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自己株式の会計と税務-その2

テーマ:会計

基礎編

2010年4月 5日

1.自己株式の税務

 平成13年6月商法改正をきっかけに、会計上、自己株式の取得は資本の払戻しとしての性格をもつものとされ、自己株式の売却は新株の発行と同じ性格をもつものとされました。これに伴い、税制においても自己株式の取得・処分について資本等取引として課税所得に影響をおよぼさないものとされました。
 すなわち、発行会社において自己株式の取得は資本の払戻しと考え、自己株式の売却は新株発行に準じて資本等の額を増加させるものと考えているのです。 また、税務では、自己株式の取得の形態に応じて以下のように3つの処理に分けています。


  1. 相対取引
  2. 上場会社等の市場買付
  3. 上場会社等の公開買付

 それぞれの場合の取り扱いについて、以下を述べていきます。


(1)自己株式の相対取引
 相対取引とは、市場を通さず1対1で売買する取引をいい、未上場の会社の株式はこの方法による取引がほとんどです。


1)発行法人の税務
 税務上、自己株式の有償取得は資本の払戻しと考えています。その結果、その有償取得に際して株主に交付される金銭等は、元本の払戻しの部分と利益の配当部分からなるものとみなし、交付金銭等の金額が取得した自己株式に対応する資本金等の額を超える部分の金額はみなし配当とされ、発行法人では利益積立金を取り崩すこととなります。また、自己株式に対応する資本金等の額は、資本金等の額から減額することとなります。


2)売却した株主の税務
 法人株主、個人株主ともに自己株式の相対取引に応じた場合、これは資本等取引と考えます。つまり、その取得に際して交付された金銭等は、有価証券の譲渡対価の部分と利益の分配の部分からなるものとみなし、交付金銭等の金額が発行法人の自己株式に対応する資本金等の額を超える部分の金額はみなし配当となります。
 また、交付金銭等の金額からみなし配当相当額を除いた金額と、株主の帳簿価額との差額が譲渡損益となります。


【説例1】
 A社は普通株式100株を発行している。株主B社は、所有する50株(取得価額400)を500で、A社に売却した。
 A社の自己株式取得前の「株主資本」は、資本金500 その他資本剰余金 200 その他利益剰余金 300 であった。


*現在の画像を流用
A社 会計上のB/S

(A社会計上の仕訳)
自己株式 500 現預金 470
預り金 30 (※1)

A社 税務上のB/S

(※1)「取得資本金額」とは、減少する資本金等の金額を表しており、株主にとっては、株式の譲渡対価に相当する。


自己株式所得の直前の資本金等の金額(700)×(自己株式の所得に係る株式数(50株)/自己株式の取得の直前の発行済株式総数(100株))

(※2)減少する利益積立金額とは株主Bにとってはみなし配当となります。
    500 - 350 = 150


(A社税務上の仕訳)
資本等の金額 350 (i) 現預金 470
利益積立金 150 (ii) 預り金 30 (iii)

(i)直前資本金等金額700×自己株式数50株/直前発行済株式総数100株=350

(ii)500-350=150

(iii)(ii)×20%(配当源泉率)=30


 上記のように、会計と税務が異なるので法人税での申告調整が必要となります。


 一方、株主B社側では、次のような処理を行います。


(株主B社の会計上の仕訳)
現預金 470 有価証券 400 (iv)
仮払源泉税 30 譲渡益 100

(株主B社の税務上の仕訳)
現預金 470 有価証券 400 (iv)
仮払源泉税 30 受取配当金 150
譲渡損 50 (v)

(iv)A社株式の取得原価400

(v)A社株式譲渡対価350(i)-400(iv)=Δ50(譲渡損)


 このように、自己株式の取得はみなし配当が生じる場合があります。法人税法では受取配当金は益金不算入の対象になりますので、会計上では譲渡益が生じていても税務上では、譲渡損が生じるという例がでてきます。


(2)自己株式の市場買付


1)発行法人の税務
 市場買付の場合、証券会社を通じて売買されるため、株主の売り手からは買い手を選択できないにもかかわらず、自己の売却した株式の買受人がたまたま発行法人であったために、売却でなく資本の払戻しとしての処理になってしまうのは非常に不都合です。そこで、市場買付については、単なる売買処理としています。


