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強い会社が注目すべきたった1つの財務指標

テーマ:会計

実務編

2013年7月19日

 普段数値を扱っている会計事務所としては、財務分析指標についていろいろと語りたいところですが、今回は数ある財務分析指標の中からたった1つだけ紹介します。 財務分析は決算書が2期分あれば弾き出すことはできます。しかし、多くの中小企業の財務数値には、その会社ならではの特別な事情があり、特に営業利益や当期純利益は役員の報酬や会社が行う節税対策によってかなりの影響を受けるのでそのまま数値を鵜呑みにして財務分析をすると意味をなさないことがあります。


 筆者は、日本でこれから事業を成長させていく場合には、少数精鋭で高効率な経営を目指すべきであると考えています。少数精鋭で高効率となっているかどうかを判断するための財務指標として使えるのが「1人あたり付加価値額」です。高効率化かどうかは1人あたり付加価値額で判断することができます。


1人あたり付加価値額の計算方法は?

 付加価値額について定義がいろいろあるのですが、ここでは単純に粗利=付加価値額と考えます。


 次に人数です。役員、正社員、派遣社員などすべて含めます。アルバイト、パートなど短期勤務の人は正社員との時間比や給与比で換算をします。単純に社員を1、アルバイトパートを0.5としてもいいと思います。


 付加価値額÷人数=1人あたり付加価値額となります。



 例えば、粗利が5000万円で人数が10人の場合には、


 5000万円÷10人=500万


 1人あたりの付加価値額が500万円となります。


 まずは、1人あたり付加価値額について決算書を見ながら計算してみてください。


1人あたり付加価値額はどれぐらいを目指すべきか?

 それでは、1人あたり付加価値額はどれぐらいを目指したらいいのでしょうか?中小企業の1人あたり付加価値額の平均は大体800万円ぐらいです。大企業は1300万円ぐらいです。


 まずは、大企業なみの1人あたり1300万円が最初の目標となります。1300万円でも中小企業にとってはハードルが高いかもしれません。でも、1300万円ではまだ少数精鋭で高効率とは言えません。大企業を思い浮かべてみてください。大企業は社員の数も多いので少数精鋭ではありません。大企業の中からできる社員だけを抜き出した場合にはもっと付加価値額が高くなると思います。


 中小企業は少数精鋭部隊が理想なので、最終的には1人あたり付加価値額は1800万から2000万円ぐらいを目標にすべきと思います。労働分配率(付加価値の何割を人件費に回しているかという率)を5割とすると、1人あたり付加価値額が2000万円になると、1人あたりの人件費が1000万円となります。中小企業で社員1人に給与を1000万円支払っているとしたら強い会社だと思いませんか?



1人あたりの付加価値額をあげるには?

 それでは、1人あたりの付加価値額をあげるにはどうしたらよいのでしょうか?計算式をよくみると答えは単純です。付加価値額(粗利)の絶対額を増やすというのが1つの方向性です。そしてもう1つの方向性は人数を絞ることです。人数を絞るというのは、1人あたりの仕事量を増やすことを意味します。



 計算式から考えると答えは単純ですが、実際に付加価値額を増やしたり、1人あたりの仕事量を増やしたりすることは大変です。大変ですが、これからの中小企業が生き残っていくにはこれしかないと筆者は考えます。日々の商品力、営業力、業務オペレーションなどの改善を1人あたりの付加価値額をあげるためにはという視点になって考えていく必要があります。


1人あたりの付加価値額をあげるための実践例

 どのようにしたら付加価値額をあげることができるのか、実際に筆者が取り組んだ事例を紹介します。筆者の所属している業界は税理士業界です。税理士業界では、1つの顧問先について、担当者をつけて日々の取引の領収書や請求書の整理、帳簿への記帳から試算表の作成や決算書の作成、そして法人税申告書まで担当者1人が行うことが多いです。


 作成する書類の中で最も付加価値が高いのは決算書と法人税申告書です。この2つの書類をきっちり作成できるようになるためには、簿記の知識、会計の知識、法人税や消費税の知識が必要です。これらの知識を持っている人で、さらに実際に実務の経験をしたことがあるという人は希少ですので時給が高くなります。一方で、簿記の知識が少しあって、経理業務を数年行っていたという人の時給は低いです。


 そこで、これら2人のスキルと時給が異なる人を使って仕事を効率的に行う仕組みを考えます。今までスキルの高い人が担当していた仕事をすべて細かく細分化します。細分化した仕事について、難易度をA-Dでつけます。


 誰でもできる仕事(Aランク)、簿記3級程度の知識があればできる仕事(Bランク)、経理経験が1年以上必要な仕事(Cランク)、税金の知識や経験が3年以上必要な仕事(Dランク)というような感じです。



 ランク付けをした後で、再度工程を見直してランクダウンできる方法はないか検討しました。例えば簿記3級程度の知識が必要なBランクの仕事を誰でもできるAランクの仕事にすることはできないかというような感じです。その際に注意したのは100%完璧にできることを期待しないということです。100%完璧にできることは最終的なゴールですが、工程の中で1カ所高度な知識が必要なところがあったとしても、それは例外として扱い、全体の80%ぐらいが確実に行えるレベルであればいいとしました。


 また、判断が必要なところでも機械的に判断ができるような仕組みを導入することで、なるべくAランクBランクの仕事を増やしていきました。


 そして最後が重要ですが、Dランク以外のすべての仕事をスキルの低いスタッフに任せることを実践しました。経理が未経験なスタッフもいたのですが、Aランク、Bランクの仕事から順次教えていき、時間をかけて最終的にはDランクまでの仕事を行えるようにスキルの高いスタッフがトレーニングしていきました。


 最初は時間がかかりますが、月次決算書の作成や入力作業がスキルの高いスタッフの仕事ではなく、トレーニングが自分の仕事だと言い聞かせてスタッフの成長を我慢して待ちました。


 仕事を細かく分けることで少しずつスキルの高い人の単純作業の負荷が減り、結果として生産性の向上につながりました。生産性が向上することで1人あたりの付加価値額が増加します。


 スタッフの入れ替えがある際にはまた一からトレーニングが必要となりますが、マニュアルや研修資料が整備されてきているので最初に行っていた時よりもトレーニングにかける時間も少なくてすみます。


 筆者が行った方法がそのまま適用できる業種は意外と多いと思います。仕事を大きなくくりで考えるのではなく、1つひとつを細かな工程に分解をして、誰にでもできるような簡単な仕事にしてしまうという方法ができないか検討してみてください。


 付加価値額の絶対額を増やすことに比べれば、生産性を高めることのほうが取り組みやすいと思います。これからの強い会社は、1人あたりの付加価値額が高い会社であると思います。1人あたりの付加価値額の向上に取り組んでみてください。



佐藤税理士事務所 /佐藤昭一>

解説者

佐藤税理士事務所/佐藤昭一       公式ウェブサイト:http://www.nicechoice.jp/

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