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こんなときどうする 中小企業の税金と会計


会社の評価と事業承継

事前の株式移転にするのか、それとも納税資金を準備するのか

責任と権限の委譲は勇気を持って

企業経営者としての能力は、幹部従業員としての経験を通して自然に身につけられる能力ではありません。経営トップには企業の進路を決定するための戦略的な視点と、困難な課題を解決に導いてゆく決断力が要求されます。
 常に先を見通して、あらゆる状況の変化を予想しながら、大胆に行動してゆくリーダーシップが求められることは無論のこととして、従業員全員の生活を支えてゆく責任も同時に負っています。
 このような能力を身につけさせるためには、それなりの地位で権限や責任を与えて、経験を積ませるほかありません。子会社などがあれば、その社長として全権を委ねるのも有力な方法ですが、その結果として業績が低迷すると、後継者候補としての経歴に汚点が残ることを恐れて、なかなかそこまでの冒険は出来ないということもあるでしょう。しかし、将来は全社を率いるとすれば、たとえ失敗に終わるとしても、大きな責任と権限を経験させることは必要となるでしょう。
 幹部の育成も同様なことがいえます。創業者社長は、企業の全部門に精通し、得意先や外注先などの事情にも通じ、先見性も十分に持ち合わせているから今日が有るわけで、企業内ではカリスマです。このような知識・能力を後継者に求めても到底無理ということになります。そこで、社長一人が担っていた職務を複数の人に分散させることで、後継者の負担を減らさなければなりませんから、社長在職時よりは事業承継後の幹部社員の存在がより重要になってきます。
 幹部従業員の能力は、特殊技術者と並んでM&Aなどで企業価値を算定する過程でも重要な要素となってきます。
 オーナー企業では、中堅企業(従業員数200~300人程度)であっても組織の体をなしていない例が多く見受けられます。このような企業では、組織というより社長+その他大勢というイメージで、部長といえども決定権はほとんど無く、同様に責任もあまり問われないという状態です。このような企業では、個々の従業員の提案もあまり採用されず、士気が低下して沈滞ムードが漂いますが、突出した社長のアイデアや能力で好業績を上げることは出来ます。
 しかし、このような俗に言うワンマン企業では、事業承継は非常に困難なことは火を見るよりも明らかで、幹部も全く育ちません。

企業をゴーイング・コンサーン(継続企業)とすれば、経営者の責任は、業績を上げることと同時に人材を育成することも含まれている訳で、責任と権限の委譲は勇気を持って遂行しなければならないでしょう。

企業価値の向上と相続税対策は同時に進める

事業承継を円滑に進めるためには、収益性を向上させたり、借金を減らして財務体質を改善し、多少の失敗にも動じないだけの企業にしていくことが必要で、良好な経営状況は、金融機関や取引先等の協力も格段に得やすくしてくれます。
 一方では、こうした企業価値の向上は、自社株式の相続税評価額の上昇に直結し、かえって株式の相続を困難にしてしまう可能性もありますので、後述する自社株式の相続対策も平行し進める必要があります。
 また、MBOやM&Aなどの外部資金による売却を考える場合には、企業価値が株価に反映することはもちろんのこと、企業価値が低ければ、そもそも俎上に乗ることさえ出来なくなりますから、選択肢が狭められて廃業のやむなきに至ることも覚悟しなければならなくなります。
 ここでいう企業価値とは、財務諸表上の資産価値とイコールというわけではありませんので、外部から自社を見た場合の価値ということも考えておく必要があるでしょう。企業の損益は企業価値を量るうえで重要ですが、投資利回りという視点で外部から見た場合にはキャッシュフローがより重要になってきます。また、財務諸表には載っていない商品や企業のブランド価値、優秀な人材や従業員のモチベーション、特許などの知的所有権やノウハウ、販路や許認可権などの無形資産こそが、大きな企業価値を生むことにも留意しておくべきでしょう。

種類株式で株主構成を計画する

株主構成を考えるとき、株式の財産価値と議決権という二つの側面を考慮しなければなりません。財産価値に着目すれば、配当を期待できたりMBOやM&Aによって外部に売却する場合には、譲渡による収入を期待できます。一方で、普通株式には議決権があって会社の支配権に影響するので、むやみに株式を分散すると、経営者の意思決定に重大な支障を来し、悪くすると親族間での訴訟合戦に発展する場合もあります。
 自社株式を移転する場合には、「子供を平等に扱いたい」という希望と、「後継者には経営しやすい環境を作ってあげたい」という気持ちが交錯します。場合によっては、「後継者以外の親族に後継者を監督する権限を持たせたい」ということもあります。

これまでの商法では、財産価値と議決権は不可分で表裏一体でしたが、会社法になって、色々な種類の性格を持った株式の発行が可能になり、配当や残余財産の分配で優遇したり、議決権を制限あるいは逆に拒否権を付与するということも出来るようになりました(「事業承継に種類株式制度を活用してみる」参照)。
 このような種類株式も活用して柔軟な株主構成も設計できるので、事前に将来の株主構成を設計し、時間を掛けて移転してゆくことが、円滑な事業承継には欠かせません。

自社株式の相続対策と納税対策

事業承継を考えるとき、自社株式の相続対策はメインの対策と位置づけることができます。大企業とは異なり、事業を安定的に継承するためには会社の支配権が絶対に必要になりますが、株式の相続税評価額が高額になると、遺族は莫大な相続税を負担することになりかねません。ところが同族会社の株式は支配権を獲得できなければほとんど無価値に近く、流通市場も存在しないため全く換金性が無いので、株式を売って相続税を納税するということが出来ないのです。換金したいと思えば、全株式=事業全体を売却するしか方法はありません。ここが不動産や現預金といった資産とは決定的に違うのに、これまで特段の救済策はありませんでした。
 そこで、会社に資金的な余裕があれば、会社が遺族から自社株式を金庫株として購入するという方法が取られますが、結果的に企業が相続税を負担することになり、承継後の資金繰りを圧迫することになります。
 ようやく、平成21年度の税制改正で、「取引相場のない株式等に関わる相続税の納税猶予制度」が創設され、この問題は改善される方向にあります。この制度は、適用要件に従業員の継続雇用があるなど、その後の経営の足枷になることも心配されていましたが、平成25年度の税制改正で、雇用確保要件の緩和、後継者の親族間承継要件の廃止、先代経営者の役員退任要件の緩和(贈与税)等、各種適用要件の緩和があり、更に事業承継を行いやすくなりました。
 何れにしても、相続税が事業継続を圧迫することがないように、常に自社株式の評価額に注意を払い、事前に株式を計画的に移転するか、納税資金を準備しておくなどの対策が重要になってきます。

更新日:2014年3月31日
掲載日:2008年7月31日

本解説は、著者の見解に基づくものであり、対策の時期や目的、規模、期間、対象の個別事情などによっては想定されていた効果が出ない場合があります。実際の判断、経済活動にあたっては、必ず税理士などの専門家に相談するなどした上で自己の責任において行うようにして下さい。

会社の評価と事業承継


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