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値下げで財務を悪化させないために

テーマ:会計

実務編

2013年7月19日

 アベノミクスで景気回復か?-と巷では話題になりますが、不動産と金融以外に顕著な景気回復現象が表れている実感はありません。むしろ、工場の海外移転が加速しているので製造業とその周辺の商売はまだまだ厳しい状況です。また、商品やサービスの売れ行きが芳しくないという会社も多いのではないかと思います。 厳しくなると出てくるのがとにかく値下げというアイデアです。社内で従業員や経営幹部を集めて経営会議をしても、値下げの提案は出てくるのではないでしょう。


値下げの影響を数字で考える

 値下げの提案があったからといってもすぐにそれに賛同しないことです。まずは、値下げをすると会社の財務にどのような影響を及ぼすのかを知ることが重要です。その上で、あえて値下げをするのであれば、それは会社の戦略ですので他者がとやかく言う問題ではないでしょう。


 それでは、値下げの影響を数字で考えてみます。簡単な卸売業の例で説明をします。まず、商品1個の売値が100とします。この商品の原価は60です。商品が1個売れると40の利益が出ます。粗利益率が40%の商品です。この商品の売上が芳しくないので、値下げをしたいという提案がありました。そこで売値を90に下げるおよび80に下げることを検討します。


  • 売値が90の時は、原価が60なので利益は30になります。粗利益率は33%です。
  • 売値が80の時は、原価が60なので利益は20になります。粗利益率は25%です。

 それぞれ売値を10%、20%値下げしたことで粗利益率は7%と15%の減少となっています。


 値下げする前にこの商品は年間100個売れていたとします。その場合は、売上は100×100個で10,000です。粗利益率が40%ですので利益は4,000です。


 さて、値下げをした場合に、値下げをする前と同じ利益を得るためには販売をどれぐらい増やさなければならないのでしょうか?値下げをする前の利益は4,000です。


 まず、10%値下げをした場合の粗利益率は33%なので、4,000を33%で割ると求められます。つまり12,000の売上がないと同じ利益が得られません。


 値下げする前の売上は10,000ですから、20%も売上を増やさないといけないのです。単価は90ですから、販売個数は133個です。値下げする前の販売個数は100個ですから、個数ベースでは33%も売上を増やす必要があるのです。


 次に20%値下げした場合の粗利益率は25%なので、同じように計算してみますと16,000の売上がないと値下げ前と同じ利益が得られません。60%も売上を増やさないといけないのです。単価は80ですから、販売しなければいけない個数は200個です。値下げをする前の販売個数が100個ですから、個数ベースでは100%も売上を増やす必要があるのです。


 単純に値下げをすると、10%値下げした場合は33%売上を増やす必要があり、20%値下げをした場合は100%売上を増やす必要があるのです。それだけ売上を増やす見込みがあるのであれば、値下げということを考えてもいいでしょう。販売数を増やす必要があるので、販売に手間のかかる商材の場合には、営業経費がさらにかかります。そのため実際にはもっと売上を増やさないといけない場合もあることを忘れてはいけません。単なる値下げというのは、会社の損益にかなりの悪いインパクトを与えるのです。


 値下げをすると損益にどのようなインパクトをもたらすのか、試算をした上で意思決定をするようにして下さい。


困ったときは逆説思考

 ニトリやユニクロのように低価格で品質のよいものを提供するとういう戦略に基づいて、値下げをするというのはわかります。しかし、中小企業では戦略がなく売れないのでとにかく値下げをしているのでは?と思えるものが多いです。


 売れないから、とりあえず値下げをしてみる。売上数は維持できたとしても、利幅は値下げで減っているので、利益は少なくなります。利益が少なくなれば、従業員への還元である給料も少なくなります。給料が少なくなると、従業員のモチベーションがダウンして、さらに売上が落ちていきます。戦略のない値下げは中小企業を苦しめるだけになります。


 それでは、売上が芳しくないときはどうしたらいいのでしょうか?困った時は逆説思考を使います。逆説思考とは、普段自分がよいと思っていることと反対のことを考えてみるのです。先程値下げをしたいという提案に対して、値下げした場合の損益への影響について説明をしました。逆説思考では、値下げをしたいという提案に対して、値下げをするのではなく、値上げをすることを考えてみては?と提案するのです。


 ただでさえ売上が芳しくないのに、値上げをしたらさらに売上が落ちるじゃないか!という意見がすぐに出てくるでしょう。しかし、そこで思考が止まらないようにしましょう。値上げをして販売をすることはできないか?と考えてみることは大切です。売れない=値下げという硬直した思考よりも、売れない時にあえて値上げをします。そうすると値上げをしても、売れる方法がないか考えます。


 商材が悪いなら、値上げをしても売れる商材はどんな商材なのか考えます。値上げをして売れないのは商品力や営業力が弱いからかもしれません。値上げをするという逆説的な考え方をすることで、売上が上がらない本質的な原因にたどり着くことができます。売上が芳しくないのは、値段の問題かもしれませんが、おそらくは営業力か商品力のどちらかが足りないのです。両方が足りない場合もありますが...。



 売上が芳しくない場合には、商品力を磨き上げることはできないだろうか?と考えましょう。同じ商材で飽きがきてしまったのかもしれません。ライバルに比べてサービスの質が足らないのかもしれません。商品は世に出したらそれで終わりではありません。どんどん改善をして、常に商品の価値>商品の値段としておくのです。そうすれば、値段を下げなければ売れないということはなくなると思います。


 また、同じように営業力を磨き上げることはできないだろうか?と考えましょう。今の値段では売れないから値下げではなく、今の値段で他に販売する方法はないのか?販売できる場所はないのか?人によって売上金額が異なる場合には、うまく売上を上げている人から営業手法を教えてもらうなど考えられることはなんでも行ってみましょう。


どうしても値下げをするには?

 時には、どうしても値下げをしなければならない場合もあるでしょう。その場合には、原価や販売管理費を減らして値下げしても同じように利益が出るようにしましょう。原価や販売管理費を減らすことで商品の価値を上げるというのはアリだと思います。単なる値下げとならないようにします。



 値上げをするにしても、値下げをするにしても、数字で考えることは需要です。価格に消費者は敏感ですから、値上げや値下げを繰り返すと消費者の信頼を失ってしまいます。値下げした金額に消費者が慣れてしまうと、値上げをすることが難しくなります。消費税増税という値段を強制的に変更しなければならない時期がもう間もなく近づいています。価格戦略についてもう一度考えてみるのもよい機会かもしれません。


佐藤税理士事務所/佐藤昭一>

解説者

佐藤税理士事務所/佐藤昭一       公式ウェブサイト:http://www.nicechoice.jp/

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