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こんなときどうする 中小企業の税金と会計


起業と準備

消費税の特例と届出

消費税は「届出の税金」と言われています。届出には、いくつかの書類がありますが、その届出の提出の有無により、その計算方法は一変します。簡易課税制度の届出もその一例です。
 届出を提出するときは、慎重にも慎重に行わなければなりません。A4用紙1枚の届出書ですが、その効力は絶大です。

  1. 適切なシミュレーションを行い、それに即した届出書を提出する
     原則として、特例には、最低2年間の継続適用要件がありますので、1年間のみで判断するのではなく、その先も見据えて検討しなければなりません。また、届出書の名称には、まぎらわしいものがあります。A届出を提出するつもりがA'届出を提出してしまった場合、まったく違った届出を提出してしまったこととなります。
  2. 届出期限を厳守する
     原則として、届出書は適用を受けようとする課税期間の開始前に提出しなければなりません。さかのぼっての届出は認められませんので、早め早めの対応が必要です。

消費税の届出書にはいくつかありますが、主なものをつぎに列挙します。

届出が必要な場合 届出書名 提出期限
基準期間における課税売上高が1,000万円超となったとき 消費税課税事業者届出書 事由が生じた場合、速やかに提出(注1)
基準期間における課税売上高が1,000万円以下となったとき 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書 事由が生じた場合、速やかに提出(注2)
免税事業者が課税事業者になることを選択しようとするとき 消費税課税事業者選択届出書 選択しようとする課税期間の初日の前日まで
課税事業者を選択していた事業者が免税事業者に戻ろうとするとき 消費税課税事業者選択不適用届出書 選択をやめようとする課税期間の初日の前日まで(注3)
簡易課税制度を選択しようとするとき 消費税簡易課税制度選択届出書 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(注4)
簡易課税制度の選択をやめようとするとき 消費税簡易課税制度選択不適用届出書 適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで
課税期間の特例を選択又は変更しようとするとき 消費税課税期間特例選択届出書 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで<
課税期間の特例の適用をやめようとするとき 消費税課税期間特例選択不適用届出書 適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで

注1)すでにこの届出書を提出している事業者は、提出後引き続いて課税事業者である限り、再度提出する必要はありません。

注2)消費税課税事業者選択届出書を提出した事業者は届出の必要はありません。なお、課税事業者の選択をやめようとする場合は、消費税課税事業者選択不適用届出書の提出が必要です。

注3)事業を廃止した場合を除き、選択により課税事業者となった日から2年間は、この届出書による課税事業者のとりやめはできません。

注4)届出後2年間は、事業を廃止した場合を除き、継続適用しなければなりません。また、消費税簡易課税制度選択不適用届出書が提出されない限り、たとえ課税事業者でない期間があってもその効力は存続します。

1.課税事業者の選択

「納税義務がないのになぜわざわざ課税事業者になるの?」と疑問をお持ちになるかもしれませんが、それには消費税の還付を受けるという目的があります。多額の設備投資がある場合や輸出業者のように売上消費税よりも仕入消費税のほうが多い場合には、課税事業者を選択することにより消費税の還付を受けることができるのです。
 ちなみに、消費税の還付を受けることができるのは、「原則課税」を適用している事業者です。「簡易課税」を適用している事業者が還付を受けることはあり得ません。
 課税事業者を選択しようとする事業者は、課税期間の開始前に「消費税課税事業者選択届出書」の提出をしなければなりません。課税事業者を選択した場合、その後2年間は継続して課税事業者となります。1年目は課税事業者になり還付を受け、2年目は免税に戻るということはできません。
 2年経過後に、課税事業者の選択をやめようとする場合には「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出をすることより、その効力は失われます。

【例】製造業者Aは、平成XX年においてつぎのような取引を行いました。納付すべき消費税(または、還付される消費税)はいくらになるでしょうか?

  • 525万円(内消費税25万円)で材料を仕入れ、加工をして、840万円(内消費税40万円)で売り上げました。
  • 売上拡大のため、機械装置6,300万円(内消費税300万円)の購入をしました。

1)免税の場合・・・ゼロ

2)簡易課税の場合・・・売上消費税40万円-売上消費税40万円×70%=12万円(納付)

3)原則課税の場合・・・売上消費税40万円-仕入消費税325万円=▲285万円(還付)

原則課税と簡易課税では、297万円の差があります。消費税の計算方法が違うだけ(届出書の提出があるか否か)で、税額が大幅に違います。
 1)のケースでは課税事業者選択の届出をして、2)のケースでは簡易課税制度選択不適用の届出を事前にしていれば、消費税の還付を受けることが可能になります。

2.課税期間の特例

消費税の課税期間は、原則的には個人事業者については暦年(1月1日から12月31日)、法人についてはその法人の事業年度になります。
 課税期間を短縮すると消費税の申告・納付を頻繁にすることになり、事務手続等が大変になります。なぜ、課税期間を短縮するのでしょうか?それは、輸出業者のように経常的に還付が生じる事業者にとっては、消費税の還付を早期に受けるためです。
 課税期間の短縮を受けようとする事業者は、事前に「消費税課税期間特例選択届出書」を提出しなければなりません。この届出書を提出することにより課税期間を3カ月または1カ月ごとに区分した期間に短縮することができます。
 課税期間の短縮を選択した場合、その後2年間は継続して短縮した課税期間によって、3カ月または1カ月ごとに消費税額を計算して申告することになります。
 2年経過後に課税期間の短縮の選択をやめようとする場合には「消費税課税期間特例選択不適用届出書」を提出することにより、その効力は失われます。

