特典が設けられていますが、勝手に青色申告を行うことはできません。まずは所轄の税務署に対して届出が必要です。


青色申告の申請手続

 新たに青色申告の申請をする人は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出することが必要となります。なお、現金式簡易簿記を選択する場合には、「現金主義の所得計算による旨の届出書」をその年の3月15日までに納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
 なお、その年の1月16日以後に新たに開業した人は、開業の日から2か月以内に申請すればよいことになっています。


この届出の提出に1日でも遅れると、1年間待たなければならなくなりますので、提出期限には十分に注意してください。


2.青色申告の取り消しについて

 青色申告において申告期限は厳守です。この期日に1日でも遅れた場合、いくら複式簿記によって記帳されていても65万円の青色申告特別控除ではなく10万円の控除になってしまいます。また、きちんとした帳簿をつけずに申告した場合や、虚偽の記載を行っていたことが税務調査などで発覚した場合には、青色申告の資格を取り消されることにもなります。
 また、下記のいずれかひとつに該当する事実があるときは、その事実のあった年にさかのぼって青色申告の承認が取り消されますので気を付けなければなりません。さらに、取り消しがあると、その取り消しをされた年分以後に提出された申告は、青色申告とは認められず、各種特典は適用されないことになりますので、多額の税負担が生じる場合があります。


  1. 帳簿書類の備付け、記録又は保存が法令で定めるところに従って行われていない場合
  2. 帳簿書類について税務署長が行った必要な指示に従っていない場合
  3. 帳簿書類に取引の全部または一部を隠蔽しまたは仮装して記載、記録し、その他その記載または記録した事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある場合
  4. 電子取引の取引情報に係る磁気的記録またはその磁気的記録を出力した書面等について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律に定める要件に適合した保存が行われていない場合

*青色申告を続けるための記帳ができない場合には、税務署に「所得税の青色申告の取りやめ届出書」をその翌年の3月15日までに提出することによって、白色申告に戻ることができます。


3.青色申告の税制上のメリット

 青色申告による最も代表的なメリットは「青色申告特別控除」です。これは、青色申告を行うことによって65万円(青色申告の内容により10万円の場合もあります)を所得から無条件で差し引くことができるというものです。
 この他には、赤字になった場合にその赤字金額を翌年の黒字と相殺することができる「純損失の繰越控除」や、家族が事業に専従した場合にその給与を経費にできる「青色事業専従者給与」などがあるお得な制度となっています。
 下記に青色申告の主なメリットについて説明していきます。


(1)65万円または10万円の青色申告特別控除

 青色申告特別控除に65万円と10万円の2種類の控除があるのは、帳簿の記帳方法に違いがあるためです。簡単に説明すると、取引上の金銭の動きを複式簿記によって詳細に記帳を行っている場合には65万円の控除を受けることができ、家計簿程度の簡単な帳簿(簡易簿記・現金式簡易簿記)の場合には10万円の控除を受けることができます。
 以下に65万円控除の要件と10万円控除の要件について記載します。


 65万円の控除が受けられるための要件は、次のいずれにも該当する必要があります。


  1. 事業的規模で営んでいる不動産賃貸業の不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
  2. これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
  3. の記帳に基づいて作成した貸借対照表を損益計算書とともに確定申告書に添付し、その適用を受ける金額を記載して、確定申告期限内に提出すること。

ただし、下記の注意点には十分に注意しましょう。


    現金主義によることを選択している人は、65万円の青色申告特別控除を受けることはできません。 不動産所得の金額と事業所得の金額の合計額が65万円より少ない場合には、その合計額が限度になります。ただし、この合計額とは損益通算前の黒字の所得金額の合計額をいいますので、いずれかの所得に損失が生じている場合には、その損失をないものとして合計額を計算します。 不動産所得の金額、事業所得の金額の順に控除します。

 65万円控除の用件に該当しない青色申告者が10万円の控除を受けることになります。ただし、以下の点に注意してください。


    不動産所得の金額、事業所得の金額または山林所得の金額の合計額が10万円より少ない場合には、その金額が限度になります。ただし、この合計額とは損益通算前の黒字の所得金額の合計額です。 不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額の順に控除します。

