本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  こんなときどうする 中小企業の税金と会計

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

損益分岐点の有効活用(1)

テーマ:会計

実務編

2014年1月10日

 2013年7月23日付けコラム「どれくらい売れば利益がでるのか?」で損益分岐点売上を紹介しました。
 損益分岐点売上とは、最低でもこれだけの売上を計上できれば会社は利益を計上できるという売上金額のことをいいます。逆にいうと、損益分岐点売上を超えない限り会社は赤字になります。つまり、会社を黒字化したければ最低でも損益分岐点売上はクリアしなければならないのです。いわば会社の最低目標と思ってもいいでしょう。


 そこで今回のコラムでは、損益分岐点売上の計算式を利用して、会社でよくある経営上の選択が会社の業績にどのような影響を及ぼすかについて解説します。


損益分岐点売上の求め方

 まずは復習です。損益分岐点売上は次のような式で計算します。


 損益分岐点売上=固定費÷(1-変動費率)


 製造業は固定費と変動費を細かく分けたほうがいいですが、他の業種の場合には「変動費=売上原価」と考えても大きな影響はありません。本コラムでも「変動費率=原価率」として説明します。


 上の式をもう少しわかりやすくすると、「1-変動費率」は「1-売上原価」なので粗利益率とイコールになります。それを式に入れると次のような計算式になります。


 損益分岐点売上=固定費÷粗利益率



損益分岐点売上を応用する

 それでは損益分岐点売上を利用し、以下に説明をする会社によくある選択が、会社の業績にどのような影響を及ぼすのかを解説します。その前に対象となる会社の状況について紹介します。


 売上高 8000万円
 商品単価 100万円
 売上数量 80個
 売上原価 4000万円
 仕入単価 50万円
 粗利益率 50%
 固定費 3000万円
 営業利益 1000万円
 営業利益率12.5%


 損益分岐点売上 3000万÷50%=6000万

 以上のような会社を事例とします。


(1)10%値上げする
 この会社が商品単価を10%値上げします。営業努力と商品力で売上数量は変わらず、原価率も一定とします。
 10%の値上げによってこの会社の


  • 売上高は100万×110%(10%値上げ)×80個=8800万となります
  • 粗利益は8800万-売上原価4000万=4800万円となります
  • 営業利益は8800万-売上原価4000万-固定費3000万=1800万円となります

 営業利益率は20.5%ですので、10%の値上げによって利益率が1.64倍にもなっています。損益分岐点売上は、3000万円÷(4800万÷8800万)=5500万となりました。
 値上げをして数量を維持することはとても大変なことですが、10%の値上げが実現できると利益には大きな影響を及ぼすことになります。また、損益分岐点売上も約1割下がりました。


(2)10%値下げする
 次に商品単価を10%値下げします。値下げしたにもかかわらず、売上数量は変わらず、原価率も一定とします。
 10%の値下げによってこの会社の


  • 売上高は100万×90%(10%値下げ)×80個=7200万となります
  • 粗利益は7200万-売上原価4000万=3200万円となります
  • 営業利益は7200万-売上原価4000万-固定費3000万=200万円となります

 営業利益率は、2.8%ですので、10%の値下げによって利益率が78%ダウンと大幅ダウンになってしまいました。損益分岐点売上は、3000万円÷(3200万÷7200万)=6750万となりました。
 値下げをしても思うように数量が変わらない場合、利益率が大幅ダウンとなり、黒字化するための損益分岐点売上も1.1倍と高くなってしまいました。


(3)仕入れコストを10%値下げする。
 次に仕入単価を交渉により10%値下げします。仕入れコストを下げることには成功しましたが、売上数量、商品単価は変わりありませんでした。
 この会社の


  • 売上原価は50万×90%(10%値下げ)×80個=3600万となります
  • 粗利益は8000万-売上原価3600万=4400万となります
  • 営業利益は8000万-売上原価3600万-固定費3000万=1400万となります

営業利益率は17.5%ですので、仕入単価の10%値下げによって利益率が1.4倍となりました。売上単価を10%上げた時の1.64倍には及びませんが、10%の値下げで利益率がかなり向上しています。損益分岐点売上は、3000万÷(4400万÷8000万)=5455万円となります。
 仕入単価の交渉により利益率の大きな改善につながっています。また損益分岐点売上も10%下がりました。


(4)仕入れコストを10%値上げする
 次に仕入単価が原材料の高騰などの理由により10%値上がりしてしまった場合です。仕入コストが上がりましたが、商品単価は変更せず、売上数量も一定とします。


この会社の、


  • 売上原価は50万×110%(10%値上げ)×80個=4400万となります
  • 粗利益は8000万-売上原価4400万=3600万となります
  • 営業利益は8000万-売上原価4400万-固定費3000万=600万となります

 営業利益率は7.5%ですので、仕入単価が10%値上がりしてしまったことによって利益率が40%ダウンしてしまいました。損益分岐点売上は、3000万÷(3600万÷8000万)=6666万円となります。
 仕入単価が値上がりしたことで利益率が大幅にダウンとなり、黒字化するための損益分岐点売上高も1.1倍と若干高くなってしまいました。


 売上単価を10%上げた場合と下げた場合、仕入単価を10%上げた場合と下げた場合に会社の利益率と損益分岐点売上がどのように変化をするのか考察してみました。
 同じ10%という比率のアップダウンですが、営業利益率や損益分岐点売上で比較してみた場合に大きな違いのあることがわかっていただけたと思います。
 利益率の改善には、10%の売上単価値上げが一番効果的でした。損益分岐点売上の改善には、売上単価値上げと仕入単価値下げが効果的で、両者の違いはそれ程大きくありませんでした。


 一方で売上単価の10%値下げは、損益へのインパクトが強烈でした。値下げをすることで売上数量が増えることもあるので、実際にはここまで悪化はしないと思いますが、単に値下げをして数量が増えない場合には、10%の値下げでも利益率はかなり悪化してしまいます。
 仕入単価の10%値上げは、売上単価の10%値下げ程には利益率は悪化しませんが、かなりダウンします。損益分岐点売上については、売上単価の10%値下げにより、損益分岐点売上が大きくなり、黒字化のためのハードルを自ら高くしてしまっています。仕入単価の値上げについても、同じぐらい黒字化のためのハードルが高くなっています。


 たかが10%ですが、何を値上げまたは値下げするかによって会社の損益に及ぼす影響が異なってきます。損益分岐点売上の計算式を使って、それぞれの対策を選択した場合の損益分岐点売上高を比較することで、選択する際の参考とすることが可能となります。



 なお、今回は計算にあたって、「粗利50%で固定費が3000万円」という前提でスタートしています。しかし、前提条件が異なると試算結果も異なりますので、必ず自社の数値を使って検証し、対策を選択するようにして下さい。
 今回は4つのパターンで考察をしましたが、次回は別の4パターンで試算をした結果を考察してみます。


佐藤税理士事務所/佐藤昭一>

解説者

佐藤税理士事務所/佐藤昭一       公式ウェブサイト:http://www.nicechoice.jp/

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