3.新規開業した場合

個人事業者または新設法人が新たに事業を開始した場合、開業した年または設立した事業年度およびその翌年(または翌事業年度)は基準期間における課税売上高がありませんので、課税事業者を選択しなければ免税事業者になります。
 個人事業者が新たに法人を設立して、その事業を法人に引き継がせた場合(法人成り)はどうでしょうか?その事業自体は継続して行われますが、新設法人と個人事業者は別の人格です。個人事業者の課税売上高で納税義務を判定することはありません。
 法人成りの場合、個人事業者の資産を新設法人が引き継ぐケースがあります(引き継ぐといっても個人事業者が新設法人にその資産を売却したことになります)。
 個人事業者が課税事業者の場合には、その資産の売却金額は課税売上となりますのでご注意ください。
 「課税事業者選択届出書」は、事前に提出しなければいけないことになっていますが、新規開業または新規設立の場合は、事前に提出することが不可能なため、その課税期間中に提出すれば、その課税期間から課税事業者になることができます。

平成19年4月1日に開業または設立して、同年中に「課税事業者選択届出書」を提出することにより、平成19年から課税事業者になることができます。また、平成20年から課税事業者になろうとする場合についても、平成19年中に届出をすることになります。

課税事業者をやめようとする場合の「課税事業者選択不適用届出書」は最短でいつ提出することができるでしょうか?廃業した場合を除いて、新たに課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以降でなければ提出することができないことになっています。

個人事業者と新設法人とでは、同じ時期に開業または設立しても「課税事業者選択不適用届出書」を提出できる時期が異なる場合があります(1月1日設立の場合のみ、個人事業者と同じ)。
 今回のケースでは、新設法人は個人事業者より9カ月分多く、消費税を納付することになります。

4.仕入税額控除の方法

納付する消費税は、売上で預かった消費税から仕入れにかかった消費税を控除して計算することになっています。
 売上で預かった消費税の計算は実際に預かった金額となりますが、仕入れにかかった消費税の控除できる金額は、簡易課税制度以外の場合は総売上に占める課税売上の割合(課税売上割合)が95%以上か未満かによりその方法が異なってきます。
 課税売上割合が95%以上の場合には、仕入に係った消費税が全額控除できます。
 課税売上割合が95%未満の場合には、個別対応方式と一括比例配分方式の2つの方法を選択適用することになります。
 個別対応方式とは、仕入に係る消費税額を課税売上に対応するものと、非課税売上に対応するもの、あるいは共通に対応するものにそれぞれ個別に区分して仕入税額控除を計算する方式です。
 一括比例配分方式とは、仕入税額の合計額に課税売上割合を乗じて仕入税額控除額を計算する方式です。
 一括比例配分方式を採用した場合(選択するための届出書を提出する必要はありません)には、継続して適用しなければならない期間があります。具体的には、その採用した課税期間の初日から2年を経過する日までの間に開始する課税期間については継続適用しなければ、個別対応方式に変更することはできません。
 なお、個別対応方式には一括比例配分方式のような継続適用を必要とするようなことはありません。

5.番外編

ちまたで話題(?)の自販機作戦とは・・・例えばつぎのような場合はどうなるでしょうか?

【例】サラリーマンのKさんは、所有する更地に居住用賃貸マンションを建築することにしました。このマンションの建築価額は4億2,000万円(税込)で、平成21年12月に引渡しを受け、平成22年1月より賃貸の用に供する予定です。また、Kさんは着工と同時にマンション敷地に自動販売機を設置することにしました。

1)平成21年
 課税事業者選択届出書を提出して、平成21年から課税事業者となり、新築マンションの消費税2,000万円からわずかな自販機収入の消費税を控除した額の還付を受ける。
 *ポイント:個別対応方式を採用すると、居住用賃貸マンションの建築価額の消費税は「非課税売上対応の課税仕入れ」となるため、還付を受けることはできないので、一括比例配分方式を採用して還付を受けることになります(平成21年の課税売上割合は自販機収入だけの100%となり、全額還付が可能です)。

2)平成22年
 わずかな自販機収入の消費税を納付する。また、平成23年から免税事業者となるために課税事業者選択不適用届出書を提出する。
 *ポイント:簡易課税制度を選択すると、納付すべき消費税を減らすことが可能です。

3)平成23年
 免税事業者となるため、消費税の納付義務なし。

こんな事はあり・・・?

平成22年度の税制改正においてこのような行為を防止する対応がされる予定ですので、今後このような方法は通用しなくなる予定です。

掲載日:2010年3月30日

本解説は、著者グループの見解に基づくものであり、対策の時期や目的、規模、期間、対象の個別事情などによっては想定されていた効果が出ない場合があります。実際の判断、経済活動にあたっては、必ず税理士などの専門家に相談するなどした上で自己の責任において行うようにして下さい。

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