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「1人あたり付加価値額」の高い会社

テーマ:会計

実務編

2013年11月25日

 本連載では以前、日本でこれから事業を成長させていくには、少数精鋭で高効率な経営を目指すべきと述べました。そして、そうなっているか否かを判断する財務指標として使えるのが「1人あたり付加価値額」です。高効率か否かは1人あたりの付加価値額で判断することができます。


 付加価値額について定義はいろいろありますが、ここでは単純に「粗利=付加価値額」と考え、「付加価値額÷人数=1人あたり付加価値額」を求めることができます。


 今回はこの数式を使って実際の上場企業の1人あたり付加価値額を計算し、分析してみます。どのような企業をモデルとすればよいのかを感じていただきます。なお、取り上げた企業と筆者の間にはなんら取引関係はなく、当然ながら取り上げた企業の投資を推奨しているわけではないことをあらかじめ申し上げておきます。なお、本記事の内容がわかりやすいよう、両極端な企業を事例として取り上げています。


 まず、最初の企業はAホールディングスです。同ホールディングスは、大手鉄鋼メーカーやエンジニアリング会社、大手造船メーカーなどを傘下に持つ持株会社です。 まずは、Aホールディングス公表の平成25年3月期の連結財務諸表から、主要な経営数字を確認してみたいと思います。


 最初に売上高です。25年3月期は売上高が3兆1800億円となっています。日本を代表する会社ですので、物凄い売上金額です。日本企業の売上高ランキングでは30位ぐらいに位置します。ちなみに、売上高1位はトヨタの22兆円です。Aホールディングスのライバル企業の売上高は4兆3000億円です。


 続いて数字を確認していきます。売上原価は2兆8800億円となっています。売上高から売上原価を引いた金額が売上総利益(粗利)です。粗利は3000億円となっています。粗利益率は約10%といったところです。


 粗利益から販売管理費を引いたのが営業利益です。営業利益は400億円です。売上高営業利益率は約1.3%となっております。


 経常利益は500億円となっていますので、金融収益が100億ぐらいあるようです。損益計算書から確認をした情報は以上です。


 次に貸借対照表を確認します。今回は1人あたり付加価値額を比較するのが主旨ですので、2つの項目の確認に留めておきます。総資産は4兆1000億円とこちらもとてつもなく大きくなっています。日本企業の総資産ランキングでは30位前後となっています。ちなみに総資産1位はトヨタで35兆円で、ライバル企業の総資産は7兆円です。


 純資産は1兆5000億円となっています。総資産経常利益率は1.3%となっていますので、投資に対するリターンとしてはかなり低い数字になっています。日本企業の総資産経常利益率ランキングで上位100位内に入っていませんでした。


 従業員数は5万7000人とのことなので、1人あたり付加価値額を計算すると、粗利÷従業員数=534万円となりました。Aホールディングスの従業員1人あたりが稼ぎ出す粗利は500万ぐらいとなっています。従業員数の中にはパート・アルバイトなどフルタイムではない人も含まれているかもしれませんが、上場企業としては余り高くない数字だと思います。


Aホールディングス
H25年3月期(百万円)
科目 金額
売上高 3,189,196
売上原価 2,884,161
売上総利益 305,034
営業利益 39,873
経常利益 52,214
総資産 4,107,519
純資産 1,596,797

総資産経常利益率                1.3%
売上高営業利益率                1.3%

従業員数3月末                57,044名
1人あたり付加価値額           5.34百万円


 次に見ていくのは大手ポータルサイトの運営企業B社です。同社は日本を代表するIT関連企業で、筆者が経営分析を勉強してきた時の常識をことごとく打ち破っていった驚異的な企業です。その企業の平成25年3月期の連結財務諸表から主要な経営数字を確認してみたいと思います。


 まずは売上高です。売上高は3400億円です。Aホールディングスの10分の1の規模となっています。次に売上原価は300億円です。売上高から売上原価を引いた金額が売上総利益(粗利)です。粗利は3000億円となっています。粗利益率は約90%です。B社の取り扱う商品が物ではなく情報であることから、粗利益率はとても高くなっています。


 粗利益から販売管理費を引いたのが営業利益です。営業利益は1800億円です。売上高営業利益率は約54%となっています。売上の半分以上が利益であり、これは驚異的な数字だと思います。

 経常利益は1800億円となっていますので、金融収益は余りないようです。損益計算書から確認をした情報は以上です。


 次に貸借対照表を確認します。総資産は7400億円と売上高に比べると大きくなっています。総資産の内訳を確認すると現預金が4000億円とキャッシュリッチな会社となっています。


 純資産は、5500億円です。総資産経常利益率は28.9%となっていますので、投資に対するリターンとしてはかなり高い数字になっています。日本企業の総資産経常利益率ランキングで16位にランクインしています。不要な現預金を株主に分配すれば、もっと総資産経常利益率は高くなると思いますが、それよりもM&Aや業務提携による投資を優先的に考えているのだと思われます。


 ちなみに、総資産経常利益率1位の企業は71%!と驚異的な数字です。その企業の数字は2012年6月期の決算数字のため、2013年6月期の決算数字でみると33%となっています。これでも十分高い数字ですね。


 従業員数は4500人とのことなので、1人あたり付加価値額を計算すると、粗利÷従業員数=6792万円となりました。同社の従業員1人あたりが稼ぎ出す粗利は6700万ぐらいとなっています。従業員数の中にはパート・アルバイトなどフルタイムではない人も含まれているかもしれませんが、かなり高い数字です。


B株式会社
H25年3月期(百万円)
科目 金額
売上高 342,989
売上原価 36,393
売上総利益 306,596
営業利益 186,351
経常利益 188,645
総資産
 現預金
743,311
414,086
純資産 551,264

総資産経常利益率                28.9%
売上高営業利益率                54.3%

従業員数6月末                  4,514名
1人あたり付加価値額           67.92百万円


 2つの企業の財務数字を確認しながら、1人あたり付加価値額を計算してみました。Aホールディングスの534万円とB社の6792万円を単純に比較すると12倍の差があります。


 冒頭では、日本でこれから事業を成長させていく場合には少数精鋭で高効率な経営を目指すべきであると述べました。これから事業を成長させていきたいと思っている経営者の方は、B社のような高効率な経営を目指すべきと思います。それにしてもB社は上場企業ながら、驚異的な1人あたり付加価値額を稼ぎ続けているところが凄い企業だと思います。


 最後に筆者が1つだけ追加で伝えたいことがあります。Aホールディングスの従業員数は5万7000人、一方でB社の従業員数は4500人です。新しい成長企業を生み出しても、その成長企業は、高度成長期のようには雇用を生み出さないのです。なぜなら、企業は高効率な経営を目指しているからです。雇用問題を解決するには、成長企業の数をもっと増やしていかなければならないと考えています。B社のような成長企業がいくつも出てくることで日本経済は今後発展していくと思います。

解説者

佐藤税理士事務所/佐藤昭一       公式ウェブサイト:http://www.nicechoice.jp/

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