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下請代金法

下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準

第1 運用に当たっての留意点

 下請代金支払遅延等防止法(以下「法」という。)の運用に当たっては、違反行為の未然防止が重要であることにかんがみ、特に次のような点に留意する必要がある。
(1)下請取引において親事業者が遵守しなければならない行為のうち、受領拒否の禁止、下請代金の減額の禁止、返品の禁止並びに不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止は、発注時に下請事業者との間で取り決めた取引条件及び支払条件を、下請事業者の責に帰すべき理由がある場合を除き、誠実に履行することを求めているものである。
  したがって、これらの違反行為の未然防止の観点からも、発注時の取引条件等を明確にする書面(法第3条の規定に基づき下請事業者に交付しなければならない書面。以下「3条書面」という。)の交付を徹底させることとする。
(2)買いたたきの禁止、購入・利用強制の禁止及び経済上の利益の提供要請の禁止については、これらの違反行為が、下請代金の決定に当たって下請事業者と十分協議を尽くさないこと、あるいは下請取引に影響を及ぼすこととなる者が下請事業者に物の購入、役務の利用や経済上の利益の提供を要請すること等によって発生することが多いことにかんがみ、違反行為を未然に防止する観点から、親事業者に対し、下請代金の決定、物の購入、役務の利用要請や経済上の利益の提供要請をする際に配慮すべき事項についても指導することとする。
(3)違反行為の未然防止のためには、法遵守のための親事業者の社内体制の整備が不可欠であることにかんがみ、親事業者に対し、経営責任者を中心とする遵法管理体制を確立するとともに、遵法マニュアル等を作成し、これを購買・外注担当者をはじめ社内に周知徹底するよう指導することとする。

 違反事件については、迅速かつ適正な処理に努め、違反行為が認められた場合には、親事業者に対して、下請事業者が被った不利益の原状回復措置を講じるよう指導するとともに、必要があれば、親事業者に対し、経営責任者を中心とする遵法管理体制を確立するとともに、遵法マニュアル等を作成し、これを購買・外注担当者をはじめ社内に周知徹底するよう指導する等の再発防止措置を講じさせる等効果的な対応を図ることとする。
 なお、どのような行為が違反となるかの判断の参考として、第3(親事業者の書面交付の義務)及び第4(親事業者の禁止行為)の各項に違反行為事例及び想定される違反行為事例を掲げているが、これらは代表的なものであって、これら以外は問題とならないということではないので留意する必要がある。

 

第2 法の対象となる取引

 法の対象となる取引は、第2条第1項から第4項に定める「製造委託」、「修理委託」、「情報成果物作成委託」及び「役務提供委託」の4種類の委託取引である。
 法第2条第7項に規定される一定の資本金要件に該当する法人事業者が、法第2条第8項に規定される一定の資本金要件に該当する法人事業者及び個人事業者に対し上記の委託をする場合、下請法上の「親事業者」として法が適用される。また、法第2条第8項に規定される一定の資本金要件に該当する法人事業者及び個人事業者が、法第2条第7項に規定される一定の資本金要件に該当する法人事業者から上記の委託を受ける場合、下請法上の「下請事業者」として法が適用される。
 なお、この法律で「委託」とは、事業者が、他の事業者に対し、給付に係る仕様、内容等を指定して物品等の製造(加工を含む。)若しくは修理、情報成果物の作成又は役務の提供を依頼することをいう。

1 製造委託
(1)「製造委託」とは、「事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること」をいう(法第2条第1項)。
(2)この法律で「業として」とは、事業者が、ある行為を反復継続的に行っており、社会通念上、事業の遂行とみることができる場合を指す(修理委託、情報成果物作成委託及び役務提供委託においても同様である。)。
(3)「製造」とは、原材料たる物品に一定の工作を加えて新たな物品を作り出すことをいい、「加工」とは、原材料たる物品に一定の工作を加えることによって、一定の価値を付加することをいう。
 「物品」とは、動産をいい、不動産は含まれない。
 「半製品」とは、目的物たる物品の製造過程における中間状態にある製造物をいい、「部品」とは、目的物たる物品にそのままの状態で取り付けられ、物品の一部を構成することとなる製造物をいう。
 「附属品」とは、目的物たる物品にそのまま取り付けられたり目的物たる物品に附属されることによって、その効用を増加させる製造物をいい、「原材料」とは、目的物たる物品を作り出すための基になる資材(原料・材料)をいう。
 「これらの製造に用いる金型」とは、「物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料」の製造を行うために使用する当該物品等の外形をかたどった金属製の物品をいう。なお、金型の製造を委託した親事業者が、それを用いて自ら物品等の製造を行う場合に限らず、更に別の事業者に対しその金型を用いて製造するよう委託する場合の金型も含む。
(4)製造委託には、次の4つの類型がある。

類型1−1
事業者が業として行う販売の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること。

(例)
○ 自動車製造業者が、販売する自動車を構成する部品の製造を部品製造業者に委託すること。
○ 大規模小売業者が、自社のプライベートブランド商品の製造を食品加工業者に委託すること。
○ 出版社が、販売する書籍の印刷を印刷業者に委託すること。
○ 電気器具製造業者が、販売する電気器具を構成する部品の製造に用いる金型の製造を金型製造業者に委託すること。

類型1−2
事業者が業として請け負う製造の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること。

(例)
○ 精密機械製造業者が、製造を請け負う精密機械の部品の製造を部品製造業者に委託すること。
○ 建築材製造業者が、製造を請け負う建築材の原材料の製造を原材料製造業者に委託すること。
○ 金属製品製造業者が、製造を請け負う金属製品の製造に用いる金型の製造を金型製造業者に委託すること。

類型1−3
事業者が業として行う物品の修理に必要な部品又は原材料の製造を他の事業者に委託すること。

(例)
○ 家電製品製造業者が、消費者向けに家電製品の修理を行うために必要な部品の製造を部品製造業者に委託すること。
○ 工作機械製造業者が、自社で使用する工作機械の修理に必要な部品の製造を部品製造業者に委託すること。

類型1−4
事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること。

(例)
○ 輸送用機器製造業者が、自社の工場で使用する輸送用機器を自社で製造している場合に、当該輸送用機器の部品の製造を部品製造業者に委託すること。
○ 工作機器製造業者が、自社の工場で使用する工具を自社で製造している場合に、一部の工具の製造を他の工作機械製造業者に委託すること。

2 修理委託
(1)「修理委託」とは、「事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託すること」をいう(法第2条第2項)。
(2)「修理」とは、元来の機能を失った物品に一定の工作を加え、元来の機能を回復させることをいう。
 「請け負う物品の修理」には、事業者が販売する物品について保証期間中にユーザーに対して行われる修理も含まれる。
(3)修理委託には、次の2つの類型がある。

類型2−1
事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること。

(例)
○ 自動車ディーラーが、請け負う自動車修理を修理業者に委託すること。
○ 船舶修理業者が、請け負う船舶修理を他の船舶修理業者に委託すること。

 

類型2−2
事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託すること。

(例)
○ 製造業者が、自社の工場で使用している工具の修理を自社で行っている場合に、その修理の一部を修理業者に委託すること。
○ 工作機械製造業者が、自社の工場で使用している工作機械の修理を自社で行っている場合に、その修理の一部を修理業者に委託すること。

3 情報成果物作成委託
(1)「情報成果物作成委託」とは、「事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」をいう(法第2条第3項)。
(2)「情報成果物」とは、次に掲げるものをいう。

