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企業が試験研究を行った場合の優遇税制
経済のグローバル化が進むにつれ、労働集約型の産業は人件費等の低い国々にシフトし、いわゆる先進国は、最先端の技術開発やノウハウの構築などの分野において競争力を維持する傾向にあります。
そこでわが国では、これらの開発のために青色申告法人が支出した試験研究に関する費用のうち、一定の要件を満たすものについて、その一部を法人税額から控除できるという優遇措置が設けられています。
研究開発税制は大きく分けると「試験研究費の総額に係る税額控除制度」、「特別試験研究に係る税額控除制度」、「中小企業技術基盤強化税制」および「試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度」の4つの制度によって構成されています。
なお、これらの制度には、「試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度」を除いて、「繰越税額控除限度超過額等の繰越控除制度」が設けられています。
1.試験研究費優遇税制の種類
(1)試験研究費の総額に係る税額控除制度
この制度は、青色申告法人のその事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。
- 税額控除限度額
「その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額×税額控除割合注1)」
上の算式で算出された金額が控除限度額となり、その事業年度の法人税額の20%(平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に開始する各事業年度は30%)を法人税額から控除することができます。
注1)税額控除割合:税額控除割合は10%ですが、試験研究費割合*が10%未満である場合は次の算式で計算されます。
(試験研究費割合×0.2)+8%
*試験研究費割合=「その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額」÷「その事業年度およびその事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の平均売上金額」
(2)特別試験研究に係る税額控除制度
この制度は、青色申告法人のその事業年度において損金の額に算入される特別試験研究費の額がある場合に、その特別試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。
- 特別試験研究費の額
試験研究費の額のうち、国の試験研究機関または大学と共同してあるいは委託して行う試験研究などに係る試験研究費の額をいいます。 - 特別試験研究に係る控除限度額
「特別試験研究費の額×(12%-税額控除割合)」の算式で算出された金額になります。 - 試験研究費の総額に係る税額控除制度との併用
aの試験研究費の総額に係る税額控除制度と併せて、その事業年度の法人税額の20%(平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に開始する各事業年度は30%)まで税額控除できます。
(3)中小企業技術基盤強化税制
この制度は、中小企業者等である青色申告法人のその事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるもので、上述の「(1)試験研究費の総額に係る税額控除制度」と「(2)特別試験研究に係る税額控除制度」との併用はできません。
- 税額控除限度額
「その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額×12%」の算式で算出され、その事業年度の法人税額の20%相当額(平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に開始する各事業年度は30%)を限度とします。 - 中小企業者等
中小企業者等とは、中小企業者や農業組合等で具体的に次のような法人をいいます。- 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
ただし、大規模法人等(中小企業投資育成㈱を除く)の子会社である場合などを除きますが、従業員数の限定はありません。 - 資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員が1,000人以下の法人
- 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
(4)試験研究費の額が増額した場合における税額控除制度
上述の(1)から(3)に加えて、青色申告法人の試験研究費の額が以前よりも増額した場合に税額控除を認める制度で、以下のa、bを選択適用でき、平成24年3月31日までの間に開始される事業年度まで適用が延長されました。
- 試験研究費の額が比較試験研究費注1)の額を超え、かつ基準試験研究費注2)の額を超える場合
税額控除限度額=(試験研究費の額-比較試験研究費注1)の額)×5% - 試験研究費の額が平均売上金額*の10%相当額を超える場合
税額控除限度額=(試験研究費の額-平均売上金額×10%)×超過税額控除割合注3)
*平均売上金額=その事業年度およびその事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の平均売上金額
注1)比較試験研究費:適用年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額を平均した額。
注2)基準試験研究費:適用年度開始の日前2年以内に開始した各事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額のうち最も多い額。
注3)超過税額控除割合:試験研究費割合が10%相当額を超えるとき、(試験研究費割合-10%)×0.2で計算される割合。
2.注意点
(1)税額控除の対象となる試験研究費の定義
この税額控除の対象となる試験研究費とは、製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明に係る試験研究に関する費用で、具体的には以下に掲げるものをいいます。
- 試験研究を行うために要する原材料費、人件費および経費
なお、人件費については専門的知識をもってその試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限られます。言い換えれば、試験研究を兼業している者や研究部門に属していても事務員など専門的知識を有しない者などに係る人件費は対象にならないということです。 - 試験研究を他の者に委託して、その対価として支払う費用、ほか
ただし、その試験研究に充てるために他の者から助成金等の支払を受けた場合には、その金額は試験研究費の額から控除しなければなりません。
(2)繰越税額控除限度超過額等の繰越控除制度
- 概要
各制度において、税額控除対象金額が税額控除限度額を超えるために、控除しきれない金額があるときは、その控除しきれない金額について1年間の繰越が認められており、翌事業年度の法人税額から控除することができます。
ただし、翌事業年度の試験研究費の額が、当事業年度の試験研究費の額を超えることが要件となります。 - 平成23年度および平成24年度に開始した事業年度の特例
- 平成23年度(平成23年4月1日~平成24年3月31日)に開始する事業年度においては平成21年度(平成21年4月1日~平成22年3月31日)に生じた繰越税額控除限度超過額を含めて繰越控除することができます。ただし、平成22年度分(平成22年4月1日~平成23年3月31日)を含めて法人税額の30%相当額が上限となります。
- 平成24年度(平成24年4月1日~平成25年3月31日)に開始する事業年度においては平成21年度(平成21年4月1日~平成22年3月31日)または平成22年度(平成22年4月1日~平成23年3月31日)に生じた繰越税額控除限度超過額を含めて繰越控除することができます。ただし、当期の法人税額の30%相当額が上限となります。
既述のうち「(1)試験研究費の総額に係る税額控除制度」、「(2)特別試験研究に係る税額控除制度」は比較的大規模な企業向けの制度であり、「(3)中小企業技術基盤強化税制」はその名称どおり、中小企業の技術開発を支援する趣旨で、(1))の試験研究費の総額に係る税額控除制度を拡充しており、多くの中小企業においてはI(3)の中小企業技術基盤強化税制の適用が最も多いと考えられます。
中小企業には優遇制度が設けられており、繰越控除制度もあるので、是非活用してほしいものです。
【参考資料】「法人税 決算と申告の実務」 (財)大蔵財務協会
掲載日:2010年6月21日
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