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サトーカメラ

2010年4月6日更新

現場の知恵と顧客の心理掌握で成功するリピート客づくり戦略

産婦人科病院で実現したおもてなしの心

 一つめの「ワン&オンリーサービス」を実践しているのは、「医療は究極のサービス業」を掲げる東京・吉祥寺にある産婦人科水口病院である。少子化の折、多くの女性にとって出産は一生のうち、めったに経験できない人生の一大イベントになっている。そこで、水口病院では、このイベントをゴージャスに彩ることで、来院者に楽しんでもらいたい。このような思いから、さまざまなサービスを提供している。

水口病院 個室の調度類

水口病院 個室の調度類

 設備面では、一般の病院と大きく違うのは高級ホテルのような内装にある。通常の病院には置いてないドレッサーまでがあり、これら調度品は全てヨーロピアンテイストあふれるロココ調で統一されている。中でも最も驚かされるのはベッドで、レースの天蓋がついた「お姫様ベッド」が置かれている。女性なら、誰もが一度はお姫様になることを夢見るものだ。まさに、このベッドは幼いころ絵本で見たお姫様が使っていたそのもの。幼少のころの夢がかなう幸せを味わうことができる。

 とかく、病院は殺風景な空間になりやすい。そこに点滴をはじめとする医療機器がワゴンで運ばれてくるのだから、妊婦は不安になりやすい。そんなとき、先の調度品のような、乙女心をくすぐる演出が安心感を高める。また、家具だけでなく、飾られる生花やBGM、壁紙などにまで、こだわりをもって選び、妊婦が安心できる空間を作り上げている。

 水口病院の「ワン&オンリー」は設備に留まらない。それは、水口病院が出産で入院する妊婦を「患者」ではなく「ゲスト」と呼んでいることにも表れている。妊婦は病人ではない、最高のおもてなしを提供するのだという心意気が「ゲスト」という呼び名には込められている。

 具体的なサービスとしては、退院直前のプロのメークアップアーティストによる「出張メイク」サービスがある。通常、妊婦は出産後、約一週間で退院する。入院前は陣痛が始まっていることが多く、妊婦は気持ちの余裕などないのが常で、メイク道具をかばんに入れずに来院する人がほとんどだ。ところが、退院時は子どもや親せきなどと写真を撮ることが少なくない。このときに、プロにメイクしてもらうことは、モデルになった気分を味わえる最高のイベントになる。

 少子化が進む今、一世帯あたりの子どもの数は少なくなっている。その中、出産のリピートを狙っても、ひとり当たりせいぜい二〜三回程度。ならば、これほどまで努力する意味はないのではないか、と思うかもしれない。しかし、水口病院では、サービスが単にリピーターだけでなく、結果として新規顧客を増やすことに繋がっている。病室の調度品やメイクアップサービスの話などが口コミで伝わると、話を伝え聞いた人は「私も水口病院で生みたい」という気持ちになることは間違いない。つまり、ひとりのゲストが満足して、別の顧客を引っ張ってくる。したがって、水口病院の「ワン&オンリーサービス」は、リピート客を増やすだけでなく、結果として新規顧客を増やすことに繋がっている。

 また、水口病院は出産だけでなく、婦人科全般を扱う病院だ。水口病院で出産し満足した患者は、子宮がんなど、婦人科の定期検診やその他一般の婦人科の病気について、ホームドクターとして水口病院を利用する。外来患者の6割は一般婦人科での受診だという数字が水口病院のリピート率の高さを物語っている。