(2)純損失の繰越しと繰戻し

 開業してすぐに順調な儲けを生むことは難しく、数年間赤字が続いてしまうことも珍しくありません。こうした状況にあっても所得税は単年度で税金が掛かってきますので、赤字が生じてしまっても翌年に繰り越せないのが原則です。しかし、青色申告者の場合には、事業所得などが赤字になり、純損失が生じてしまった場合に、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から差し引くことができる、「純損失の繰越控除」というありがたい制度があります。
 また、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰越しに代えて、損失額を繰り戻して前年の所得金額から差し引き、前年分の所得税の還付を受けることもできます。
 ただし、損失が生じた年分の確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出していなければこの規定は適用できませんので十分気をつける必要があります。


(3)貸倒引当金

 掛け売りでは、商品などを売ってからお金が入金されるまでの時間差が生じます。その際に相手方の資金繰りの悪化や倒産などによって資金を回収できない場合があります。こうしたリスクを回避するために、帳簿上の貸し倒れを見込んで一定額を費用計上することを「貸倒引当金」といいます。白色申告者は、この貸倒引当金を使うためには、取引先に支払い能力がないことが明らかで、ほぼ貸し倒れることが間違いないという場合のみに限られていますが、青色申告者は売掛残高の5.5%(金融業の場合は 3.3%)を必要経費として計上できることになっています(一括評価)。
 また、取引先が会社更生法または金融機関等の更正手続の特例等に関する法律の規定による更正計画認可の決定や、債務超過により回収が難しくなった場合などの一定の要件(PDFファイル)に該当する場合には、その損失の見込額として債権の100分の50に相当する金額を貸倒引当金として必要経費に計上できることになっています(個別評価)。


(4)青色専従者給与

 家族と一緒に事業やお店を行っている場合、原則として生計を一にする家族や親族に対する給与は必要経費に認められません。しかしながら、青色申告では、「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署に提出することによって、家族に支払った給与であっても全額経費として計上することが可能になります。この届け出は、その家族が働き始めた日から2か月以内または特典を受けようとする年の3月15日までに提出する必要があります。
 なお、青色事業専従者給与の詳細については、「所得税の青色専従者給与と専従者控除」を参照してください。


 最後に青色申告の主な特典を下表にまとめておきます。


図表1 青色申告の主な特典
根拠法 特典項目 青色申告の場合 白色申告の場合
所得税法 専従者給与 青色専従者給与に関する届出書において記載した給与の範囲内で全額必要経費に算入することが可能です。 専従者1人当たり最高50万円(配偶者は86万円)を限度として控除が受けられます。
現金主義 前々年度分の不動産所得の金額及び事業所得の金額の合計額(注1)が300万円以下の場合は現金主義によって所得計算が可能です。
純損失の繰越控除 翌年以降3年間繰越控除ができます。 変動所得又は被災事業用資産の損失に限って繰越控除ができます。
純損失の繰戻還付 前年分の所得に対する税金から還付が受けられます。
引当金の計上 貸倒引当金、退職給与引当金等の一定の引当額を必要経費に算入できます。 貸倒引当金に限り一定の引当金額を必要経費に算入できます。
在庫商品等の評価損の計上 棚卸資産の評価については低価法が認められます。
更正の制限 帳簿調査に基づかない更正を受けることがありません。 帳簿調査に基づかない更正を受けることがあります。
推計課税の禁止 税務調査時に税務署側が一方的に追徴税額を計算する推計課税による更正・決定を受けることはありません。 推計により更正・決定を受けることがあります。
租税特別措置法 青色申告特別控除 所得を計算する際最高65万円を差し引くことができます。
減価償却費 特定設備等の特別償却、中小企業者が機械等を取得した場合等の特別償却費などや中小企業の少額減価償却資産の取得価額を必要経費に算入できます。
準備金 金属鉱業等鉱害防止準備金などの準備金を必要経費に算入することができます。
所得税額の税額控除 試験研究を行った場合や中小企業者が機械等を取得した場合などには、所得税額の特別控除が適用されます。
国税通則法 不服の申立て 更正があった場合に異議申立てか直接審査請求かを任意に選択することができます。 直接審査請求はできません。

(注1)この場合、専従者給与の規定を適用しないで計算した場合の合計額で判定しています。


解説者

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