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企業再編制度の概要

テーマ:事業承継・再生・廃業

基礎編

2010年6月24日

 中小企業の経営者の方の中には、「企業再編」あるいは「組織再編」というと、馴染みが薄いかもしれませんが、「M&A」であれば聞いたことのある方が多いと思います。
 「M&A」(Mergers and Acquisitions)を直訳すると(合併と買収)ですが、他の企業を取得して経済的効果を高めるという見地から、新規事業や市場への参入、企業グループの再編、業務提携、経営不振企業の救済なども含まれると考えられています。
 わが国では、つい最近まで「M&A」の手法として合併や事業譲渡といったものしか認められていませんでしたが、グローバルな経済環境の影響もあり、商法が改正されて合併や事業譲渡については制度が緩和され、新たに、株式交換・株式移転、会社分割といった制度が創設されました。これらを総称して「企業再編制度」と位置づけられています。
 税制においても、平成13年に「企業組織再編税制」として創設され、会社法の施行や会計基準の整備等に伴い、企業が機動的に再編できるように改正され、一定の要件のもとにおいては課税を繰延べるといった措置も講じられています。
 ここでは企業再編で行われる合併、株式交換・株式移転、会社分割、事業譲渡の概要を説明し、個々の詳しい内容については別項で詳説します。


1.合併

 2つ以上の会社が契約により合体して1つの会社になる手法です。既存の会社のいずれかを存続会社とし、その他の会社を消滅会社とする吸収合併と、既存の会社をすべて消滅させ、新会社を設立しその消滅した会社の権利義務を引き継ぐ新設合併がありますが、後者は、事務手続きが煩雑であること、不動産などの登記コストがかかるなどの理由から、あまり利用されておらず、前者の吸収合併の制度を利用する場合がほとんどです。一気に市場占有率を高めることができるなどのメリットの反面、会社全部を引き継ぐので、不要な事業や負債あるいは非効率な事業も引き継ぐなどのデメリットがあります。



2.株式交換・株式移転

 株式交換は、完全子会社となる会社の株主が保有する株式と完全親会社となる会社が発行する株式を交換することにより、完全親子関係を構築する手法です。
 現金買収や事業譲受に比較して多額の現金を必要としないなどのメリットがありますが、子会社化しようとする会社の株主が、親会社の株主になるわけなので、好ましくない株主を排除できないなどのデメリットがあります。
 一時期「ニッポン放送」に対する敵対的M&Aで話題になった「ライブドア」は、この手法を利用し、多額の資金を必要とせずに多くの会社を子会社化していった経緯があります。


 株式移転は、株式交換の形態の一種です。 単独あるいは複数の完全子会社となる株主が保有する株式を完全親会社となる会社に移転し、その代わりに完全親会社の発行する株式を割り当てることにより、完全持株会社(ホールディングカンパニー)の関係を構築する手法です。事業譲渡の場合に比較して、完全子会社となる株主が株式譲渡益課税を繰延べられるなどのメリットがあります。
 この手法を利用した有名な事例としては、流通大手の「セブン&アイ・ホールディングス(イトーヨーカ堂+セブンイレブンジャパン+デニーズジャパン)」や百貨店の「三越伊勢丹ホールディングス(三越+伊勢丹)」あるいは多くのメガバンクの持ち株会社が掲げられます。


3.会社分割

 1つの会社がその事業の一部または全部を他の会社に包括的に承継させることにより会社を複数に分割する手法です。分割の形態を大きく分けると、既存の会社に事業を分割する吸収分割と、新設した会社に事業を引き継ぐ新設分割に分けられます。合併においてはほとんどが吸収合併を選択しますが、分割の場合においては、両者における手続き上の差異は僅少であるため、その会社の事業形態や業況等により、適した分割形態を選択することになります。事業部門ごとの責任が明確化されるなどのメリットの反面、規模の利益が縮小するなどのデメリットがあります。
 中小企業においては事業承継する際に分割することで、それぞれの会社を長男、次男等に承継させることも可能です。
 新しい会社の株主構成から見た場合に、分社型分割と分割型分割という分類もできます。
 分社型分割は分割新設法人の株式を100%、分割元法人が所有する形態で、分割事業を完全子会社として分割する方法です。
 一方、分割型分割は分割新設法人の株主構成が分割元法人と同一構成になる形態で、分割事業を兄弟会社として分割する方法です。

4.事業譲渡

 会社の事業の全部または一部を契約により他の会社に移転する手法です。事業の分離という点においては分割と類似し、また事業の全部を譲渡した場合には合併と類似しますが、分割や合併は、従前の権利義務が包括的に承継されるのに対し、事業譲渡は、売買契約に基づく取引行為となります。従って、契約によって譲渡対象を限定することが出来るので、譲渡される側では簿外債務等のリスクを限定または回避することができるなどのメリットの反面、事業を買収する資金の必要が生じるなどのデメリットがあります。
 また、譲渡する側においては採算が悪化している事業を自社から切り離して他社に譲渡することで、会社全体の採算性を向上させる効果が期待できます。


 不採算事業から撤退することで悪化した財務体質を改善させたり、相続時における事業承継対策にも企業再編の手法は有用で、近年においては会計上、税法上双方で企業再編の環境は整備されてきました。
 一方で企業再編を利用した租税回避行為を防止する目的で包括的否認規定もあるので、税務リスクを回避するため、もしくはより効率的、円滑的な企業の運営のためにも、顧問税理士等に相談し、活用することが重要です。


解説者

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