2)売却に応じた株主の税務
 上記の理由により、売買処理となります。


(3)自己株式の公開買付


1)発行法人の税務
 公開買付の場合、売り手が買い手を特定できるため、相対取引と同様に取り扱われます。


2)売却に応じた株主の税務
 法人株主の場合は、有価証券の譲渡対価の部分と利益の分配部分からなるものとし、みなし配当が適用されます。個人株主の場合は、市場買付と同様に単なる売買処理となります。


(4)自己株式の処分
 自己株式の処分差額については資本金等の金額の増減額とし、損益取引でなく資本等取引として取り扱われることとなりました。また、自己株式の消却については、取得時に資本の額を減少させることから、消却時には特段の処理は不要となりました。


2.自己株式と適正な時価

(1)適正な時価とは
 自己株式の取得は適正な時価で行わなければなりません。特に同族会社において、オーナー株主から自己株式を取得する場合には、その取引された株価については、オーナー株主である経営者が処分価額を恣意的に操作して配当所得や譲渡所得を逃れようとすることも考えられることから、適正な時価を計算することがきわめて重要です。
 株式の適正な時価については、所得税基本通達や法人税基本通達で規定されていますが、原則として両者は等しいと解されています。


(2)適正な時価を超える譲渡
 自己株式の譲渡において、前述の時価を超える場合には以下のような取り扱いとなります。


1)譲渡人側の税務上の取り扱い
 個 人  株 主:時価を超える部分につき一時所得
 役員(社員)株主:時価を超える部分につき給与所得
 法 人  株 主:有価証券売却益


2)譲受(会社)側の税務上の取り扱い
 個人株主より買入:時価を超える部分につき寄付金
 役員株主より買入:時価を超える部分につき役員賞与
 法人株主より買入:時価を超える部分につき寄付金


(3)適正な時価を下回る譲渡
 自己株式の譲渡において、前述の時価を下回る場合には以下のような取り扱いとなります。


1)譲渡人側の税務上の取り扱い
 個人(役員も含む)株主:時価の1/2を下回れば、時価で譲渡したものとされます(みなし譲渡課税)
 法 人 株 主:時価を下回る部分につき寄付金課税


2)譲受(会社)側の税務上の取り扱い(*)
 課税なし


*ただし、会社が自己株式を低廉取得した場合には、他の株主は経済的利益を受けたこととなり、譲渡株主からの贈与として贈与税が課税される。


3.他の会社を経由した自己株式の取得

オーナー社長が自己株式として株式を売却した場合には、資本等取引とされ税率の低い譲渡所得ではなく、総合課税の配当所得とされるので多額の税負担が生じることがあります。そこで、譲渡所得とするためにオーナー社長から一旦関連会社等他の会社に自社株式を譲渡し、その会社から株式発行会社に売却する方法が考えられます。



 そうなると、上図の1の譲渡については、通常の譲渡所得課税なので国地方合計で20%の分離課税となります。また、みなし配当は生じません。さらに、2の譲渡をした場合には、みなし配当が生じる場合であっても、法人の場合には受取配当等の益金不算入の規定の適用を受けるため、結果的には設例のように1の取得対価から取得資本金額を控除した金額が譲渡損失となるため、節税効果が生じることになります。
 つまり、他の会社を経由することによって、みなし配当による高税率の課税を回避し、さらに中継した他の会社に節税効果が生じるということになります。
 しかしながら、他の会社が株式をいったん取得することにつき合理的理由がないとすれば、このスキーム全体が租税回避行為とみなされ、同族会社の行為計算の否認などを受ける可能性があります。また、先般のいわゆるグループ法人税制により以下のように定められました。
(1)100%グループ内(*)の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、その譲渡損益は計上しない。
(2)100%グループ内以外の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずるみなし配当については、益金不算入制度を適用しない。
*100%グループ内の法人とは、完全支配関係(原則として、発行済株式の全部を直接又は間接に保有する関係)のある法人をいいます。


 これにより、親会社が保有する子会社の株式を当該子会社に買い取らせることにより、みなし配当について受取配当等の益金不算入規定を活用しつつ、株式譲渡損失のみを実現させる自己株式スキームは封じ込められております。

解説者

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