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2010年6月24日更新

第11回 「三方よし」が売れ残り品の新しい可能性を生む

 山口県の花市場では、鉢植えバラの新しい販売システムがスタートした。これは、花市場で競り落とされた鉢植えバラが、花屋の店頭で売れ残った場合、生産者は花市場を通して買い取るというものだ。戻ったバラは廃棄するのではなく、生産者はそのバラをさらに大きく育てて、次のシーズンに今期よりも高い値段で販売できる仕組みになっている。

 現在、この新しいシステムは山口県の生産者と県内にある二つの花市場で実施されている。鉢の大きさは直径15センチメートル、ここに1株のバラが植えられている。価格は一個あたり平均3000円程度、5000鉢を販売する計画だ。ただし、花屋には返品に対する制限が設けられており、戻すことができる金額は競り代金の7割、返品できる数は、購入鉢数の半分までとなっている。

 いくつかの制約はあるものの、このシステムの魅力は、生産者、市場、小売店の「三方よし」であるところだ。従来、花屋では、仕入れた鉢植えバラが売れ残ると廃棄するしかなかった。このシステムのおかげで、花屋は売れ残りを心配することがなくなったため、必要な数よりも多めに仕入れられるようになった。結果、花屋は売り切れによる機会損失を減らすことができ、花生産者にとっても売上アップにつながるというメリットがもたらされている。

 一方の花市場にも、大きなメリットがある。近年、鉢植えバラの流通では、市場を通さずに、生産者と花屋が直接取引する市場外流通が増加していた。今回、新たに開発されたこのシステムは、花市場に「返品できる」という新しい機能をもたらした。その結果、花屋にとって、市場に対する魅力は大きく増すことになり、関係者の間では市場外流通に歯止めがかけられるのではないかと期待が高まっている。

 この販売システムの名前は、「サイクル*ローズ」。ロゴマークは山口県デザインセンターが考案するなど、山口県も支援体制を整え、全面的にバックアップしている。山口県によると、今後、この取り組みが軌道に乗れば、全国に展開していくと考えているという。

 ところで、花屋に限らず、小売店は売れ残った商品に対して、値下げして販売するか、廃棄処分するか、いずれにしろ利益がほとんど出ない状態で処理するのが一般的だ。デフレの時代、安いものに目がないという消費者が増えているため、在庫処分のためにも、売れ残り品の価格を下げる方向にいきがちである。売れ残った商品に対し、値下げ幅をいくらにするか頭を悩ませる店主は少なくない。

 値下げすることは利益を圧迫し、ピンチを招くことは店自身がよくわかっている。「売れ残り商品」による損失をいかに減らすかは、小売店にとって長年の課題だった。今回スタートした鉢植えバラの販売システムは、生産者と市場にもメリットをもたらしながら、小売店の課題を解決している点が素晴らしい。

 とはいえ、売れ残り品の価値を翌シーズンに高めることができるといった商品群は限られており、どの分野でも応用できるわけでない。しかし、今回のシステムのように、生産者が手を加えることで新たな価値を付加し、これが商品の売れ残りへの損失を最小限にし、かつ、売上を増す。このような仕組みの検討は、もっと多方面で取り組まれてもいいのではないか。

 ところで、このシステムが開始できた一番の要因は、花生産者と花市場、花屋の3者間の協力があったことは外せない。どんなものであれ、新しいシステムが成功するかどうかは、周辺にいる人「みんな」が幸せになることが必要で、それがひいては店自身の幸せにつながる。実現は簡単なことではないが、効果の大きさを考えると、実現に向けて取り組んでみる価値はあるとことだといえる。

 

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