  1. プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)(法第2条第6項第1号)
    例:テレビゲームソフト、会計ソフト、家電製品の制御プログラム、顧客管理システム
  2. 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの(法第2条第6項第2号)
    例:テレビ番組、テレビCM、ラジオ番組、映画、アニメーション
  3. 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの(法第2条第6項第3号)
    例:設計図、ポスターのデザイン、商品・容器のデザイン、コンサルティングレポート、雑誌広告
  4. 前三号に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの(法第2条第6項第4号) 
    現時点において、政令で定めているものはない。

(3)情報成果物の「提供」とは、事業者が、他者に対し情報成果物の販売、使用許諾を行うなどの方法により、当該情報成果物を他者の用に供することをいい、情報成果物それ自体を単独で提供する場合のほか、物品等の附属品(例:家電製品の取扱説明書の内容、CDのライナーノーツ)として提供する場合、制御プログラムとして物品に内蔵して提供する場合、商品の形態、容器、包装等に使用するデザインや商品の設計等を商品に化体して提供する場合等も含む。
 「業として行う提供」とは、反復継続的に社会通念上、事業の遂行とみることができる程度に行っている提供のことをいい、純粋に無償の提供であれば、これに当たらない。
 「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合」とは、事業者が、自らの事業のために用いる情報成果物の作成を反復継続的に社会通念上、事業の遂行とみることができる程度に行っている場合をいい、例えば、(1)事務用ソフトウェア開発業者が社内で使用する会計用ソフトを自ら作成する場合、(2)ビデオ制作会社が自社の社員研修用のビデオを自ら作成する場合がこれに該当する。他方、社内にシステム部門があっても作成を委託しているソフトウェアと同種のソフトウェアを作成していない場合等、単に作成する能力が潜在的にあるにすぎない場合は作成を「業として」行っているとは認められない。
(4)「情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」とは、情報成果物の作成のうち、(1)情報成果物それ自体の作成、(2)当該情報成果物を構成することとなる情報成果物の作成を、他の事業者に委託することをいう。

(例)
情報成果物 構成することとなる情報成果物
ゲームソフト (例)
・プログラム
・映像データ
・BGM等の音響データ
・シナリオ
・キャラクターデザイン
放送番組 (例)
・コーナー番組
・番組のタイトルCG
・BGM等の音響データ
・脚本
・オリジナルテーマ曲の楽譜
アニメーション (例)
・セル画、背景美術等
・BGM等の音響データ
・脚本
・絵コンテ
・キャラクターデザイン
・オリジナルテーマ曲の楽譜

(5)事業者が提供等する情報成果物の作成においては、情報成果物の作成に必要な役務の提供の行為を他の事業者に委託する場合がある。この場合、当該役務が、委託事業者が他者に提供する目的たる役務である場合には、第2条第4項の「役務提供委託」に該当するが、当該役務が専ら自ら用いる役務である場合には、当該委託取引は、本法の対象とならない(下記の「4 役務提供委託」を参照)。
(6)情報成果物作成委託には、次の3つの類型がある。

 

類型3−1
事業者が業として行う提供の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること。

(例)
○ ソフトウェア開発業者が、消費者に販売するゲームソフトのプログラムの作成を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
○ ソフトウェア開発業者が、ユーザーに提供する汎用アプリケーションソフトの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
○ 放送事業者が、放送するテレビ番組の制作を番組制作業者に委託すること。
○ パッケージソフトウェア販売業者が、販売するソフトウェアの内容に係る企画書の作成を他のソフトウェア業者に委託すること。
○ 家電製品製造業者が、消費者に販売する家電製品に内蔵する制御プログラムの開発をソフトウェア開発業者に委託すること。
○ 家電製品製造業者が、消費者に販売する家電製品の取扱説明書の内容の作成を他の事業者に委託すること。

類型3−2
事業者が業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること。

(例)
○ 広告会社が、広告主から制作を請け負うテレビCMを広告制作業者に委託すること。
○ ソフトウェア開発業者が、ユーザーから開発を請け負うソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
○ デザイン業者が、作成を請け負うポスターデザインの一部の作成を他のデザイン業者に委託すること。
○ テレビ番組制作業者が、制作を請け負うテレビ番組のBGM等の音響データの制作を他の音響制作業者に委託すること。
○ テレビ番組制作業者が、制作を請け負うテレビ番組に係る脚本の作成を脚本家に委託すること。
○ 建築設計業者が、施主から作成を請け負う建築設計図面の作成を他の建築設計業者に委託すること。
○ 工作機械製造業者が、ユーザーから製造を請け負う工作機械に内蔵するプログラムの開発をソフトウェア開発業者に委託すること。

類型3−3
事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること。

(例)
○ 事務用ソフトウェア開発業者が、自社で使用する会計用ソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
○ デザイン業者が、コンペ(試作競技)に参加するに当たり、デザインの作成を他のデザイン業者に委託すること。

4 役務提供委託
(1)「役務提供委託」とは、「事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること(建設業(建設業法(昭和二十四年法律第百号)第二条第二項に規定する建設業をいう。)を営む者が業として請け負う建設工事(同条第一項に規定する建設工事をいう。)の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを除く。)」をいう(法第2条第4項)。
(2)「業として行う提供の目的たる役務」のうち「業として行う提供」とは、反復継続的に社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行っている提供のことをいい、純粋に無償の提供であればこれに当たらない。また、「提供の目的たる役務」とは、委託事業者が他者に提供する役務のことであり、委託事業者が自ら用いる役務はこれに該当しないので、自ら用いる役務を他の事業者に委託することは、法にいう「役務提供委託」に該当しない。他の事業者に役務の提供を委託する場合に、その役務が他者に提供する役務の全部若しくは一部であるか、又は自ら用いる役務であるかは、取引当事者間の契約や取引慣行に基づき判断する。
(3)役務提供委託の類型は、次のとおりである。

類型4−1
事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること。

(例)
○ 貨物自動車運送業者が、請け負った貨物運送のうちの一部の経路における運送を他の貨物自動車運送業者に委託すること。
○ 貨物自動車運送業者が、貨物運送に併せて請け負った梱包を梱包業者に委託すること。
○ 貨物利用運送事業者が、請け負った貨物運送のうちの一部を他の運送事業者に委託すること。
○ 内航運送業者が、請け負う貨物運送に必要な船舶の運航を他の内航運送業者又は船舶貸渡業者に委託すること。
○ 自動車ディーラーが、請け負う自動車整備の一部を自動車整備業者に委託すること。
○ ビルメンテナンス業者が、請け負うメンテナンスの一部たるビルの警備を警備業者に委託すること。
○ 広告会社が、広告主から請け負った商品の総合的な販売促進業務の一部の行為である商品の店頭配布をイベント会社に委託すること。
○ ビル管理会社が、ビルオーナーから請け負うビルメンテナンス業務をビルメンテナンス業者に委託すること。
○ ソフトウェアを販売する事業者が、当該ソフトウェアの顧客サポートサービスを他の事業者に委託すること。

