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こんなときどうする 中小企業の税金と会計


組織運営と雇用

中小企業退職共済

平成14年の法人税法改正により退職給与引当金は損金不算入となり、適格年金制度の縮小、経済情勢悪化による期待運用収益の減少等により、企業を取り巻く退職金情勢は厳しさを増しています。
 従業員に対する退職給付債務は企業の大きな負担となり、頭を抱えている経営者の方も少なくないでしょう。
 中小企業退職金共済は、中小企業のための「国の退職金制度」です。退職金制度を維持することが困難な中小企業に対し、国のバックアップにより「安全」「確実」「有利」に退職金制度を確立することを目的としており、従業員の方に安心して長期に亘り働ける職場を提供するためにも、中小企業の方に強くお薦めしたい利点の多い制度です。

1.制度のしくみ

「事業主」と「独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)」が退職金共済契約を結び、退職金は「中退共」から直接従業員に支払われます。

(i)毎月の掛金は全額事業主負担

(ii)退職した従業員の請求に基づき、(中退共)から退職金が直接支払われる


(1)加入できる企業

加入できる企業は業種によって異なりますが、常用従業員数、資本金・出資金のいずれかがつぎの範囲内であれば加入できます。

常用従業員数 資本金・出資金
製造・建設業等 300人以下 3億円以下
卸売業 100人以下 1億円以下
サービス業 100人以下 5千万円以下
小売業 50人以下 5千万円以下

※「常用従業員」とは、1週間の所定労働時間が他の通常の従業員とおおむね同等であって、雇用期間の定めのない者、雇用期間が2カ月を超えて雇用される者を含みます。

※加入後、会社の成長により中小企業者でなくなった場合は脱退の必要がありますが、解約手当金の支給受けるか、もしくは、確定給付企業年金制度または特定退職金共済制度に引き継ぐこともできます。

(2)加入させるべき従業員

従業員は原則として全員加入ですが、つぎのような場合は加入させなくてもよいことになっています。

  • パートタイマー等短時間労働者(1週間の労働時間が30時間未満)
  • 期間を定めて雇われている者
  • 試用期間中の者
  • 休職期間中の者
  • 短期間内に退職することが明らかな者(定年間近の者等)

(注意)
 以下のような方は加入できないので注意してください。

  • 個人企業の事業主、その配偶者および同一生計の家族従業員
    (配偶者以外の家族従業員は、就労の形態が他の従業員と同様である等、事業主との雇用関係があれば可)
  • 法人企業の役員(ただし、兼務役員等従業員として賃金を受けている場合は可)
  • 「特定業種(建設業・清酒製造業・林業)退職金共済制度」に加入している従業員
  • 社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入している従業員
(3)選択できる掛金月額

掛金月額は5,000円~30,000円の範囲(おおむね千円刻み)で従業員ごとに選択することができ、増額・減額変更もできます。また、パートタイマー等短時間労働者は、通常の従業員より低い特例掛金月額(2,000円~4,000円)も選択できます。

なお、掛金は全額事業主が負担し、減額変更の場合は従業員の同意が必要で、従業員の同意が得られないときは、現在の掛金を維持することが困難である旨の厚生労働大臣の認定書が必要です。

2.制度加入のメリット

(1)掛金は必要経費

掛金は、法人の場合は損金、個人企業の場合は必要経費になり、節税効果も期待できるでしょう。また、12カ月分を限度に前納することもでき、内部留保するよりも利点が多いです。

(2)新規加入事業者・掛金増額変更する事業者に対する国の掛金助成

新しく中退共制度に加入する事業主に、掛金月額の半分(従業員ごと上限5,000円)を加入後4カ月目から1年間国が助成します。
 なお、パートタイマー等短時間労働者の特例掛金月額の場合の助成額は
 掛金月額2,000円→300円、3,000円→400円、4,000円→500円となっています。
 ただし、適格年金制度からの移行および社会福祉職員等退職手当共済制度に加入している事業主は、新規加入掛金助成の対象にはなりません。

