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そこで差がつくニュースの読み方

2010年7月6日更新

第13回 レジの無人化がもたらすビジネスチャンス

 ローソンは6月より、セルフレジを順次導入し、今年度中に全国51店舗へ設置する予定でいる。セルフレジとは、顧客が自身で商品のバーコードを読み取り、会計を済ませる仕組みをいう。2003年にイオンが試験的に導入、その後、イトーヨーカ堂やサミット、ユニーなどが続き、昨年からam/pmなどの大手コンビニエンスストアにも広がりをみせている。導入した店の多くは、これまでの有人のレジはそのまま残し、新たにセルフレジを加え、顧客に選んでもらう方式をとっている。

 近年、スーパーやコンビニエンスストアでは、「混雑緩和、レジ待ち時間の短縮」が大きな課題としてある。とくに、夕刻時、スーパーのレジ前には、長い行列ができる店が多く、買い物客からあがる、レジ待ち時間に対する不満の声は決して小さなものではなくなっている。だが、レジを増やせば、その分、店員も増やさなければならない。人件費削減の面から時間帯による混雑緩和は解決の難しい問題になっていた。

 その点、セルフレジシステムはレジ打ち係を増やさずに混雑緩和に貢献するので、店にとっても、顧客にとってもメリットは大きい。また、セルフレジは、その場で顧客が商品を袋に入れるため、袋詰めの台が不要という「省スペース」の効果がもたらされる。将来的に、全てをセルフレジに変えるとすると、店は人権費削減だけでなく、スペースが空いた分、より多くの商品を置くことができるようになる。他方、顧客にとっては、買い物の時間を短縮できる以外にも、何を買ったか他人に知られないといったプライバシーを守るという利点もある。

 数年前まで、セルフレジにはシステムの価格や、設置スペースなどの問題があり、導入が進まない現実があった。ここにきて、技術の進歩により、小型化、低コスト化が進み、さらには、多種類のカード決済が可能になるなど、機能面での充実が進み、セルフレジ導入に拍車をかけた。今後は、ますますセルフレジを導入する店が増えることが予想される。

 とはいえ、セルフレジの導入コストが下がったからといっても、決して安い投資ではない。このニュースを見て、たとえどんなに便利でもセルフレジを導入する気にはなれない、という印象をもたれた方もいるのではないだろうか。あるいは、スーパーやコンビニエンスストアが今よりも便利になったら、個人商店の経営はますます厳しいものになるのではないかと危惧した方もいるかもしれない。ただ、このニュースで着目したいのは、今後、セルフレジ導入が増えることによる、店と顧客との関係性の変化だ。

 現在、スーパーやコンビニエンスストアのレジ係の仕事はマニュアル化されており、店員と顧客との関係はすでに希薄になっている。それでも、「またお越しくださいませ」のひと言や、手渡しされるお釣りなど、人と人との触れあいや、温かみが全くないわけではない。だが、セルフレジが導入されると、人との接触がほとんどなくなってしまう。人件費削減の折、広さの割に店員数の少ないフロアーの中、顧客はセルフで商品を買い物かごに入れ、セルフレジで会計を処理する。入店から出店まで、誰とも口をきかずに買い物を済ませることにもなる。

 見方を変えると、セルフレジ導入が進むことは、個人商店にとって、差別化のチャンスだと捉えることができる。スーパーでの買い物に「乾き」を覚えた顧客にとって、おすすめ商品のひと言でさえ、新鮮さを覚えるに違いない。まして、食料品店ならばおいしい調理法や、保存方法などの情報は買い物そのものの楽しみを増やし、顧客が店に足を運ぶ回数を増やす効果が期待できる。

 地域とのつながりが弱まっている現代社会では、買い物は、個人と地域を結ぶ数少ない機会だ。それが、セルフレジによって、ますます互いのつながりが希薄になろうとしている。その中で、人同士が会話して、温かみを感じることができる個人商店こそ、地域の中で貴重な存在になるのではないだろうか。

 

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