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そこで差がつくニュースの読み方

2010年7月20日更新

最終回 どうすれば、普通の商品で他社との差別化が図れるのか

 コンビニエンスストア、ファミリーマートは海鮮商品の販売店舗を関東、関西などの約5000店舗へ拡大した。海鮮商品の販売は2008年から関東地区を中心に約330店舗に展開していたが、今回、販売地区と扱う店舗を拡大している。

 狙いは中高年層の取り込みにある。ファミリーマートに限らず、コンビニエンスストアの多くでは、40代を超える層の取り込みに苦労しているのが現状だ。そこで、この顧客層にとって、魅力的な商品をそろえ、新たな客層として取り込もうとしているのである。

 セブンイレブンなどでは扱いがほとんどない海鮮商品を取り入れることは、ファミリーマートにとって、差別化のひとつの要因ではある。しかし、ここで注目したいのは、個々のパッケージが一人で手軽に食せる分量になっている点、そして、一個の価格が298円〜398円とリーズナブルになっている点だ。

 中高年の顧客にとって、スーパーに並ぶ刺身は一人で食するには量が多すぎる。その点、ファミリーマートの海鮮商品は、一つのパックに刺身が五、六切れ程度の大きさで、おつまみ感覚で食するのに、ちょうどいい「個食サイズ」になっている。

 一般的に企業が売上の拡大を図ろうとするとき、視点が向くのは商品、サービスといった部分だ。そこで、他社にないもの、真似できないものを大きなコストをかけて開発する。ところが、今回のファミリーマートは、そうした部分で勝負するのではなく、顧客に提供する単位に注目することで、「個食対応」という価値を生み出した。

 このニュースは、顧客に対して提供する価値として、最適な「単位」に、チャンスがあることを示している。くわえて、「単位」を顧客のニーズに合わせて最適化するというやり方は、むしろ規模の小さな商店にとって有利である。なぜなら、企業規模が小さければ小回りがきき、顧客のニーズに合った提供単位をすばやくかつ柔軟に決断、実行できるからだ。

 現在、ファミリーマートが提供しているのは、「めばちまぐろ赤身」「しめさば単品盛り」など。いずれも個食サイズだが、今回の海鮮商品を開発するにあたって、ファミリーマートは水産業者、包材メーカーなどを含めたパートナーとチームを組んで開発したという。

 大企業は商品開発を進めるにも、ゴーサインが出るまでの過程で、さまざまな議論がなされ、一つの事項を決定するにも時間がかかる体制になっていることは否めない。また、どれだけマーケティングデータを持っていても、商圏が広いために、どの顧客にもちょうど良い単位を探すことは極めて困難であると言える。どのくらいの量が適切かを決定するにも、大企業では実現までにより慎重にならざるを得ない。

 ファミリーマートは自身の組織力を活用して、個食サイズの海鮮商品の実現に至った。だが、規模の小さな商店ならば、店主の一存でサイズを決定することが可能だ。たとえ、最初に決めたサイズが顧客のニーズに適さなかったとしても、軌道修正をかけるスピードも速い。

 ファミリーマートのニュースは、多額の開発費をかけなくても、視点を変えることで、他社との差別化を図るチャンスがあること。そして、今の時代、必要性を感じたらすぐに意思決定し、行動に移せる機敏さが求められる時代になったことを示している。それには、規模が小さく、何をするにも、即断ができるという商店の「小回りがきく」という強みが、大きな効果を発するのである。

 

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