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居住用と事業用不動産の譲渡損失
1.事業用不動産の譲渡損失の場合
(1)どの所得に該当?
事業で使用していた不動産をさまざまな理由から手放さなければならない、その場合に売却したいけれど、損失が生じたときはどうなるのでしょうか?
まずは、不動産の所有者が法人か個人かにより、処理が変わってきます。法人である場合は、会社(法人)の損益計算書に固定資産売却損として計上し、会社の事業の所得の計算の中に含めて考えていきます。法人の事業の利益と通算してよいということです。
では、個人で事業の用に供していた不動産の売却の場合も事業所得の中で考えていいのでしょうか?個人事業主の場合には、法人のときとは異なり、事業とは別の所得として考えていきます。
事業の用に供していた固定資産を譲渡した場合、その譲渡益・譲渡損失は事業所得の計算に含めるのか、含めないのかについては以下の図の流れに従ってチェックします。

上の質問に答えていくと、事業の用に供していた不動産の譲渡は譲渡所得で計算するということになります。
(2)譲渡損益の損益通算
所得税は、その人の1年間のすべての所得に対して税金を課すものなので、2種類以上の所得があり、1つの所得が赤字、他の所得が黒字といった場合に、その所得の赤字と他の所得の黒字とを、一定の順序に従って差引計算をします。これを「損益通算」といいます。
では、不動産の譲渡で発生した譲渡損失は、損益通算の中でどのように取り扱われるのでしょうか?
平成15年12月31日までの個人が所有する土地・建物等の譲渡については、譲渡損失が生じた場合には、その損失の金額を他の資産の譲渡利益の金額と通算したり、他の所得の金額から控除する差引計算、つまりは損益通算をしていました。
しかし、平成16年1月1日以後の土地・建物等の譲渡については、原則として損益通算ができなくなりました。ただし、他の土地・建物等の譲渡にかかる金額が黒字の場合にはその間では損益通算をします。
では、逆に平成16年1月1日以後に土地・建物等を譲渡して利益がある場合にはどうなるのでしょうか?その年に土地・建物等の譲渡所得以外の他の所得に損失が生じたとしても、それらの損失の金額を土地・建物等の譲渡にかかわる譲渡所得の金額から控除できません。
つまり、土地・建物等の譲渡にかかわる譲渡所得の金額は、利益であっても、損失であっても損益通算ができないということです。
なお、居住用の不動産の譲渡については一定の要件を満たす場合に限り、譲渡した年における他の譲渡利益との通算や他の各種所得の金額との損益通算ができ、これらの通算をしてもなお控除しきれない損失の金額については、その譲渡の年の翌年以後3年間にわたり繰越控除できるという規定があります(詳細については後述)。
端的にいうと、賃貸アパート等を譲渡して大きな損失が生じても給与や事業の所得税は納めなくてはなりませんが、自分の住居を売却して譲渡損失が生じ、一定の要件を満たす場合には、他の所得から譲渡損失を差し引くことができるので給与の源泉の還付を受けるのも可能ということです。
こうしてみると、法人と個人では、不動産の譲渡で損失が出た場合、不公平感があります。法人の場合には不動産の譲渡損失は、法人の所得の計算の中で通算され、なお赤字の場合には青色申告であれば、翌年へ繰り越せます。個人の場合には、所得の通算はもちろん、翌年への繰越も認められていません。とすると、これから不動産を法人で購入しようか、個人で購入しようかと考える場合には、資金調達等のほか、譲渡損が発生する場合のリスクも考慮した上での判断が必要になってくるでしょう。
2.居住用不動産の譲渡損失の場合
居住用財産を譲渡し、損失が出た場合には、一定の要件を満たすと損益通算、繰越控除が認められますが、この規定にはどういった要件が必要となるのでしょうか?それは以下のようです。
(1)住宅借入金等が譲渡価格よりも多い場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除
- 譲渡する居住用不動産は、譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えていること。
- 譲渡にかかわる契約を締結した前日において譲渡資産にかかる住宅借入金等(償還期間10年以上)の残高を有していること。
- その年の前年、前々年に3,000万円特別控除等の他の特例を受けていないこと。
※個人の親族等に対する譲渡を除きます。
上述の要件を満たし、譲渡所得の計算上損失が生じた場合には、その損失の金額のうち一定の金額について、他の所得と損益通算する特例および翌年以後3年以内の各年分の総所得金額等の計算上一定の方法により繰延控除する特例の適用を受けることができます。
なお、この規定の対象となる損失の金額については、単純に譲渡した金額から購入価格を引いた譲渡損失すべてが損益通算・繰越控除の対象になるわけではありません。譲渡にかかわる契約を締結した日の前日における住宅借入金等の残額から、その譲渡対価の額を控除した残高を限度とします(下図参照)。

2000万円(売却代金)-6000万円(購入代金)=△4000万円(譲渡損失の金額)
3000万円(借入金残高)-2000万円(売却代金)=1000万円(損益通算限度額)
4000万円>1000万円
∴1000万円(特定居住用財産の譲渡損失の金額)←損益通算ができる金額
この損益通算および繰越控除の特例は、新たな居住用財産(買換資産)の新築または購入が要件とされていませんので、買換資産を取得する・取得しないにかかわらず適用することができます。
(2)居住用不動産を買換えた場合の、譲渡損失の損益通算および繰越控除
買換(建築または購入)の場合にのみ適用される損益通算および繰越控除の要件についてみてみましょう。
- 譲渡する居住用不動産は、譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えていること。
- 居住用不動産を譲渡した年の前年の1月1日からその譲渡をした翌年の12月31日までの間に買換資産(新たなマイホーム)を居住の用に供したとき、または供す見込みであること。
- 買換資産の取得をした年の年末または繰越控除を受けようとする年の年末において、買換資産にかかる住宅借入金等(償還期間が10年以上)があること。
※譲渡資産には住宅借入金等がなくても適用になります。 - 買換資産の床面積が50㎡以上のものであること。
- その年の前年、前々年に3,000万円特別控除等の他の特例を受けていないこと。
ただし、譲渡する居住用不動産の敷地等のうち500㎡を超える部分に相当する譲渡損失の金額については、損益通算の特例の適用を受けることはできますが、繰越控除の特例の適用を受けることはできません。
以上の(1)、(2)の居住用不動産の譲渡損失の繰越控除の適用については、翌年以降3年以内の各年分のうち、合計所得金額が3,000万円を超える年分については、繰越控除の特例の適用を受けることはできません(損益通算の特例については所得制限がありません)。
また、居住用不動産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例は、住宅借入金等特別控除制度との併用が認められています。
居住用不動産の売却に際して損が出る見込みの場合には、上述の(1)、(2)のいずれかを適用できるように考慮して売却・購入するほうがよいでしょう。
3.生活に通常は必要でない資産の譲渡損失
事業用でも居住用でもない別荘やセカンドハウスを譲渡した場合はどのようになるのでしょうか?
別荘のように通常の生活に必要ではない資産の譲渡にかかわる所得の赤字は、原則として他の黒字の所得と損益通算できません。その赤字はないものとみなされますので、繰り越すことももちろんできません。通常の生活に必要でない資産というと、貴金属や宝石、書画、骨董などで、1個または1組の価額が30万円を超えるもの等も別荘と同様に取り扱われますので、譲渡利益があった場合だけ課税され、譲渡損失の場合は損益通算できないという不利な取扱いになっています。
掲載日:2010年7月12日
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