第3 親事業者の書面交付の義務

1 3条書面の記載事項
(1)3条書面に記載すべき事項は、「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則」(以下「3条規則」という。)第1条第1項に定められており、親事業者は、これらの事項について明確に記載しなければならない。
 親事業者は、製造委託等をした都度、3条規則第1条第1項に定められた事項(以下「必要記載事項」という。)を3条書面に記載し、交付する必要があるが、必要記載事項のうち、一定期間共通である事項(例:支払方法、検査期間等)について、あらかじめこれらの事項を明確に記載した書面により下請事業者に通知している場合には、これらの事項を製造委託等をする都度交付する書面に記載することは要しない。この場合、当該書面には、「下請代金の支払方法等については○年○月○日付けで通知した文書によるものである」等を記載することにより、当該書面と共通事項を記載した書面との関連性を明らかにする必要がある。
(2)3条書面に記載する「下請代金の額」は、下請事業者の給付(役務提供委託をした場合にあっては、役務の提供。以下同じ。)に対し支払うべき代金の額であり、3条書面には具体的な金額を明確に記載することが原則であるが、3条規則第1条第2項に基づき、「具体的な金額を記載することが困難なやむを得ない事情がある場合」には「具体的な金額を定めることとなる算定方法」を記載することも認められている。この算定方法は、下請代金の額の算定の根拠となる事項が確定すれば、具体的な金額が自動的に確定することとなるものでなければならず、下請代金の具体的な金額を確定した後、速やかに、下請事業者に通知する必要がある。
 「具体的な金額を記載することが困難なやむを得ない事情」があり、具体的な金額ではなく「具体的な金額を定めることとなる算定方法」を記載することが認められる場合とは、例えば、次のような場合である。
○ 原材料費等が外的な要因により変動し、これに連動して下請代金の額が変動する場合
○ プログラム作成委託において、プログラム作成に従事した技術者の技術水準によってあらかじめ定められている時間単価及び実績作業時間に応じて下請代金の総額が支払われる場合
○ 一定期間を定めた役務提供であって、当該期間における提供する役務の種類及び量に応じて下請代金の額が支払われる場合(ただし、提供する役務の種類及び量当たりの単価があらかじめ定められている場合に限る。)
(3)3条書面に記載する「下請事業者の給付の内容」とは、親事業者が下請事業者に委託する行為が遂行された結果、下請事業者から提供されるべき物品及び情報成果物(役務提供委託をした場合にあっては、下請事業者から提供されるべき役務)であり、3条書面には、その品目、品種、数量、規格、仕様等を明確に記載する必要がある。
 また、主に、情報成果物作成委託に係る作成過程を通じて、情報成果物に関し、下請事業者の知的財産権が発生する場合において、親事業者は、情報成果物を提供させるとともに、作成の目的たる使用の範囲を超えて知的財産権を自らに譲渡・許諾させることを「下請事業者の給付の内容」とすることがある。この場合は、親事業者は、3条書面に記載する「下請事業者の給付の内容」の一部として、下請事業者が作成した情報成果物に係る知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明確に記載する必要がある。

2 3条書面の交付の時期
(1)親事業者は、下請事業者に対して製造委託等をした場合は、「直ちに」書面を交付しなければならない。ただし、必要記載事項のうち「その内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない」とされており、必要記載事項のうち、その内容が定められないことについて正当な理由があり記載しない事項(以下「特定事項」という。)がある場合には、これらの特定事項以外の事項を記載した書面(以下「当初書面」という。)を交付した上で、特定事項の内容が定まった後には、直ちに、当該特定事項を記載した書面(以下「補充書面」という。)を交付しなければならない。また、これらの書面については相互の関連性が明らかになるようにする必要がある。
(2)「その内容が定められないことについて正当な理由がある」とは、取引の性質上、製造委託等をした時点では必要記載事項の内容について決定することができないと客観的に認められる理由がある場合であり、次のような場合はこれに該当する。ただし、このような場合であっても、親事業者は、特定事項がある場合には、特定事項の内容が定められない理由及び特定事項の内容を定めることとなる予定期日を当初書面に記載する必要がある。また、これらの特定事項については、下請事業者と十分な協議をした上で、速やかに定めなくてはならず、定めた後は、「直ちに」、当該特定事項を記載した補充書面を下請事業者に交付しなければならない。
○ ソフトウェア作成委託において、委託した時点では最終ユーザーが求める仕様が確定しておらず、下請事業者に対する正確な委託内容を決定することができない等のため、「下請事業者の給付の内容」、「下請代金の額」、「下請事業者の給付を受領する期日」又は「受領場所」が定まっていない場合
○ 広告制作物の作成委託において、委託した時点では制作物の具体的内容が決定できない等のため、「下請事業者の給付の内容」、「下請代金の額」又は「下請事業者の給付を受領する期日」が定まっていない場合
○ 修理委託において、故障箇所とその程度が委託した時点では明らかでないため、「下請事業者の給付の内容」、「下請代金の額」又は「下請事業者の給付を受領する期日」が定まっていない場合
○ 過去に前例のない試作品等の製造委託であるため、委託した時点では、「下請事業者の給付の内容」又は「下請代金の額」が定まっていない場合
○ 放送番組の作成委託において、タイトル、放送時間、コンセプトについては決まっているが、委託した時点では、放送番組の具体的な内容については決定できず、「下請代金の額」が定まっていない場合
(3)親事業者は、製造委託等をした時点で、必要記載事項の内容について決定できるにもかかわらず、これを決定せず、これらの事項の内容を記載しない当初書面を交付することは認められない。また、下請代金の額として「具体的な金額を定めることとなる算定方法」を3条書面に記載することが可能である場合には、下請代金の額について「その内容が定められないことについて正当な理由がある」とはいえず、3条書面に算定方法を記載し、交付する必要がある。

3 電磁的方法による提供
 親事業者は、法第3条第2項に基づき、3条書面の交付に代えて、電磁的方法により、委託内容、下請代金の額等の必要記載事項の提供を行うことが認められているが、この場合には、親事業者は下請事業者に対して、事前に、電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。また、親事業者は、3条書面に代えて電磁的方法による場合には、下請事業者に不利益を与えないようにするため、「下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項」(平成13年3月30日)を踏まえる必要がある。

〈書面交付に係る違反行為事例〉
(1) 緊急を要するため、親事業者が下請事業者に口頭(電話)で発注し、その後、注文書を交付しない場合
(2) 親事業者が下請事業者に対して、発注単価をコンピュータに登録してこれを帳票に印字する方法で書面を作成しているが、新規部品の製造委託の発注時に、既に単価が決定しているにもかかわらずコンピュータには未登録のため、結果として書面に単価が表示されることなく発注する場合
(3) 親事業者が下請事業者に対して、電子メールで発注することについて下請事業者の事前の承諾を得ることなく、書面の交付に代えて電子メールで発注する場合
(4) 親事業者は下請事業者に対して、原材料A金属の加工を委託しているところ、下請代金の額は、下請事業者が原材料A金属を購入した日のA金属○○市場の終値に使用した数量を乗じた金額に加工賃を加えて定められることとなっており、下請事業者に委託した時点では、下請事業者が購入するA金属の終値が分からないので具体的金額を記載することができないとして算定方法を記載することが可能であるにもかかわらず、当初書面に具体的金額も算定方法も記載せずに交付している場合
(5) 親事業者は下請事業者に対して、ユーザーから開発を請け負ったソフトウェアの一部のプログラムの作成を委託しているところ、委託した時点では、ユーザーの求める仕様が確定しておらず、正確な仕様を決定することができないため発注の内容及び下請代金の額を定めることができないことを理由として、これらが確定するまで、書面を一切交付しない場合

