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サトーカメラ

2010年4月6日更新

現場の知恵と顧客の心理掌握で成功するリピート客づくり戦略

予想外の新規顧客を開拓した「オフィスグリコ」

オフィスグリコ リフレッシュ・ボックス

オフィスグリコ リフレッシュ・ボックス

 二つめは、お菓子メーカーの江崎グリコが新たに開拓した、「オフィスグリコ」というサービスだ。これまで、グリコのお菓子は主にスーパーやコンビニエンスストアなどに置かれていた。しかし、少子化が進むにつれて、菓子市場は年々縮小傾向にあり、深刻さを増していた。そこで、新たな販路を模索する必要が生じ、結果、生まれたのが、「オフィスグリコ」である。サービスをひと言であらわすと、富山の置き薬のお菓子版だといえる。オフィスに引き出しのついたプラスチック製の菓子箱を置く。富山の置き薬のように、中には、自社商品であるガムやキャラメル、クッキー、煎餅などが詰められている。オフィスで働く人は必要に応じてお菓子をとり、食する。価格は100円均一。箱の上にあるカエル型の入金箱にお金を入れるシステムになっている。一週間に一度、グリコのスタッフがオフィスを巡回してお菓子を補充する。

 お菓子のボックスは手の届くところにあり、手軽にお菓子を購入できる点が受け、お菓子は繰り返し売れ続けている。もともと富山の置き薬がそうであるように、「オフィスグリコ」のような販売方法は古くから存在していた。が、大手お菓子企業が富山の置き薬の方式を応用した例はこれまでなかった。販売員が商品説明するわけでもなく、ただ置くだけで、自動的にリピートを生む仕組みを作り上げる。画期的なシステムだといえる。

 しかし、事業化するまでの段階では、課題が山積していた。そもそも、週に一度、スタッフが設置しているオフィスをまわるのだが、人件費がかさんで利益が出ないのではないか。このような懸念があった。しかも、黙って、お菓子を持って行ってしまう人が出るのではないか。損失が大きくなってしまい、商売として成り立たないのではないか。このような心配の声が持ち上がっていた。

 実際に事業を開始してみると、意外にも順調だった。設置場所を広くとるわけでもなく、設置費用もかからず、社員からは好評が得られ、設置した会社からは満足の声が寄せられた。継続率は高く、ほぼ100%である。たまに、オフィス移転で継続を中止せざるをえない会社もあるが、サービス面での不満や、お菓子代の支払いにまつわるトラブルなどで、継続が止まることはほとんどないという。

 懸念されていたお菓子の紛失もほとんど発生しないという。ルールでは、万が一、紛失が発生したときはグリコ側が負担し、「オフィスグリコ」をセットしている会社側は費用負担がないことを前提にしていた。このことが、当初グリコ側が費用負担を心配している理由の一つになっていた。実際には、職場という仕事をする場所で、同僚の目を盗んでまでも、料金を支払わずにお菓子を手に入れようとする人はいないのである。お菓子の紛失への心配は杞憂に終わった。

 それだけではない。予想もしなかった「おまけ」もあった。事業化当初は、購入対象者はOLのみだと思われていた。おやつを買いに行く手間が省けるといったメリットが受け入れられるのではないかと踏んでいた。しかし、意外なことに、利用者の中には、実際には30代、40代の男性が少なくないという。職場でちょっとリフレッシュしたいときや、食事前に少しだけお腹がすいたときなどに購入しているようだ。

 一つめの事例でも指摘したように、リピートを狙うことは、結果として、新規顧客を生みだすことに繋がることが多い。「オフィスグリコ」でも、お菓子はOLが食べるものという常識を破って、30代、40代の男性も新たな顧客に加わった。