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そこで差がつくニュースの読み方

2010年6月29日更新

第12回 一部の人にしか売れない商品をヒット商品に変える工夫

 小型水槽の中で、熱帯魚や水草などを飼育、栽培する「ミニアクアリウム」が人気だ。これまでにも、金魚や熱帯魚を飼う人は一定数いた。しかし、この「ミニアクアリウム」に人気が集まっているのは、従来ならばセミプロの領域とされていた、飼育の難しい生き物にチャレンジする人が増えているためだ。照明などの管理が難しいサンゴ、水質や水温に影響を受けやすい海水魚などが水槽を彩る。この小型化した水族館は海の中を小さくまとめ、再現しているともいえ、従来の金魚と水草が中心の水槽とくらべて、ずっと本格的なものになっている。

 その背景には、ろ過器など、機材の性能が向上したことがあげられる。これまでならば、小さな水槽だと、水質の劣化が早く、素人では手を出しにくかった。困難だった水質・水温の管理が可能になり、この課題を解決したことが人気の高まった一つの要因だ。また、照明器具の進化も大きい。最近のLEDライトの高性能化で、照明の色調や光量を調整しやすくなった。それにより、これまで一般の人には、明かりのコントロールが難しく上級者向けといわれているサンゴなどを水槽で育てられるようになった。さらには、LEDなどの照明の価格が下がって、手に入れやすくなったことなども人気を後押しする要因になっている。

 人々は美しい魚やサンゴなどの姿を見ているだけで、癒されるところに「ミニアクアリウム」の魅力を感じる。 「ペットと癒し」は、時代によって人気のアイテムは異なるが、変わらず高い人気を保持している。このニュースの読みどころは、多くの売上をあげたいのなら、「癒し系」の分野が狙い目だから、店の棚に水槽やろ過機などをまとめてミニアクアリウムセットを置いたらいい、というものではない。

 ここで着目したいのは、ミニアクアリウムが流行った要因だ。飼育が困難なものは、爆発的な人気にいたることはまずない。今回の人気は、温度や光量管理が簡単になり、照明の価格が下がったことで、受入の間口を広げることができたからである。つまり、これまで、専門性が高くセミプロの領域だったサンゴなどの飼育に関して、敷居が低くなり、多くの人が参入できたことにある。

 その背景には、技術の進歩があるのだが、従来、技術の進歩というものは、物事の専門性をより高める方向に走らせた。新しい技術が開発されるたびに、マニアにとってうれしい、高機能、高性能が実現し、気がつくと、その分野はあまりにも奥深く、一般の人が参加しようとしても、レベルが高すぎるものになってしまう傾向があった。

 上に示した通り、「ミニアクアリウム」の成功には、技術が進歩したことにより、より飼育が簡単になり、誰でもが参加できるようになった点に特徴がある。とかく、趣味に関する分野にはコアなファンがおり、ロイヤルティが高いため、ついつい、このようなコアな顧客を中心に店舗や商品、サービスを設計しがちだ。もちろん、それは間違いではない。

 だが、より売上を伸ばすならば、コアな顧客に加え、その周辺にいる、これまで顧客ではなかった人たちをどう取り込むかが重要になってくる。そのとき、画期的な商品やアイデアは必要不可欠ではない。大事なのは、自分たちの持っているもの、持ちえるものが、どうすれば多くの人の価値につながるか、常に意識することだ。

 これまで、専門性が高いため、一部の顧客にしか売れなかったものを、誰でもが楽しめるように工夫することで、より多くの顧客を対象にすることができる。店の中にある商品をチェックすると、一部の根強いファンにのみ売れている商品が見つかるのではないだろうか。そこで、その商品に少しの手を加えることで、顧客層が変わるかどうか、チェックしてみてはいかがだろう。思わぬところに、顧客層が大幅に広がる商品が見つかるかもしれない。

 

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