第4 親事業者の禁止行為

1 受領拒否
(1)法第4条第1項第1号で禁止されている受領拒否とは、「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと」である。
ア 「給付の受領」とは、物品の製造又は修理委託においては、給付の内容について検査をするかどうかを問わず、親事業者が下請事業者の給付の目的物を受け取り、自己の占有下に置くことである。
イ 情報成果物の作成委託における「給付の受領」とは、情報成果物を記録した媒体がある場合には、給付の目的物として作成された情報成果物を記録した媒体を自己の占有下に置くことであり、また、情報成果物を記録した媒体がない場合には、当該情報成果物を自己の支配下に置くことであり、例えば、当該情報成果物が親事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録されることである。
ウ 「受領を拒む」とは、下請事業者の給付の全部又は一部を納期に受け取らないことであり、納期を延期すること又は発注を取り消すことにより発注時に定められた納期に下請事業者の給付の全部又は一部を受け取らない場合も原則として受領を拒むことに含まれる。
(2)下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして下請事業者の給付の受領を拒むことが認められるのは、次のア及びイの場合に限られる。
ア 下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容と異なる場合又は下請事業者の給付に瑕疵等がある場合
 なお、次のような場合には委託内容と異なること又は瑕疵等があることを理由として受領を拒むことは認められない。
(ア)3条書面に委託内容が明確に記載されておらず、又は検査基準が明確でない等のため、下請事業者の給付の内容が委託内容と異なることが明らかでない場合
(イ)検査基準を恣意的に厳しくして、委託内容と異なる又は瑕疵等があるとする場合
(ウ)取引の過程において、委託内容について下請事業者が提案し、確認を求めたところ、親事業者が了承したので、下請事業者が当該内容に基づき、製造等を行ったにもかかわらず、給付内容が委託内容と異なるとする場合
イ 下請事業者の給付が3条書面に明記された納期に行われない場合
  なお、次のような場合には、納期遅れを理由として受領を拒むことは認められない。
(ア)3条書面に納期が明確に記載されていない等のため、納期遅れであることが明らかでない場合
(イ)下請事業者の給付について親事業者が原材料等を支給する場合において、親事業者の原材料等の支給が発注時に取り決めた引渡日より遅れた場合
(ウ)納期が下請事業者の事情を考慮しないで一方的に決定されたものである場合

〈製造委託、修理委託における違反行為事例〉
1−1 親事業者は、下請事業者に部品の製造を委託し、これを受けて下請事業者が既に受注部品を完成させているにもかかわらず、自社の生産計画を変更したという理由で、下請事業者に納期の延期を通知し、当初の納期に受領しなかった。
1−2 親事業者は、下請事業者に部品の製造を委託し、これを受けて下請事業者が生産を開始したところ、親事業者はその後設計変更したとして当初委託した規格とは異なる規格のものを納付するよう指示した。この下請事業者が既に完成させた旨を伝えると、親事業者は、当初委託した部品は不要であるとして、同社が生産した部品の受領を拒否した。
1−3 親事業者は、当初、発注日の1週間後を納期としていたが急に発注日から2日後に納入するよう下請事業者に申し入れた。下請事業者は、従業員の都合がつかないことを理由に断ったが親事業者は下請事業者の事情を考慮しないで一方的に納期を指示した。そこで下請事業者は、従業員を残業させて間に合わせようと努めたが、期日までに納入できなかった。親事業者は、納期遅れを理由に、下請事業者が生産した部品の受領を拒否した。

〈情報成果物作成委託において想定される違反行為事例〉
1−4 親事業者が下請事業者に放送番組の制作を委託し、下請事業者は放送番組の作成を既に完了したところ、親事業者が指定した番組出演者に係る不祥事が発生したことを理由として当該番組を放送しないこととし、当該放送番組のVTRテープを受領しない場合
1−5 親事業者(物品製造業者)が、下請事業者に対して設計図面の作成を委託したが、自社製品の製造計画が変更になったとして当該設計図面を受領しない場合
1−6 親事業者(広告会社)が、下請事業者に対して広告の制作を委託したが、広告主の意向により、テレビ放送を用いた広告を行うことを取りやめたため、既に下請事業者が制作したテレビCMのVTRテープを受領しない場合

2 支払遅延
(1)法第4条第1項第2号で禁止されている支払遅延とは、「下請代金を支払期日の経過後なお支払わないこと」である。「支払期日」は法第2条の2により、下請代金の支払期日は、「給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日。次項において同じ。)から起算して、60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」とされている。「支払期日」を計算する場合の起算日は「給付を受領した日」であることから、納入以後に行われる検査や最終ユーザーへの提供等を基準として支払期日を定める制度を採っている場合には、制度上支払遅延が生じることのないよう、納入以後に要する期間を見込んだ支払制度とする必要がある。
(2)物品の製造委託において、下請事業者が親事業者の指定する倉庫に製造委託を受けた部品を預託し、親事業者は当該部品を倉庫から出庫し、使用する方式を採用することがある。このような方式の下では、下請事業者が、3条書面記載の受領日以前に、親事業者の指定する倉庫に製造委託を受けた部品を預託する場合には、預託された日が支払期日の起算日となる。しかし、例えば、下請事業者が倉庫に預託した部品のうち、3条書面記載の納期日前に預託された部品については、親事業者又は倉庫事業者を占有代理人として、下請事業者が自ら占有していることとし、3条書面記載の納期日に、同記載の数量の部品の所有権が親事業者に移転することがあらかじめ書面で合意されていれば、倉庫に預託した部品のうち、3条書面記載の受領日前の預託数量については、実際の預託日にかかわらず、3条書面記載の納期日(ただし、親事業者が当該納期日前に出庫し、使用した場合にはおいては、出庫した日)に受領があったものとして取り扱い、「支払期日」の起算日とする(ただし、このような方式の下では、支払遅延のほか、受領拒否、買いたたき等の規定に抵触しないよう留意する必要がある。)。
(3)また、情報成果物作成委託においては、親事業者が作成の過程で、委託内容の確認や今後の作業についての指示等を行うために、情報成果物を一時的に自己の支配下に置くことがある。親事業者が情報成果物を支配下に置いた時点では、当該情報成果物が委託内容の水準に達し得るかどうか明らかではない場合において、あらかじめ親事業者と下請事業者との間で、親事業者が支配下に置いた当該情報成果物が一定の水準を満たしていることを確認した時点で、給付を受領したこととすることを合意している場合には、当該情報成果物を支配下に置いたとしても直ちに「受領」したものとは取り扱わず、支配下に置いた日を「支払期日」の起算日とはしない。ただし、3条書面に明記された納期日において、親事業者の支配下にあれば、内容の確認が終わっているかどうかを問わず、当該期日に給付を受領したものとして、「支払期日」の起算日とする。
(4)役務提供委託にあっては、「支払期日」の起算日は、「下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日(役務提供に日数を要する場合は役務提供が終了した日)」であり、原則として、下請事業者が提供する個々の役務に対して「支払期日」を設定する必要がある。ただし、個々の役務が連続して提供される役務であって、次の要件を満たすものについては、月単位で設定された締切対象期間の末日に当該役務が提供されたものとして取り扱う。
○ 下請代金の額の支払は、下請事業者と協議の上、月単位で設定される締切対象期間の末日までに提供した役務に対して行われることがあらかじめ合意され、その旨が3条書面に明記されていること。
○ 3条書面において当該期間の下請代金の額が明記されていること、又は下請代金の具体的な金額を定めることとなる算定方式(役務の種類・量当たりの単価があらかじめ定められている場合に限る。)が明記されていること。
○ 下請事業者が連続して提供する役務が同種のものであること。

〈製造委託、修理委託における違反行為事例〉
2−1 親事業者は、毎月末日納入締切、翌月末日支払とする支払制度を採っていたが、検査完了をもって納入があったものとみなし、当月末日までに納入されたものであっても検査完了が翌月となった場合には翌月に納入があったものとして計上していたため、一部の給付に対する下請代金の支払が、下請事業者の給付を受領してから60日を超えて支払われていた。
2−2 親事業者は、一部の材料について、緊急時の受注に対応するためとして、常に一定量を納入させこれを倉庫に保管し、同社が使用した分についてのみ、下請代金の額として支払の対象とする使用高払方式を採っていたため、納入されたものの一部について支払遅延が生じていた。

