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どれくらい売れば利益がでるのか?

テーマ:会計

実務編

2013年7月23日

 筆者は小学生の頃、テレビで聞いた次のフレーズがずっと理解できませんでした。


 「うちの商品は10万個売れたら利益が出る」


 税理士となった今では当たり前のように理解できますが、小学生の時にはこのことがよくわかりませんでした。原価に利益をのせて値段は決めているはずだから、1個でも売れれば利益が出るのでは?なんで10万個も売らないと利益がでないのだろう?と幼いながらもこの頃から商売に興味があったのでした。


損益分岐点売上とは

 さて、話を本題に戻します。どれぐらい売ったら利益がでるのか?経営者なら非常に気になると思います。会計ではこれを「損益分岐点売上」と呼んでいます。損益分岐点売上がわかれば、最低でもこれだけの売上を計上できれば利益がでるという売上金額がわかるのです。


 損益分岐点は次のような計算式で計算します。



 損益分岐点は「固定費÷(1-変動費率)」で計算をします。


 変動費率は「変動費÷売上高」で求めます。


 変動費と固定費を厳密に分けることは難しいので、中小企業では変動費は売上原価、固定費は販売管理費と考えても大きな影響はありません。また、分けることにこだわって損益分岐点が計算できないよりは、多少違っていてもざっくりと損益分岐点を知っておくことのほうが意味があります。


 変動費を売上原価と考えると、変動費率は「売上原価÷売上高」で計算をします。売上原価を売上高で割っているので変動費率とは原価率のことです。


 変動費率は原価率なので、「(1-変動費率)」は粗利益率になります。


損益分岐点を具体的に計算してみる

 例えば粗利益率100%のコンサルティング業・A社の場合で考えてみます。



 固定費が年間3000万円かかるとしたら、損益分岐点売上はどれぐらいになるでしょうか?


 固定費3000万÷粗利益率100%=損益分岐点売上3000万円


 これは簡単ですね。固定費(売上に関係なく発生する経費)が3000万円かかっているので、3000万円超の売上がないとこの会社には利益がでません。


 では、次に粗利益率40%の卸売業・B社の場合で考えてみます。


 固定費が同じ年3000万円かかるとします。その場合の損益分岐点売上はどれくらいになるでしょうか?


 固定費3000万円÷粗利益率40%=損益分岐点売上7500万円


 卸売業の会社の場合には、固定費が3000万円、粗利益率が40%のため、7500万円超の売上がないとこの会社には利益がでません。


 だいぶ計算に慣れてきましたでしょうか。


 それでは最後に粗利益率40%の卸売業・C社の場合で再度考えてみます。
 今度は固定費が0円とします。その場合の損益分岐点売上はいくらになるでしょうか?


 固定費0円÷粗利益率40%=損益分岐点売上0円


 固定費がゼロだと、1円でも売上があれば利益がでます。私が小学生の時に考えていたのがこの事例のようなケースです。固定費という存在を知らなかったので、冒頭に述べたような疑問を持ったのでした。固定費がなければ、1個売っただけでも会社に利益がでるのです。


 逆に考えると、固定費が多いと損益分岐点売上は高くなります。
 先程の粗利益率が40%の卸売業の固定費が3000万円ではなく5000万円だとすると(D社)、損益分岐点売上は1億2500万円となります。固定費が3000万円の時は損益分岐点売上は7500万円でしたが、固定費が2000万円増えたら損益分岐点売上は5000万円も増えてしまいました。


 よく固定費が膨らまないように注意しましょうと言われるのは、固定費が多くなると損益分岐点売上が上がってしまうからです。でも業種によっては固定費が多くかかる業種もあると思います。固定費=悪ではなく、必要以上の固定費がかからないように気をつけることが大切です。会社を長く経営していると固定費は膨らみやすくなります。


損益分岐点を応用してみよう

 会社の損益分岐点売上が分析できるようになると次のようなことへの応用が可能です。


1. 目標利益を達成するための売上がわかる
 会社で1年間にこれくらいの利益を計上したいという目標があるとします。損益分岐点売上の計算式を使うことで、目標利益を達成するためにはどれくらいの売上が必要なのかわかります。


2. 利益の予想額が計算できる
 会社の売上が損益分岐点を上回っている場合には、それが会社の余力になります。例えば、来期の会社の売上が今期より20%増えると利益がどれくらい増えるのか?ということが計算できるようになります。


3. 投資をすべきかどうか判断できる
 ある設備に投資することで売上が30%増えることが予想される時、いくらまでだったら投資をできるのかということが計算できます。投資の場合は失敗することもあるので、会社の余力がどれぐらいあるのか?(いくらまで失敗しても大丈夫なのか?)もわかります。


4. 経費をどれくらい削減すべきか判断できる
 会社の業績が悪化して赤字となってしまった場合には、固定費や変動費をどれくらい減らせば利益がでるのかを計算することができます。固定費については、削減した金額がそのまま利益に影響しますが、変動費については売上に連動しているため、変動費率を下げることで利益を増やすことができます。それぞれどれくらい削減をしたらいいのかを判断できるようになります。


損益分岐点売上を改善するには

 損益分岐点売上を計算することで、どれくらいの売上があれば会社が黒字になるのか知ることができます。黒字になるための売上は少ないほうが、利益がでやすい体質と言えると思います。それでは、損益分岐点売上を低くするためには、どうすればいいのでしょうか?


 再び損益分岐点売上の計算式をみて下さい。損益分岐点売上のキーポイントは固定費と粗利益率です。この2つの数字に着目することで損益分岐点売上を低くすることが可能です。


 まず固定費ですが、固定費はできるだけ削減をします。固定費が少なくなれば損益分岐点売上も低くすることが可能です。販売管理費の内訳をみて削減できる経費がないか検討してみて下さい。


 次に粗利益率です。粗利益率を向上させます。粗利益率が高くなれば損益分岐点売上を低くすることができます。粗利益率を高くするには、原価を削減するか売値を上げるかについて検討してみて下さい。


 粗利益率が高くて固定費が少ない会社の損益分岐点売上は低くなります。このような体質の会社は、余分な贅肉もなく筋肉質の会社と言えるでしょう。売上の変動が激しい会社の場合には、固定費が膨らまないように常に監視しておくといいと思います。


「2着目半額」の戦略

 2着目のスーツ半額とかスーツと同時にシャツを購入したら半額というようなセールスをしている会社があります。これは損益分岐点売上の考え方を応用した販売戦略です。
 洋服店では、同じ人に同時に2着スーツを販売するのも1着販売するのもかかる営業コストはあまり変わりません。この営業コストは固定費です。そして販売するスーツの原価が変動費です。最初の1着目のスーツの販売で1着目のスーツの原価と固定費である営業コストを回収しています。
 2着目を販売する時は、営業コストである固定費は1着目の販売で回収しているのでゼロになります。そのため2着目の販売価格を半額に下げても、半額の値段でスーツの原価を回収できれば2着目からも利益をだすことができるのです。固定費と変動費の関係をうまく利用して、お客様にもわかりやすく伝えることができるよく考えられた販売戦略です。


 このように損益分岐点売上を知ることで会社の販売戦略にも応用することができます。


佐藤税理士事務所/佐藤昭一>

解説者

佐藤税理士事務所/佐藤昭一       公式ウェブサイト:http://www.nicechoice.jp/

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