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そこで差がつくニュースの読み方

2010年6月15日更新

第10回 値下げだけで動かなくなった消費者の動かし方

 イオンはDVDソフトやビデオテープを持参すると、新作のブルーレイ・DVDソフトがほぼ半額で購入できるキャンペーンを展開している。不用品を新たな購買につなげる「引取りセール」はこれまでにもあったが、DVDを対象にした引き取りは、今回が「業界初」となる。キャンペーンでは、全部で170タイトルのソフトが対象になっており、そのうち、ブルーレイソフトは100タイトルで、一本1480円という破格値で購入できる。また、DVDソフトは70タイトルを一本680円で購入可能だ。

 「ブルーレイデッキに買いかえたが、ブルーレイのソフトは高価で買いづらい」。

以前から、イオンにはこのような声が届いていた。対応を検討する過程で、ブルーレイソフトをより普及させたいというソニー・ピクチャーズ エンタテインメントと思いが一致しキャンペーンの企画がもちあがった。

 そもそも、引取りセールはスーパー、百貨店にとって、キャンペーンのなかでも人気の高い催しだ。消費者にとってみれば、引取りセールは不用品が片付くうえ、新品を安く買えるところが魅力である。例えば、せっかく新しい服を買いたいと思っても、すでに満杯になったクローゼットを目にすると、購買意欲も失せてしまうものだ。不用品の処分により生まれた新たな収納スペースは、買おうかどうか迷っている消費者の背中を押してくれる。さらにこれがDVDの場合、「子どもが大きくなって、観なくなったキッズビデオが家に沢山あって困る」という家庭のシーンが浮かんでくる。イオンはここに目をつけ、DVD引き取りセールを実現させたのである。

 その一方で、この類のセールには、引取った商品がゴミになるので環境負荷が大きい、ゴミ削減に反するのではないかという指摘がある。今回、引取ったソフトはプラスチックの原料であるポリカーボネイトにリサイクルされる予定だ。環境への配慮も欠かさない点がイオンらしい。

 ただ、注目すべきはイオンがこのDVD引取りキャンペーンと同時に、大規模な値下げセールを実施している点だ。これまでにも、イオンでは昨年12月と今年3月の2回、大規模値下げを実施しており、今回は、子ども手当が支給される6月にあわせ、3回目の値下げキャンペーンになる。値下げ率は1〜2割程度、対象はアパレル専門店から、寝具、家具、日用品などと幅広い。

 イオンが値下げにDVD引取りキャンペーンを並行実施したことを、消費者が単なる値下げだけでは、もう動かなくなったことへの対応と見るとどうだろう。

 これまでは、価格が安いことが顧客にとって魅力の高いポイントであったが今は違う。消費者が求めているものは、「生活の困ったを改善する」「今の生活にない幸せ感を味わう」といった「価値」である。今後は、顧客の困ったことを解決するサービスや消費者を幸せな気持ちにするサービスが今よりも強く求められる。つまり、競争のステージは「価格の安さ」ではなく、「価値の提供」へと変化しているのである。

 このニュースは、これからのキャンペーンは顧客が満足する価値提供ができるかどうかが重要になることを示しており、その答えのヒントをイオンは模索していると読むことができる。

 

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