〈情報成果物作成委託、役務提供委託において想定される違反行為事例〉
2−3 親事業者が、放送番組の制作を下請事業者に委託し、放送日を起算日とする支払制度を採っているところ、放送が当初の予定日より遅れるなどして受領日と放送日が開くことにより、納入後60日を超えて支払が行われる場合
2−4 親事業者が、毎月1本ずつ放送される放送番組の作成を下請事業者に委託しているところ、下請事業者から数回分まとめて納入され、それを受領したにもかかわらず、放送された放送番組に対して下請代金の額を支払う制度を採用していたため、一部についての支払が納入後60日を超える場合
2−5 親事業者は、下請事業者にプログラムの作成を委託し、検収後支払を行う制度を採用しているところ、納入されたプログラムの検査に3か月を要したため、支払が納入後60日を超える場合
2-6 親事業者が、下請事業者に対してユーザー向けソフトウェアの開発を委託しているが、ユーザーからの入金が遅れていることを理由として、下請事業者に対して、あらかじめ定めた支払期日に下請代金を支払わない場合

3 下請代金の減額
(1)法第4条第1項第3号で禁止されている下請代金の減額とは、「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること」である。
 下請代金の額を「減ずること」には、親事業者が下請事業者に対して、
ア 消費税・地方消費税額相当分を支払わないこと。
イ 下請代金の総額はそのままにしておいて、数量を増加させること。
ウ 支払手段としてあらかじめ「手形支払」と定めているのを一時的に現金で支払う場合において、手形払の場合の下請代金の額から短期の自社調達金利相当額を超える額を差し引くこと。
エ 下請事業者と合意することなく、下請代金を下請事業者の銀行口座へ振り込む際の手数料を下請事業者に負担させ、下請代金から差し引くこと。
等も含まれる。
 なお、ボリュームディスカウント等合理的理由に基づく割戻金(例えば、親事業者が、一の下請事業者に対し、一定期間内に一定数量を超える発注を達成した場合に、当該下請事業者が親事業者に支払うこととなる割戻金)であって、あらかじめ、当該割戻金の内容を取引条件とすることについて合意がなされ、その内容が書面化されており、当該書面における記載と発注書面に記載されている下請代金の額とを合わせて実際の下請代金の額とすることが合意されており、かつ、発注書面と割戻金の内容が記載されている書面との関連付けがなされている場合には、当該割戻金は下請代金の減額には当たらない。
(2)「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして下請代金の額を減ずることが認められるのは、次のア及びイの場合に限られる。
ア 「1 受領拒否」(2)又は「4 返品」(2)にいう下請事業者の責に帰すべき理由があるとして、下請事業者の給付の受領を拒んだ場合又は下請事業者の給付を受領した後その給付に係るものを引き取らせた場合(減ずる額は、その給付に係る下請代金の額に限られる。)
イ 「1 受領拒否」(2)又は「4 返品」(2)にいう下請事業者の責に帰すべき理由があるとして受領を拒むこと又は給付を受領した後その給付に係るものを引き取らせることができるのに、下請事業者の給付を受領し、又はこれを引き取らせなかった場合において、委託内容に合致させるために親事業者が手直しをした場合又は瑕疵等の存在若しくは納期遅れによる商品価値の低下が明らかな場合(減ずる額は、客観的に相当と認められる額に限られる。)

〈製造委託、修理委託における違反行為事例〉
3−1 親事業者は、下請事業者から納品される部品を使って製作した製品を国内向け及び輸出向けに販売しているところ、輸出向けの製品に用いる部品については、「輸出特別処理」と称して、発注価格(国内向け製品に用いる部品の発注価格と同一)から一定額を差し引いて下請代金を支払った。
3−2 親事業者は、「製品を安値で受注した」との理由であらかじめ定められた下請代金から一定額を減額した。
3−3 親事業者は、4月と10月との年2回、下請単価の改定を行っているところ、従来は、単価改定時の2か月前頃から改定交渉を開始していたが、上記の単価改定については、需要見通し作業が遅れたため下請事業者への発注量が決まらず、このため下請事業者との単価改定交渉の開始が遅れ、単価の引下げについての合意をみたのが、新決算期に入った4月20日であった。引下げ後の新単価は、合意日(4月20日)以降に発注する分について適用すべきであるところ、同社は合意日前に発注した分について新単価を適用することにより旧単価と新単価の差額分を減額した。
3−4 親事業者は、1か月分の下請代金を納品締切日(月末)から90日後に現金で支払っていたが、下請法違反であるとの指摘を受け、60日間早めて翌月末に支払うこととした。同社は、その後、支払期間を早めたことを理由として下請代金から一定額を減じて支払った。
3−5 親事業者は、サイト120日の手形を交付することによって下請代金を支払っていたが、支払期日に現金での支払を希望する下請事業者に対しては、下請代金から親事業者の短期の調達金利相当額を超える額を割引料として減じて支払った。
3−6 親事業者は、自社工場が水害を被ったことを理由に損害回復協力金として下請代金から一定額を6か月間にわたって減額した。
3−7 親事業者は、月末納品締切翌月末現金支払で下請代金を支払っているところ、業界他社は4か月(120日)サイトの手形で支払っているとして、下請代金から一定額を差し引いて支払った。
3−8 親事業者は、当初、発注日の1週間後を納期としていたが、急に発注日から2日後に納入するよう下請事業者に申し入れた。下請事業者は、従業員の都合がつかないことを理由に断ったが、親事業者は下請事業者の事情を考慮しないで一方的に納期を指示した。そこで下請事業者は、従業員を残業させて間に合わせようと努めたが、期日までに納入できなかった。下請事業者がその翌日納品したところ、親事業者は受領したが、納期遅れを理由として下請代金を減額した。
3−9 親事業者は販売拡大と新規販売ルートの獲得を目的としたキャンペーンの実施に際し、下請事業者に対して、下請代金の総額はそのままにして、現品を添付させて納入数量を増加させることにより、下請代金を減額した。

〈情報成果物作成委託、役務提供委託において想定される違反行為事例〉
3−10 親事業者が、下請事業者との間で毎月の役務の提供に対して下請代金を支払うこととしているところ、契約を改定することにより、単価の引下げを行い、引き下げられた単価をさかのぼって適用し、当初の単価で計算された下請代金と新単価で計算された下請代金との差額を翌月の下請代金の支払から一括して差し引く場合
3−11 親事業者が、下請事業者との間で年間の役務提供契約を締結しているところ、年度末に、年間の一定の期間についてその期間は契約の対象外であったことにする旨の通知を行い、季節協力金という名目で下請代金から差し引く場合
3−12 親事業者が、下請事業者に対して運送委託を行っており、運賃については、発注書面に記載した単価表によって定めているところ、発注書面に記載している単価表を改定し、当初の単価で計算された下請代金と新単価で計算された下請代金との差額を翌月の下請代金の支払から一括して差し引く場合
3−13 親事業者が、一定期間に運ぶ荷物の量にかかわらず一定額の代金を支払う契約を運送事業者と結んでいるところ、運ぶべき荷物が減少したため、実際の支払については荷物の量に応じた方式に基づいて算定することとし、当初の下請代金の額を下回る額を支払う場合
3−14 親事業者が、下請事業者に対してプログラムの作成を委託しているところ、作業の途中で当初指示した仕様の変更を申し入れ、下請事業者は、プログラマーの都合がつかないことを理由に断ったが、親事業者は一方的に仕様を変更し、下請事業者は残業してこの変更に対応しようとしたが納期に間に合わず、親事業者が納期遅れを理由として下請代金から減額を行う場合
3−15 親事業者が、自ら請け負った運送を下請事業者に再委託し、運送中の荷物が毀損したので荷主から損失の補償を求められていると称して、損害額の算定根拠を明らかにしないまま、代金から毀損額を上回る一定額を差し引いている場合
3−16 新商品の総合的な販売促進業務を請け負った親事業者が、下請事業者に対してポスターに使用するデザインの作成を委託したが、親事業者が他の事業者に委託した他の販売促進にかかる経費に予定よりも多く出費したため、予算が無いことを理由として下請代金の減額を行った場合