(3)自治体による掛金補助

自治体独自で掛金の補助を行っている地域があります。
 補助の条件等については、独立行政法人 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部の「助成自治体」をご参照の上、直接各自治体にお問い合わせください。

3.制度加入のデメリット

仮に社員が懲戒解雇等で退職するとき、事業主の申し出により退職金を減額することができますが、掛金分が戻ってくることはなく中退共に没収されます。

4.退職金額

退職金は「基本退職金」と「付加退職金」を合算したものが、受け取る退職金となります。

(1)基本退職金

掛金月額と納付月数に応じて、法令で定められており、制度全体として予定運用利回りを1%として設計し定められた金額です。
 なお、解約が納付2年未満だと損になりますので注意が必要です。
 (基本退職金代表モデル例、下図参照)

基本退職金代表モデル例

*詳しい内容は、独立行政法人 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部の「基本退職金額表」をご参照ください

(2)付加退職金

運用利回りが予定運用利回りを上回った際、基本退職金に上積みされるもので、運用利回りにより変動します。

資産運用状況、利回り状況等は、独立行政法人 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部の「資産運用」をご参照ください。

5.通算制度

(1)過去勤務債務の通算

新しく中退共制度に加入する企業は、加入前の従業員の勤務期間に応じた退職金が支給できるように、10年を限度として加入前の勤務期間分についても掛金を納付することができます。

(2)転職した場合の通算

退職金は、通常は会社を退職するごとに支払われるものですが、中退共では従業員の退職時に積み立てられた退職金を退職時に請求しなければ、引き継ぐことが可能になる通算制度があります。

1)中退共制度間の移動(中退共⇔中退共)
 要件:掛金が12カ月以上納付されている
     前の企業を退職してから、2年以内に申し出ること
     前の企業で退職金を請求していないこと

2)中退共制度と特定業種退職金共済制度間の移動(中退共⇔特退共)
 要件:前の企業を退職してから2年以内に申し出ること
     退職金を請求していないこと
     退職事由を自己都合ではない等、厚生労働大臣が認定した場合

3)中退共制度と特定退職金共済制度(商工会議所等が運営)の移動(中退共⇔特退金制度)
 要件:機構・中退共と特退金団体との間に退職金引渡契約を結んでいること
     前の企業を退職してから2年以内に申し出ること

6.適格年金からの引継

既存の適格年金制度は、平成24年3月末までに、他の企業年金制度に移行されることになりましたが、この移行先として「確定給付企業年金制度」「確定拠出年金制度」「中退共制度」が認められています。
 企業年金制度の運営・管理が困難な中小企業にとっては、国が主体の中退共制度は大きな受け皿になることが考えられます。
 なお、適格年金制度に積み立てられている資産は全額移換が可能ですが、前述の過去勤務期間通算制度や、新規加入助成は受けられないのでご注意ください。

適格年金からの引継に関する詳しい条件等については、中小企業退職金共済事業本部の「適格年金からの引継」をご参照ください。

本制度の活用により、社員の安心安定雇用による優秀な人材の確保、掛金の損金算入による節税効果、まもなく廃止予定となる適格年金からの引継が認められている等、中小企業にとって数多くのメリットが挙げられ、なかなか有利な制度と言えるのではないでしょうか。

本制度に関する詳しいお問い合わせ先は、以下のとおりです。

独立行政法人 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部
  http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/index.html
  TEL 03-3436-0151(大代表)

掲載日:2010年4月 5日

本解説は、著者グループの見解に基づくものであり、対策の時期や目的、規模、期間、対象の個別事情などによっては想定されていた効果が出ない場合があります。実際の判断、経済活動にあたっては、必ず税理士などの専門家に相談するなどした上で自己の責任において行うようにして下さい。

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