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元気印 中小企業 独自の技術や発送を武器にがんばる日本各地の中小企業を紹介します

掲載日:2016年2月23日

[東北エリア]

今野印刷
老舗だからできるイノベーションを追求

台湾の台北市にある誠品書店は「台北市内で一番知的な場所」といわれ、台湾のカルチャー発信源として世界中から注目を集めている。2015年、この複合型書店の一角に日本のグリーティングカードブランド「tegami(テガミ)」の特別コーナーが設置された。日本独特のセンスが発揮されたカードが支持を得て、期間限定のコーナーが終わった後も販売されている。

  • 創業時の技術を生かして新事業創出
  • 世界で認められたグリーティングカード
  • 老舗の新たな可能性を発見

この「テガミ」を展開するのが、仙台市の今野印刷だ。1908(明治41)年から印刷事業を営み、創業100年を超える老舗企業。2011年にグリーティングカードのブランド「テガミ」を立ち上げた。

日本貿易振興機構(ジェトロ)の支援を受け、パリで開かれる欧州最大級の見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展。欧米など海外を中心に販路を開拓した。海外から逆輸入するように、今では国内の大手雑貨店などに取扱店を増やしている。

世界に受け入れられた日本発のグリーティングカード

世界に受け入れられた日本発のグリーティングカード

海外から逆輸入

「起業家に負けない会社にしたい」

橋浦隆一社長が、就任以来抱き続けている思いだ。生命保険会社のアナリストを経て、30歳の時、妻の家業で商業印刷を手がける今野印刷に入社した。4年後の2000年に、34歳の若さで社長に就任した。

同社は当時、ペーパーレス化の波に押され、売り上げ減少に直面していた。減収分を補おうとコンビニエンスストアや量販店向けの年賀状印刷事業を開始し、東北地方の多くの店舗と取引を拡大した。昨年度は約400万枚を印刷し、売り上げの3割を占める事業に育て上げた。

次に目をつけたのが、グリーティングカード市場。「独自ブランドで展開でき、海外市場を視野に入れられる」のが理由だ。「地方の中小企業が注目を集める」ことを狙って、最初から海外市場をターゲットにした。グリーティングカードは欧米でクリスマスや正月などの年中行事や、感謝の気持ちを表すために交わされる。日本でも浸透しつつあった。

2010年秋から準備をはじめ、2011年1月には米国・ニューヨーク州を視察。順調に歩んでいたところ、東日本大震災が発生し、全ての印刷機械が使えなくなる事態に陥った。新事業どころではない―そんな空気が社内を包んだ。しかし橋浦社長は「やろう」と決断。「たとえカラ元気でも元気を発信したかった」とその時の心境を語る。同年「テガミ」ブランドを立ち上げ、米国・ニューヨーク州のギフトショーに初出展する。以来、欠かさず出展を続けている。

2015年の夏には日本での展示会に出展した。20件を超える商談が決まった。今後は大手雑貨店など、日本国内での展開を加速する計画だ。

イノベーションの担い手は

「テガミ」ブランドのなかでも、人気が高いシリーズが活版印刷技術を使ったものだ。活版印刷は100年前、つまり創業時の技術だ。「テガミ」立ち上げ当初、記念品として社内に唯一残していた手動の活版印刷機を使った。懐かしみのある、独特の風合いが出た。現代風のデザインと組み合わせると好評だった。橋浦社長は「活版印刷を通じて地域を活性化できる」と意気込む。

100年前の活版印刷機と橋浦社長

100年前の活版印刷機と橋浦社長

実は橋浦社長は社長就任当初、社内の効率化や成果主義を推し進めた。ネット事業部も立ち上げ、「ペーパーレス時代」への対応を急いだ。しかし、急激な変化には反発もあり、着いていけずに辞める社員も出た。

前職のアナリストは、数字がものを言う世界だ。だが、実際の経営は勝手が違った。「経営は違う。一人ひとりが個性を持っているなかで、いかに気持ちよく仕事をしてもらうことか、その大切さに気づいた」という。痛みを経て、大事なことは効率だけではないと気づいた。

老舗企業のかじ取りをする傍ら、大学院に入学し経営学を学んだ。そして「老舗企業はイノベーションの担い手としての可能性を有している」と考えるようになった。変化し危機を乗り越え続けてきたからこそ、100年以上続く。「三方よし」に代表される倫理観を持っている。「危機を乗り切ってきた担い手と、ベンチャースピリッツを持つ人間が出会えば化学反応が起きる」。

「これからは感性に訴えるモノづくりにかじを切る」と橋浦社長。紙そのものの風合い、手触り、質感を大事にし、その良さに気づいてもらいたい。今野印刷には、活版印刷という「見えざる資産」が眠っていた。自社にしかない武器で、次の時代に立ち向かう。

老舗だからできるイノベーション

橋浦社長は名刺を、活版印刷を用いたものに切り替えた。少しざらざらした紙や、文字の凹部の触感。どこか懐かしさと品の良さを感じさせる。創業100年を超える老舗企業ながら、新たな事業に挑戦し続ける姿はまさに「創業100年のベンチャー企業」の言葉がふさわしい。政府は起業・創業を促進するなか、橋浦社長は「起業・創業には(日本は)環境が良くない。新規創業だけが得策ではないのではないか」と疑問を投げかける。老舗だからこそできるイノベーションもあるのだ。

企業プロフィール

橋浦隆一社長

橋浦隆一社長

会社名 今野印刷株式会社
法人番号 7370001003009
代表者 橋浦隆一社長
業 種 印刷業
所在地 宮城県仙台市若林区六丁の目西町2-10

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