4 返品
(1)法第4条第1項第4号で禁止されている返品とは、「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること」である。
(2)「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして、下請事業者の給付を受領した後に下請事業者にその給付に係る物を引き取らせることが認められるのは、下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容と異なる場合若しくは下請事業者の給付に瑕疵等がある場合において、当該給付を受領後速やかに引き取らせる場合又は給付に係る検査をロット単位の抜取りの方法により行っている継続的な下請取引の場合において当該給付受領後の当該給付に係る下請代金の最初の支払時までに引き取らせる場合に限られる。ただし、給付に係る検査をロット単位の抜取りの方法により行っている継続的な下請取引の場合において当該給付受領後の当該給付に係る下請代金の最初の支払時までに引き取らせる場合にあっては、あらかじめ、当該引取りの条件について合意がなされ、その内容が書面化され、かつ、当該書面と発注書面との関連付けがなされていなければならない。
 なお、次のような場合には委託内容と異なること又は瑕疵等があることを理由として下請事業者にその給付に係るものを引き取らせることは認められない。
ア 3条書面に委託内容が明確に記載されておらず、又は検査基準が明確でない等のため、下請事業者の給付の内容が委託内容と異なることが明らかでない場合
イ 検査基準を恣意的に厳しくして、委託内容と異なる又は瑕疵等があるとする場合
ウ 給付に係る検査を下請事業者に文書により明確に委任している場合において当該検査に明らかな手落ちの認められる給付について、受領後6か月を経過した場合
エ 委託内容と異なること又は瑕疵等のあることを直ちに発見することができない給付について、受領後6か月(下請事業者の給付を使用した親事業者の製品について一般消費者に対し6か月を超える保証期間を定めている場合においては、それに応じて最長1年)を経過した場合

〈製造委託、修理委託における違反行為事例〉
4−1 親事業者は、自己のブランドを付した衣料品を下請事業者に作らせ納入させているところ、シーズン終了時点で売れ残った分を下請事業者に引き取らせた。
4−2 親事業者は、染加工を下請事業者に委託しているところ、下請事業者の納品したものをいったん受領した後、以前には問題としていなかったような色むらを指摘して、下請事業者に引き取らせた。
4−3 親事業者は、下請事業者から納入された機械部品を受領し、10か月後に瑕疵があるとの理由で下請事業者にこれを引き取らせた。

〈情報成果物作成委託において想定される違反行為事例〉
4−4 親事業者が、下請事業者から受領した放送番組について、毎週継続的に放送する予定であったが、視聴率が低下したことを理由として放送を打ち切り、納入された放送番組が記録されたVTRテープを下請事業者に引き取らせる場合

5 買いたたき
(1)法第4条第1項第5号で禁止されている買いたたきとは、「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」である。
 「通常支払われる対価」とは、当該給付と同種又は類似の給付について当該下請事業者の属する取引地域において一般に支払われる対価(以下「通常の対価」という。)をいう。ただし、通常の対価を把握することができないか又は困難である給付については、例えば、当該給付が従前の給付と同種又は類似のものである場合には、従前の給付に係る単価で計算された対価を通常の対価として取り扱う。
 買いたたきに該当するか否かは、下請代金の額の決定に当たり下請事業者と十分な協議が行われたかどうか等対価の決定方法、差別的であるかどうか等の決定内容、通常の対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況及び当該給付に必要な原材料等の価格動向等を勘案して総合的に判断する。
(2)次のような方法で下請代金の額を定めることは、買いたたきに該当するおそれがある。
ア 多量の発注をすることを前提として下請事業者に見積りをさせ、その見積価格の単価を少量の発注しかしない場合の単価として下請代金の額を定めること。
イ 一律に一定比率で単価を引き下げて下請代金の額を定めること。
ウ 親事業者の予算単価のみを基準として、一方的に通常の対価より低い単価で下請代金の額を定めること。
エ 合理的な理由がないにもかかわらず特定の下請事業者を差別して取り扱い、他の下請事業者より低い下請代金の額を定めること。
オ 同種の給付について、特定の地域又は顧客向けであることを理由に通常の対価より低い単価で下請代金の額を定めること。

〈製造委託、修理委託における違反行為事例〉
5−1 親事業者は、単価の決定に当たって、下請事業者に1個、5個及び10個製作する場合の見積書を提出させた上、10個製作する場合の単価(この単価は1個製作する場合の通常の対価を大幅に下回るものであった。)で1個発注した。
5−2 親事業者は、国際競争力を強化するためにはコストダウンをする必要があるとして主要な部品について一律に一定率引き下げた額を下請単価と定めたため、対象部品の一部の単価は通常の対価を大幅に下回るものとなった。
5−3 親事業者は、下請代金の額を定めずに部品を発注し、納品された後に下請事業者と協議することなく、通常の対価相当と認められる下請事業者の見積価格を大幅に下回る単価で下請代金の額を定めた。
5−4 親事業者は、下請事業者との間で単価等の取引条件については年間取決めを行っているが、緊急に短い納期で発注する場合は別途単価を決めることとしていた。親事業者は、週末に発注し週明け納入を指示した。下請事業者は、深夜勤務、休日出勤により納期に間に合わせ、当該加工費用は人件費が相当部分を占めることから年間取決め単価に深夜・休日勤務相当額を上乗せした下請単価で見積書を提出した。しかし、親事業者は、下請事業者と十分な協議をすることなく、一方的に、通常の対価相当と認められる下請事業者の見積価格を大幅に下回る年間取決め単価で下請代金の額を定めた。
5−5 親事業者は、従来、週一回であった配送を毎日に変更するよう下請事業者に申し入れた。下請事業者は、配送頻度が大幅に増加し、これに伴って1回当たりの配送量が小口化した場合は、運送費等の費用がかさむため従来の配送頻度の場合の下請単価より高い単価になるとしてこの単価で見積書を提出した。しかし、親事業者は、下請事業者と十分な協議をすることなく、一方的に、通常の対価相当と認められる下請事業者の見積価格を大幅に下回る単価で下請代金の額を定めた。

〈情報成果物作成委託、役務提供委託において想定される違反行為事例〉
5−6 親事業者が、荷主から前年比5%の運送料金の引下げ要請があったことを理由として、下請事業者と協議することなく、一方的に前年から5%引き下げた単価を定める場合
5−7 親事業者は、自ら作成・販売するゲームソフトを構成するプログラムの作成を、下請事業者に対して下請代金の額を定めずに委託したところ、当該プログラムの受領後に、下請事業者と十分に協議をすることなく、通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定める場合
5−8 親事業者が、下請事業者と年間運送契約を結んでおり、双方に異議のない場合は自動更新されることとなっていたところ、年度末の契約の更新の直前に、人件費、燃料費等について大幅な変更がないのに、翌年度の契約書であるとして前年に比べて大幅に単価を引き下げた運送契約書を下請事業者に送付し、下請事業者と十分な協議をすることなく、一方的に下請代金の額を定める場合
5−9 親事業者が、下請事業者との年間運送契約において荷物の積み下ろし作業は親事業者が行うものとしていたが、これを下請事業者が行うこととし、変更を通知したところ、下請事業者は、こうした作業を行うためには従来の運送料金では対応できないとして下請代金の改定を求める見積書を提出したにもかかわらず、親事業者は下請事業者と十分な協議をすることなく、従来どおりに価格を据え置く場合
5−10 親事業者が、制作を委託した放送番組について、下請事業者が有する著作権を親事業者に譲渡させることとしたが、その代金は下請代金に含まれているとして、下請事業者と著作権の対価にかかる十分な協議を行わず、通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定める場合

