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こんなときどうする 中小企業の税金と会計


経営数字

値付けは難しい

マーケティングを勉強したことがある人なら「4P」という言葉を聞いたことがあるのではと思います。「Product(プロダクト))「Price(プライス)」「Place(プレイス)」「Promotion(プロモーション)」の4つの頭文字をとって4Pと呼んでいます。
 マーケティング戦略を4つのPに分解して考えていこうというものです。この4Pの中でも重要かつ最も難しいのがプライスではないかと筆者は思います。あまり高い価格を設定すると見向きもしてもらえないし、かといって低い価格を設定すると、赤字垂れ流しで自社の財務状況が悪化し、何のために仕事をしているのかわからないという状況になりがちです。最適な価格を見つけるというのがマーケティングの教科書的な答なのでしょうが、現実の商売ではその最適な価格を見つけるのはとても難しい仕事です。
 今回は数字の中でも特別な意味をもつ商品の価格について考えていきたいと思います。

安ければいいのか?

とにかく安くすれば消費者は自社の商品を買ってくれる。そう思いがちになるかもしれませんが、逆に消費者から「安かろう悪かろう」「安いには何か理由がある」と判断されてしまう。結局、単純に安くすれば売れるというわけではないのです。

例えば実際にあった例ですが、ある中古マンションが1万円で販売されていました。築年数は20年ちょっと経過しただけです。場所はスキーで有名なリゾート地です。
 この情報を目にしてどのように思われたでしょうか。「1万円?1百万円か1千万円の間違いじゃないの?」と目を凝らしたかもしれませんね。でも、何度見ても価格は1万円でした。建物の中に変な人が住みこんでいるのでは?と尋ねてみると、占有者はいないそうです。そうか、ではお買い得だから買おうということにはほとんどの人がならないと思います。1万円となっているその価格の裏側が気になって、その理由がわかるまでは購入に踏み切れないと思います。

このように、価格については単に安くすればいいというわけではないのです。消費者はマンションだったらこれぐらいという値ごろ感を持っています。その値ごろ感から大きく離れた価格の場合には、うれしさよりも逆に猜疑心が湧いてきます。安い理由がわからないのでは逆に何かあるのではないかと訝り、挙句の果てには恐怖感すら覚えることでしょう。

どこまでプレミアムをつけられるのか?

逆に価格を高くすることを考えてみます。いわゆるプレミアム価格といわれるものです。価格が高ければ会社の利益は増えます。できるだけ安く仕入れ、できるだけ高く売るのが商売の基本です。ところが価格が高くなればなる程、ターゲットとなる消費者の数は減っていきます。高い価格の商品を欲しない人が増えるからです。よって、高くしすぎるのも問題です。

値上げは難しく、値下げは簡単?

一度決めてしまった価格を変更するのは大変です。取引先に対し、または消費者に対して値上げすることは、他社へスイッチしてしまうきっかけを与えかねません。値上げをすることは難しいため、なるべく値上げをしなくてもよいように、ローコストオペレーションを心掛け、常に原価削減で吸収できるようにしておくといいでしょう。
 一方、値下げすることは簡単です。値下げに抵抗する取引先や消費者はいないからです。なお、値下げする際には、先行して購入してしまった取引先や消費者に対してのケアが大事だと思います。先に購入してくれたということは、実は会社にとって大事な顧客なのではないでしょうか。その場合、大事な顧客には高く売ってそうではない顧客に安く売った、と大事な顧客が気分を害するようなことを避ける方法を取るといいでしょう。

では無料は?

価格をつけることは難しいので、いっそのこと無料にしてしまうという方法もあります。そもそも消費者からお金をいただかないで成り立っているビジネスはたくさんあります。無料にすることが可能かどうかぐらいは検討をしてみる価値があると思います。
 無料にする効果はとても大きいです。スマホのアプリでは、圧倒的に無料のものが多いそうです。ある調査によると有料アプリをダウンロードしたことがある人は、スマホユーザー全体の2割にも満たないということでした。スマホのアプリの例では、有料にするとスマホユーザーの2割がターゲットになるのに対し、無料にすると全スマホユーザーがターゲットになるので、ターゲットが一気に5倍に増えます。

ちょっと購入するのに躊躇しているものでも、無料ならばということで使ってもらえることもあります。ただし無料ビジネスでは、消費者からいただく料金は無料でも企業としてどのようにお金を獲得するかというマネタイズを考えないといけません。いつまでも無料のままでは商売ではなくボランティアになってしまうからです。
 よくあるマネタイズの方法を紹介します。

1.別の人からお金をもらう
 筆者も行っている方法です。ある企業のイベントに呼ばれて無料で消費者の方から税金の相談を受けます。消費者は、有料で相談しなければならない税理士に無料で相談できることからそのイベントに参加します。相談に対応する筆者は、何もボランティアしているわけではなく、そのイベントを主催している企業から、当日の相談員としての報酬をいただいているのです。同じように直接の消費者に対しては無料で、関係者からお金をいただくという方法が考えらえると思います。

2.試供品を無料で提供
 継続的に購入するような商品(化粧品や食品など)については、最初の一歩を踏み出してもらうために、無料サンプルとして配られることがあります。こちらに関しては2度目以降の利用でお金を回収していきます。とにかく1回当社の商品を試してもらいたいというような場合には最適な方法です。

3.広告料を受け取る
 フリーペーパーのように読者からは購読料を取らず、その代わりに雑誌に掲載をしている企業から広告料を受け取ることで、雑誌自体を無料にする仕組みが成り立っています。スマホの無料アプリや無料のホームページなどもページビューを稼ぐことで広告費を稼ぎ、無料を維持しています。

4.一部有料化する
 多くのユーザーを無料で獲得し、その中からヘビーユーザーに対して有料の特典を提供することで、数%の有料会員を獲得してお金を回収する方法です。アプリやクラウドのソフトウェアで最近行われている方法です。固定費が低い場合で、ユーザーが増えてもそれ程会社側に負荷がかからない業態の場合には有効な方法だと思います。

代表的なものを紹介しましたが、無料戦略で稼ぐ方法はまだ開発の余地があると思います。みなさんの会社にとって最適な無料戦略を考えてみてはいかがでしょうか?

最後に筆者が商売の信念としている言葉を紹介します。それは「自分で価格を決められない商売はやらない」です。これは筆者が父から教わった言葉ですが、中小企業はどうしても価格について、発注先の企業からこの価格でと決められた価格での商売を求められると思います。しかし、これからの強い会社にとっては価格を自分で決めることが大切なのではないかと思います。

価格を自分で決めるためには、取引相手から値下げを求められない商品力や営業力が必要です。それを「殿様商売」と言われるかもしれませんが、自分で決めた価格は自社の商品の価値です。自社の商品の価値に誇りを持っているのであれば、価格も自分(自社)で決めるべきだと思っています。たとえどんなに値付けが難しくても。

佐藤税理士事務所/佐藤昭一>

掲載日:2013年12月 2日

本解説は、著者の見解に基づくものであり、対策の時期や目的、規模、期間、対象の個別事情などによっては想定されていた効果が出ない場合があります。実際の判断、経済活動にあたっては、必ず税理士などの専門家に相談するなどした上で自己の責任において行うようにして下さい。

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