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損益分岐点の有効活用(2)

テーマ:会計

実務編

2014年1月20日

 前回に引き続いて損益分岐点売上の計算式を利用し、会社でよくある経営上の選択が会社の業績にどのような影響を及ぼすかについて解説します。「損益分岐点の有効活用」のコラムはこの2回目で最終です。


損益分岐点売上の求め方

 前回も触れましたがもう一度復習です。損益分岐点売上は次のような式で計算します。


 損益分岐点売上=固定費÷(1-変動費率)


 製造業は固定費と変動費を細かく分けたほうがいいですが、他の業種の場合には「変動費=売上原価」と考えても大きな影響はありません。本コラムでも「変動費率=原価率」として説明します。


 上の式をもう少しわかりやすくすると、「1-変動費率」は「1-売上原価」なので粗利益率とイコールになります。それを式に入れると次のような計算式になります。



損益分岐点売上を応用する

 それでは損益分岐点売上を利用し、以下に説明する会社によくある選択が、会社の業績にどのような影響を及ぼすのかを解説します。その前に対象となる会社の状況について紹介します。


売上高 8000万円 商品単価 100万円 売上数量 80個 売上原価 4000万円 仕入単価 50万円 粗利益率 50% 固定費 3000万円 営業利益 1000万円 営業利益率12.5% 損益分岐点売上 3000万÷50%=6000万


 以上のような会社を事例とします。


(1)売上数量を10%増加させる
 この会社が営業努力と商品力で売上数量を10%増加させました。原価も売上数量に比例して増えますが、固定費は一定とします。
 売上数量が10%増加したことによってこの会社の


  • 売上高は100万×88個(80個×10%)=8800万となります
  • 売上原価は50万×88個=4400万となります
  • 粗利益は8800万-売上原価4400万=4400万円となります
  • 営業利益は8800万-売上原価4400万-固定費3000万=1400万円となります

 営業利益率は15.9%ですので、売上数量が10%増加したことによって利益率が1.27倍になりました。
 損益分岐点売上は、3000万円÷(4400万÷8800万)=6000万となり変動はありませんでした。
 売上数量を10%増やすことで利益率はアップしますが、粗利益率や固定費に変動がないため損益分岐点売上は変わりませんでした。


(2)売上数量を10%減らす
 次に売上数量を10%減らします。営業努力の甲斐なく売上数量が10%減ってしまいました。原価も売上数量に比例して減少しましたが、固定費は一定とします。
 売上数量が10%減少したことによってこの会社の


  • 売上高は100万×72個(80個×90%)=7200万となります
  • 売上原価は50万×72個=3600万となります
  • 粗利益は7200万-売上原価3600万=3600万円となります
  • 営業利益は7200万-売上原価3600万-固定費3000万=600万円となります

 営業利益率は、8.3%ですので、売上数量の10%の減少によって利益率が33%ダウンしてしまいました。損益分岐点売上は、3000万円÷(3600万÷7200万)=6000万となり変動はありませんでした。
 売上数量が10%減ったことで利益率がダウンしますが、粗利益率や固定費に変動がないため、損益分岐点売上は変わりませんでした。


(3)固定費を10%減らす
 次に固定費を節約で10%減らします。固定費を削減することに社内で取り組み10%削減することに成功しました。固定費を削減しても売上は同じでした。
 この会社の


  • 売上は8000万で変わりありません。固定費が変動しても売上には影響しません
  • 売上原価も変わらず4000万です
  • 粗利益は8000万-売上原価4000万=4000万で変わりありません
  • 営業利益は8000万-売上原価4000万-固定費(3000万×90%=2700万)=1300万となります

 営業利益率は16.25%ですので、固定費を10%削減したことによって利益率が1.3倍となりました。売上単価を10%上げた時の1.64倍には及びませんが、固定費の10%削減で利益率がかなり向上しています。
 損益分岐点売上は、2700万÷(4000万÷8000万)=5400万円となります。
 固定費の削減により利益率の大きな改善につながっています。また損益分岐点売上も10%下がりました。


(4)固定費を10%増やす
 次に固定費が家賃の高い事務所への移転などの理由により10%増えてしまった場合です。固定費が増えましたが売上は同じでした。
 この会社の


  • 売上は8000万で変わりありません。固定費が変動しても売上には影響しません
  • 売上原価も変わらず4000万です
  • 粗利益は8000万-売上原価4000万=4000万で変わりありません
  • 営業利益は8000万-売上原価4000万-(固定費3000万×110%=3300万)=700万となります

 営業利益率は、8.75%ですので固定費が10%増加してしまったことによって利益率が30%ダウンしてしまいました。 損益分岐点売上は、3300万÷(4000万÷8000万)=6600万円となりました。
 固定費が10%増加したことで利益率が大幅にダウンとなり、黒字化するための損益分岐点売上高も1.1倍と若干高くなってしまいました。


 売上数量を10%増やした場合と減らした場合、固定費を10%削減した場合と増加した場合に会社の利益率と損益分岐点売上がどのように変化をするのか考察してみました。
 同じ10%という比率のアップダウンですが、営業利益率や損益分岐点売上で比較してみた場合に大きな違いがあることがわかっていただけたと思います。利益率の改善には10%の固定費削減が一番効果的でした。損益分岐点売上の改善も、固定費削減が効果的で、売上数量の増減は損益分岐点売上の改善には影響ありませんでした。



前回の考察と合わせて比較をしてみると、利益率を改善するには売上単価を10%値上げすることが最も効果が高いことになりました。
 損益分岐点売上を改善させるのに最も効果的なのは、固定費を10%削減した場合です。一方、営業利益率が最も悪化したのは、売上単価を10%値下げする場合です。損益分岐点売上を最も悪化させるのも売上単価を10%値下げする場合となりました。


 売値の値上げと値下げは会社の経営に大きな影響を及ぼします。消費税が3%増える時期が今春に到来します。売値に増税分の3%を転嫁できないと3%の値下げを行ったことと同じ効果になってしまいます。消費税8%時代は1年半で終わり、消費税10%時代が間なくやってきます。厳しい経営状況が続いていると思いますが、消費税については価格に転嫁することが賢明といえます。



 たかが10%ですが、何をするのかによって会社の損益に及ぼす影響が異なってきます。損益分岐点売上の計算式を使って、それぞれの対策を選択した場合の損益分岐点売上高を比較することで、選択の参考とすることが可能となります。


 なお、今回は計算するにあたって、粗利50%で固定費が3000万円という前提で行いました。前提条件が異なると試算結果も異なりますので、必ず自社の数値を使って検証し、対策を選択するようにして下さい。


佐藤税理士事務所/佐藤昭一>

解説者

佐藤税理士事務所/佐藤昭一       公式ウェブサイト:http://www.nicechoice.jp/

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