6 購入・利用強制
(1)法第4条第1項第6号で禁止されている購入・利用強制とは、「下請事業者の給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること」により、下請事業者にその対価を負担させることである。
  「自己の指定する物」とは、原材料等だけでなく親事業者又は関連会社等が販売する物であって、下請事業者の購入の対象として特定した物がすべて含まれる。また、「役務」とは、親事業者又は関連会社等が提供するものであって、下請事業者の利用の対象となる役務がすべて含まれる。
  「強制して」購入させる又は利用させるとは、物の購入又は役務の利用を取引の条件とする場合、購入又は利用しないことに対して不利益を与える場合のほか、下請取引関係を利用して、事実上、購入又は利用を余儀なくさせていると認められる場合も含まれる。
(2)次のような方法で下請事業者に自己の指定する物の購入又は役務の利用を要請することは、購入・利用強制に該当するおそれがある。
ア 購買・外注担当者等下請取引に影響を及ぼすこととなる者が下請事業者に購入又は利用を要請すること。
イ 下請事業者ごとに目標額又は目標量を定めて購入又は利用を要請すること。
ウ 下請事業者に対して、購入又は利用しなければ不利益な取扱いをする旨示唆して購入又は利用を要請すること。
エ 下請事業者が購入若しくは利用する意思がないと表明したにもかかわらず、又はその表明がなくとも明らかに購入若しくは利用する意思がないと認められるにもかかわらず、重ねて購入又は利用を要請すること。
オ 下請事業者から購入する旨の申出がないのに、一方的に物を下請事業者に送付すること。

〈製造委託、修理委託における違反行為事例〉
6−1 親事業者は、自社製品のセールスキャンペーンに当たり、各工場の購買・外注担当部門等を通じて下請事業者に対し、下請事業者ごとに目標額を定めて、自社製品の購入を要請し、購入させた。
6−2 親事業者は、自社製品拡販運動を実施するに当たり、自社工場入口に「当社製車両以外構内乗入れは御遠慮下さい。」と表示した看板を立て、下請事業者が納入のため他社製車両で乗り入れる都度「他社製車両乗入れ願」を提出させるとともに、納入カード・納品書に「納入は当社の車でお願いします。」と表示して、下請事業者に自社製車両の購入を要請し、購入させた。
6−3 親事業者は、自社製品の販促キャンペーンを実施するに当たり、下請事業者も販売の対象とし、購買・外注担当者を通じて下請事業者に自社製品の購入を再三要請し、購入させた。
6−4 親事業者は、自社の取扱部品の販売キャンペーンとして、購買・外注担当者と協力工場との会議の席上及び協力工場の製品納入時に、当該部品の販売先の紹介を要請するとともに、下請事業者の紹介先の購入実績を購買・外注窓口に貼り出すこと等により、紹介先のない下請事業者に自ら購入することを余儀なくさせた。
6−5 親事業者は、物品の製造委託をする際に、3条書面に代えて、インターネットのウェブサイトを利用した方法としたところ、下請事業者に対して、既に契約しているインターネット接続サービス提供事業者によっても受発注が可能であるにもかかわらず、自ら指定するインターネット接続サービス提供事業者と契約しなければ、今後、製造委託をしない旨を示唆し、既に契約しているインターネット接続サービス提供事業者との契約を解除させ、当該事業者と契約させた。
6−6 親事業者は、下請事業者に対し、自ら指定するリース会社から工作機械のリース契約を締結するよう要請したところ、下請事業者は既に同等の性能の工作機械を保有していることから、リース契約の要請を断ったにもかかわらず、再三要請し、リース会社とのリース契約を締結させた。

〈情報成果物作成委託、役務提供委託において想定される違反行為事例〉
6−7 親事業者が、自社に出資している保険会社が扱っている船舶保険への加入を船舶貸渡契約を結んでいる貸渡業者に対して要請し、貸渡業者は既に別の保険会社の船舶保険に加入しているため、断りたい事情にあるにもかかわらず、度々要請し、貸渡業者に親事業者の薦める保険に加入させる場合
6−8 親事業者は、下請事業者に対して放送番組の作成を委託しているところ、自社の関連会社が制作した映画等のイベントチケットの購入を数百枚単位であらかじめ下請事業者ごとに枚数を定めて割り振り、下請事業者に購入させる場合
6−9 広告会社である親事業者が、広告制作会社に年始の名刺広告への参加を要請したのに対して、名刺広告の効果を把握するために参加したが、効果が乏しく、翌年以降は参加しない旨を親事業者に伝えていたにもかかわらず、翌年から年末になると参加を前提として申込書を送付し、再三参加を要請することにより、当該名刺広告に参加することを余儀なくさせる場合
6−10 家庭用電気製品製造・販売事業者の物流子会社である親事業者が、下請事業者である運送事業者に対して毎年末にノルマを定めて家庭用電気製品製造・販売事業者の取扱い商品の購入を要請し、今後の契約を懸念した下請事業者に当該商品を購入させる場合

7 不当な経済上の利益の提供要請
(1)法第4条第2項第3号で禁止される不当な経済上の利益の提供要請とは、親事業者が下請事業者に対して「自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること」により、「下請事業者の利益を不当に害」することである。
(2)「金銭、役務その他の経済上の利益」とは、協賛金、協力金等の名目のいかんを問わず、下請代金の支払いとは独立して行われる金銭の提供、作業への労務の提供等を含むものである。
 親事業者が下請事業者に「経済上の利益」の提供を要請する場合には、当該「経済上の利益」を提供することが製造委託等を受けた物品等の販売促進につながるなど下請事業者にとっても直接の利益となる場合もあり得る。「経済上の利益」が、その提供によって得ることとなる直接の利益の範囲内であるものとして、下請事業者の自由な意思により提供する場合には、「下請事業者の利益を不当に害」するものであるとはいえない。
 他方、親事業者と下請事業者との間で、負担額及びその算出根拠、使途、提供の条件等について明確になっていない「経済上の利益」の提供等下請事業者の利益との関係が明らかでない場合、親事業者の決算対策等を理由とした協賛金等の要請等下請事業者の直接の利益とならない場合は、法第4条第2項第3号に該当する。
(3)また、親事業者が、「6 購入・利用強制」(2)のような方法で、下請事業者に経済上の利益の提供を要請することは、法第4条第2項第3号に該当するおそれがある。
(4)情報成果物等の作成に関し、下請事業者の知的財産権が発生する場合において、親事業者が、委託した情報成果物等に加えて、無償で、作成の目的たる使用の範囲を超えて当該知的財産権を親事業者に譲渡・許諾させることは、法第4条第2項第3号に該当する。

〈想定される違反行為事例〉
7−1 親事業者が、下請事業者に対して年度末の決算対策として、協賛金の提供を要請し、親事業者の指定した銀行口座に振込みを行わせている場合
7−2 親事業者が、船内荷役、清掃等の作業は契約により荷主又は親事業者の負担であるとされているにもかかわらず、下請事業者である船舶貸渡業者にその一部を手伝わせる場合
7−3 親事業者が、自らが貨物自動車運送事業の免許を有し、顧客から商品の配送を請け負っている大規模小売事業者であるところ、荷物の配送を委託している下請事業者に対して、店舗の営業の手伝いのために従業員の派遣を行わせる場合
7−4 ソフトウェアの作成を下請事業者に委託している親事業者が、下請事業者の従業員を親事業者の事業所に常駐させ、実際には当該下請事業者への発注とは無関係の事務を行わせている場合
7−5 親事業者が、下請事業者に金型の製造を委託しているところ、外国で製造した方が金型の製造単価が安いことから、下請事業者が作成した金型の図面、加工データ等を外国の事業者に渡して、当該金型を製造させるため、下請事業者が作成した図面、加工データ等を対価を支払わず、提出させる場合
7−6 親事業者が、下請事業者にデザイン画の作成を委託し、下請事業者はCADシステムで作成したデザイン画を提出したが、後日、委託内容にないデザインの電磁的データについても、対価を支払わず、提出させる場合

8 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し
(1)法第4条第2項第4号で禁止されている不当な給付内容の変更及び不当なやり直しとは、親事業者が下請事業者に対して「下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は受領後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させること」により、「下請事業者の利益を不当に害」することである。
(2)「下請事業者の給付の内容を変更させること」とは、給付の受領前に、3条書面に記載されている委託内容を変更し、当初の委託内容とは異なる作業を行わせることである。また、「受領後に給付をやり直させること」とは、給付の受領後に、給付に関して追加的な作業を行わせることである。こうした給付内容の変更ややり直しによって、下請事業者がそれまでに行った作業が無駄になり、あるいは下請事業者にとって当初の委託内容にはない追加的な作業が必要となった場合に、親事業者がその費用を負担しないことは「下請事業者の利益を不当に害」することとなるものである。
  やり直し等のために必要な費用を親事業者が負担するなどにより、下請事業者の利益を不当に害しないと認められる場合には、不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの問題とはならない。
(3)「下請事業者の責めに帰すべき理由」があるとして、親事業者が費用を全く負担することなく、下請事業者に対して給付の内容を変更させることが認められるのは、下請事業者の要請により給付の内容を変更する場合、若しくは給付を受領する前に親事業者が下請事業者の給付の内容を確認したところ、下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容とは異なること又は下請事業者の給付に瑕疵等があることが合理的に判断される場合に限られる。また、「下請事業者の責めに帰すべき理由」があるとして、親事業者が費用を全く負担することなく、受領後に給付をやり直させることが認められるのは、下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容と異なる場合又は下請事業者の給付に瑕疵等がある場合に限られる。
  なお、次の場合には、親事業者が費用の全額を負担することなく、下請事業者の給付の内容が委託内容と異なること又は瑕疵等があることを理由として給付内容の変更又はやり直しを要請することは認められない。
ア 下請事業者の給付の受領前に、下請事業者から委託内容を明確にするよう求めがあったにもかかわらず親事業者が正当な理由なく仕様を明確にせず、下請事業者に継続して作業を行わせ、その後、給付の内容が委託内容と異なるとする場合
イ 取引の過程において、委託内容について下請事業者が提案し、確認を求めたところ、親事業者が了承したので、下請事業者が当該内容に基づき、製造等を行ったにもかかわらず、給付内容が委託内容と異なるとする場合
ウ 検査基準を恣意的に厳しくして委託内容と異なる又は瑕疵等があるとする場合
エ 委託内容と異なること又は瑕疵等のあることを直ちに発見することができない給付について、受領後1年を経過した場合(ただし、親事業者の瑕疵担保期間が1年を超える場合において、親事業者と下請事業者がそれに応じた瑕疵担保期間を定めている場合を除く。)
(4)情報成果物作成委託においては、親事業者の価値判断等により評価される部分があり、事前に委託内容として給付を充足する十分条件を明確に3条書面に記載することが不可能な場合がある。このような場合には、親事業者がやり直し等をさせるに至った経緯等を踏まえ、やり直し等の費用について下請事業者と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定し、当該割合を負担すれば、やり直し等をさせることは下請法上問題とならない。ただし、親事業者が一方的に負担割合を決定することにより下請事業者に不当に不利益を与える場合には、「不当なやり直し」等に該当する。
 なお、この場合においても、(3)ア、イ、ウ及びエに該当する場合には、親事業者が費用の全額を負担することなく、下請事業者の給付の内容が委託内容と異なること又は瑕疵等があることを理由として給付内容の変更又はやり直しを要請することは認められない。
(5)当初の委託内容と異なる作業を要請することが新たな製造委託等をしたと認められる場合には、委託内容、下請代金の額等の必要記載事項を記載した3条書面を改めて交付する必要がある。
 また、親事業者は下請事業者に対して製造委託等をする際には、委託内容を満たしているか否か双方で争いが生じることのないよう、委託内容を明確に記載する必要があり、製造委託等をした時点では委託内容が確定せず、3条書面に記載していない場合であっても、委託内容が定められた後、直ちに委託内容を明確に記載した書面を交付する必要がある。また、取引の過程で、3条書面に記載された委託内容が変更され、又は明確化されることもあるので、このような場合には、親事業者は、これらの内容を記載した書面を下請事業者に交付する必要があり、法第5条の規定に基づき作成・保存しなければならない書類の一部として保存する必要がある。

〈想定される違反行為事例〉
8−1 親事業者が、下請事業者に部品の製造を委託し、これを受けて下請事業者が既に原材料等を調達しているにもかかわらず、輸出向け製品の売行きが悪く製品在庫が急増したという理由で、下請事業者が要した費用を支払うことなく、発注した部品の一部の発注を取り消す場合
8−2 親事業者が、テレビ番組の制作を委託していた下請事業者に対して、いったん親事業者のプロデューサーの審査を受けて受領された番組について、これの試写を見た親事業者の役員の意見により、下請事業者に撮り直しをさせたにもかかわらず、撮り直しに要した下請事業者の費用を負担しない場合
8−3 親事業者が、既に一定の仕様を示して下請事業者にソフトウェアの開発を委託していたが、最終ユーザーとの打ち合わせの結果仕様が変更されたとして途中で仕様を変更し、このため下請事業者が当初の指示に基づいて行っていた作業が無駄になったが、当初の仕様に基づいて行われた作業は納入されたソフトウェアとは関係がないとして当該作業に要した費用を負担しない場合
8−4 親事業者が、下請事業者に対してソフトウェアの開発を委託したが、仕様についてはユーザーを交えた打合せ会で決めることとしていたところ、決められた内容については書面で確認することをせず、下請事業者から確認を求められても明確な指示を行わなかったため、下請事業者は自分の判断に基づいて作業を行い納入をしようとしたところ、決められた仕様と異なるとして下請事業者に対して無償でやり直しを求める場合
8−5 親事業者が下請事業者に対して金型の製造を委託しているところ、従来の基準では合格していた金型について、検査基準を一方的に変更し、下請事業者に無償でやり直しを求める場合
8−6 親事業者が、定期的に放送されるテレビCMの作成を下請事業者に委託したところ、完成品が納入された後、放映されたテレビCMを見た広告主の担当役員から修正するよう指示があったことを理由として、親事業者は、下請事業者に対して、いったん広告主の担当まで了解を得て納入されたテレビCMについて修正を行わせ、それに要した追加費用を負担しない場合
8−7 親事業者が、下請事業者に清掃を委託し、下請事業者は清掃に必要な清掃機器及び人員を手配したところ、親事業者が発注を取り消し、下請事業者が要した費用を負担しない場合
8−8 親事業者が下請事業者に対してデザインの作成を委託したところ、親事業者の担当者が人事異動により交代し、新しい担当者の指示により委託内容が変更され追加の作業が発生したが、それに要した追加費用を親事業者が負担しない場合

附則

この通達は平成16年4月1日から施行する。



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